131 神話の時代からの盟友
「まさか」
「そう、この地に住んでいたお主ら人間だ。神々は非力で逃げ惑うばかりの人間の中から力あるものを見いだすと特別な契約を交わした。
それは神との結びつきが強くなることでその力を借りることができる契約。
また、姿かたちが神々に似ているゆえ、神々が作り出した武器を使うこともできる。
神から借り受けた力と神々が生み出した神輝鋼や金剛鋼製の武器を扱うことで本来非力な人間も我ら竜同様、悪魔や巨人とも戦うことができるようになった」
「……では」
ネアイズの言葉を聞いたビアトロは傍らで話を聞いているアルザーの方を見る。
「いや、先ほどのニルビとの戦いでアルザー殿が使った剣はその後、人間たちが生み出した魔法文明の遺産だろう」
ネアイズがそう言うとアルザーは腰に下げていた剣を抜いて卓に置く。
柄に青い宝石がはめ込まれているのを除けばこしらえはあまり変わりがないが……
「ああ、これもおそらく精霊銀製だろう。と言ってもノイ・スレイン製ではない。南方大陸の遺跡で見つけたものだ。今作られている精霊銀よりも純度が高く、硬度もある。妖精たちが使っている妖精銀に近いかもしれない」
そう言うとアルザーは剣をしまう。
「うむ。大いなる冬の時代の頃、温暖な南方で栄えていた人間たちが生み出した文明の産物。しかし、彼らは神に近づきすぎたために力を取り戻しはじめた神の怒りを買い、滅ぼされたという。
しかし、我らの勢力圏の外ゆえ、詳細は不明だ。南方に関してはお主らのほうが詳しいのではないか?」
ネアイズの指摘にビアトロはうなずく。
「たしかに。ルーメ・ラースによる南方大陸の調査も進んでいますし」
うなずき返したネアイズは更に続ける。
「話を戻すが、その神々同士の戦いでこの地方の神々は疲弊し、命を落とすもの、転生を試みたものもいるという。そうした神々が一時、力を失い地上界に影響を行使できなくなった時代が幾ばくか続いた」
その説明に合点が行ったビアトロはうなずく。
「それが大いなる冬の時代…では、今またその兆候が現れつつあるのは……」
「わからぬ。先のファルテスとの戦いで神々も疲弊したのかもしれぬが、これ以上を知りたくばカスタニア山脈の奥地にある我らの里を訪れてみるがよい。里のものに認められればより見聞を深められるだろう」
ネアイズの言葉にビアトロは頭を下げる、が彼の胸中に疑問が生まれる。
「ありがとうございます、しかし、なぜそこまで?」
「なぜ?それは我ら竜族とお主ら人間とは戦友だからなのだよ。
まあ、神々の下僕としてではあるがな」
その後も彼らは杯を交わし、酒場の主に促されるまで互いの意見、見聞を交換し続けた。




