14 妖精族の遺品
アルザーが見張りに立っている間、やがて彼らの話はビアトロたちが倒した魔物たちに移る。
「彼らには気の毒な事をしました」
「醜貌人の事ですか?」
ビアトロの問にサジンは頷き、語りだす。
「はい。雪が降りだす頃でしょうか、帝国の紋章を鎧に着けた、おそらくは逃亡兵と思われる兵士達が村に来ました。しかし、村人達との間でいざこざがあり、彼らは村から逃げ出しました。その後、おそらくあの洞窟に潜んでいたのでしょう。それが……」
沈痛な面持ちで語るサジン司祭。
「冬を越せなかったと」
「おそらく。醜貌人が姿を見せ始めたのも雪が溶けてからですので。
先程入った洞窟の中には生活の痕跡があり、……人骨も散らばっていました」
「やはり」
「どうすればよかったのでしょう、どうすれば彼らを救えたのでしょうか?偉大なる天上の主はわたしには何もおっしゃりません」
沈痛な面持ちのサジン司祭にビアトロは告げる。
「今、この地を収めるガシオン公は冒険者組合とともに敗残兵の帰還を推奨しています。彼らの力を借りて祖国に帰れるようにしているのです」
「そうでしたか」
「なのでもし、この先同じことがありましたら村の兵士たちあるいは、村の酒場、ルーメ・ラースの者に話をしてください」
「はい、分かりました」
その話を聞いていたアクレイは、懐から何かを取り出す。
「そういえばさっきこんなものを拾った」
「これは」
ビアトロは懐から竪琴を取り出し、アクレイがさっき拾った首飾りを近づけてみると、わずかながら互いが震えだす。
「これはどうやら妖精銀でできていますね、おそらく醜貌妖精に成り果てた深森痩精の形見かと」
そのビアトロの言葉を聞いたジョルトが近寄り、聖水の入った革袋を差し出す。
「歪みの影響はなさそうですが、万一ということもあります」
アクレイはうなずき、首飾りに聖水をかける。
すると、先程まではこころなしかくすんでいたようにも見えた首飾りの輝きが蘇ったようにも見える。
「こいつはどうすればいいんだ?」
木漏れ日を受けてきらりと輝く首飾りを掲げてアクレイが問う。
「アクレイ様が持っておられたほうがよろしいかと。妖精族の誰かが持ち主を探しているかもしれません」
ジョルトの言葉にアクレイはうなずき、首飾りをしまう。
「もう少し休んだら出発しましょう」
ビアトロの言葉に一同はうなずく。




