13 お得意様
そんなやり取りをしながら皆が食事をとり終えるとアルザーがやおら立ち上がる。
「皆は休んでいてくれ、見張りは俺が立つ」
そう言うと彼は剣を帯び、弓と槍を手にして立ち上がる。
「済まない、後で代わろう」
アクレイの言葉にうなずくアルザー。そしてその後姿を見たラトは……
「アルザーさん、矢は大丈夫?、今ならお安くしておくけど?後、折れた矢があるなら引き取るよ」
彼女の視線はアルザーではなく、彼が下げている矢筒に向けられていた。
「目ざといな」
「まあね」
不敵な笑みを浮かべて、矢筒をあさるアルザーに笑みで返すラト。
そのやり取りにサジンが目を見張る。
「お金を取るのですか?」
「もちろん」
「仲間であろうともその辺りの分はわきまえている」
「なるほど」
ビアトロらの突然とばかりの反応にサジンはその言葉にしきりにうなずく。
彼らは仲間であるが、同時に冒険者と商人としての関係でもある。
「ビアトロさんたちは今や、大事なお得意様だからね〜」
得意げに胸を張るラト。
「ふむ、今のところは大丈夫だ」
矢筒の確認を終えたアルザーがそう言うとラトは、
「なーんだ。残念」
と、口を尖らせる。
「早々世話にはならんよ」
しれっとそう言うとアルザーは一同から少し離れた街道も森の中も見える場所に立つ。
「装備品の損耗を抑える。流石に手慣れておりますな」
ジョルトがそう評するとラトは、
「やっぱり上手いなあ」
「大規模な戦ではないですから」
ジョルトの言葉にラトは苦笑する。
「残念。それにしてもアルザーさんが大盾を貸してくれといったときは驚いたなあ」
遠くであたりを見渡すアルザーをちらちら見ながらラトがつぶやく。
「なぜです?」
「戦ならともかく冒険者があんな大きな盾使うことないのです。かさばるし、動きにくくなりますので」
サジン司祭の問いにラトの代わりにジョルトが答える。
「でも、大盾に草を被せて茂みに見せかけて待ち伏せる。貸出のときに大盾を勧めるいい理由になりそうだね。帰ったらお父さんに教えてあげないと」
「ですね」
「貸し出し?」
「はい、アルザー様のようにいくつもの武器を使いこなす戦士は珍しくはないですが、そのすべてを携えて旅をしているものはけして多くはありません。
しかし、場合によっては所持している武器ではないものが必要な時もあります」
ジョルトの説明にラトがうなずく。
「わたしののお父さんはそういう人に対して武具を一時的に貸し出して使用料を取る商売を始めたんです」
「なるほど」
「装備の貸出も商会の大事な収入なので、よろしくお願いします」
そう言ってラトはサジン司祭に頭をさげる。




