2 合流
森に響く絶叫。しかし、相手は気にせず素早く剣を引き抜くと、間髪を入れずに大きく剣を振り上げ……振り下ろす!
怪物の肩から脇腹にかけて深々と刻み込まれる傷。
そして傷口から血ではなく、黒い霧のようなものが勢いよく吹き出す。
しかし、攻撃はそれに留まらない。
男は黒い霧をかわすように一旦は後ろに飛び退くも、即座に踏み込んで素早く手首を返し、今度は腹部目掛けて横薙ぎの一撃、そして再度後ろに飛びのき、間合いを取りつつ剣を構える。
だが、切り刻まれた怪物はもはや反撃する力は無かった。傷口から黒い霧のようなものを吹き出し、苦しみ悶えながらその場に崩れ落ちる。
「助かりました、アクレイ」
白装束の人物がそう言うと相手、アクレイは首を振る。
「済まない、ビアトロ。深追いしすぎた」
二人はそう言い合いながら歩み寄ろうとしたが何かに気づき、同時に同じ方向を向く。
そこには今倒したのと似た背格好の別の怪物。
「剣を」
「ええ」
二人は短くそう言いあって動きだそうとするが、その時、足元の草が突然波打ち、二人の足にまとわりついてくる。
「これは」
「魔法?いや、精霊術か!」
突然のことにとまどうアクレイ、それに対し、ビアトロは即座にそう断言すると辺りを見渡す。
森の木々の合間に隠れてこちらを伺う別の怪物の姿を。
人の姿をした腐った木の人形が目鼻口のない顔をこちらに向けている。
「やはり。ならば」
ビアトロは懐から何かを取り出す。
それは蒼く輝く宝石がはめ込まれた、銀色に輝く竪琴。
彼の指が竪琴の弦の間を走ると、陽光を反射したか宝石がきらりと光り、やがて軽快かつ情熱的な旋律が紡がれはじめる。
森の中に響き渡る竪琴の音色。
しかし、その間も怪物は地を踏み鳴らし、二人に向かって近づいて来る。
アクレイは足を取られ、動く事もままならぬが、それでも構えを取る。
迫る怪物、足に絡み続ける草。
怪物が迫り、棍棒で殴りかかるまで後数歩、となったところで締め付けが緩む。