21 ヌコリ村(クオニエ)
「さ、ここに座って」
「は、はい」
そこにさっきの給仕の女性が近づき、子供にはやや大きい杯を二人の前に置いていく。
「蜂蜜入りの牛の乳よ。どうぞ」
「あ、ありがとう」
「でも、いいんですか?」
突然のもてなしに戸惑う二人に女性は微笑むとアルザーの方へと顔を上げる。
「いいのよ、お代はそこの黒い鎧の人が払ったから」
「アルザー?」
「落ち着いてもらわないと困るからな」
目を丸くするビアトロにアルザーはしれっと答える。
二人は杯に注がれた牛乳を半分ほど飲むと話し始めた。
「僕はエーブルと言います。こっちは妹のユイール」
「あなた達はどこから来たのですか?」
努めてとがめる風を出さずに問うビアトロ。それに対して少年、エーブルは、
「ヌコリ村です」
「……ふむ」
「それってどこなんだ?」
「ここだな」
アクレイの問いにアルザーはそう答えると脇によけていた地図を再び広げ、スカータ・マレ・スタにほど近い、スカータ川のほとりの一点を指差す。
「ここからあまり遠くはないな」
「旅に慣れた者ならな」
アクレイの言葉にアルザーが一言付け加える。
そしてその言葉にアクレイとビアトロは、視線を交わしてうなずきあう。
この二人の服装はどう見ても旅向きではない。着の身着のまま、家出でもしてきたかのような姿である。
そんな姿でわざわざこの街に来た理由、そして……
「ちょっと聞いてもいいでしょうか?」
「何です?」
不安げなエーブルにビアトロは尋ねる。
「君たち、その村からここまでどうやって来たのですか?」
「商人さんの荷馬車に乗せてもらいました」
「商人?」
「はい、村の酒場に荷物を運んでくる」
「なるほど、それでか」
エーブルの言葉に得心がいったか、アルザーがうなずくが、アクレイは首を傾げている。
そんな彼に対してアルザーは自身の考えを披露する。




