114 飛翔
「ここでは不利です。例の場所におびき出します。
アルザー、案内してください」
ビアトロの言葉にうなずく二人。
「わかった。この子達はどうする?」
「ルコレとケビックに任せます」
アクレイの問いにそう答えるビアトロ。
その言葉にうなずくアクレイ。
振り向くとエーブルとユイールの二人は不安そうにビアトロたちを見上げている。
「二人共、迎えが来るまでお姉さんと一緒に待っていてください」
努めて穏やかに告げたビアトロのその言葉に二人は表情をこわばらせながらも大きくうなずく。
「ほう、逃げるか、ふむ。ではしばしつきあってやろう」
脱兎のごとく駆け出したビアトロたちの背中を竜は見送る。
と、
「あの……」
足元から声が聞こえる。
それは生け贄と称して麓から連れてこられた少女ユキュラ。
彼女は不安げに竜を見上げている。
竜もしばし彼女を見下ろしていたが、やがて長い首を回し、白い雲がながれていく青い空へと目をやる。
「これから我はあの人間たちの相手をする。我がここより飛び立ったら、あの子らとともに山を降りよ」
「でも……」
何が不安なのかユキュラの表情は晴れない。
「あの子らはそなたを助けるために来たのだろう?」
「た、多分そうだと思います」
ユキュラの言葉に竜はうなずく。
「ならばいけ。
……お主と過ごしたここしばらくの日々、悪くはなかった。
では……さらばだ」
竜がそう告げた次の瞬間、龍は再び翼を広げる。だがそれだけではない。
竜の角に放電が走り、翼にも放電が走ると、なんの前触れもなくに竜に向かって風が吹き込んでくる!
竜は広げた翼を水平にする。と、その巨体が信じられないほど軽やかに浮き、
次の瞬間、衝撃と大風が巻き起こり、竜が大空へと飛び去っていく!
「……」
あとに残されたユキュラはしばし、呆然と立ち尽くしていたが、
「お姉ちゃん!」
彼女を呼ぶ声に我を取り戻す。
「あなた達…どうして」
駆け寄ってくるエーブルとユイールにユキュラは目をうるませる。
「ごめんなさい」
駆け寄り抱きついてくる二人をユキュラは優しく抱きしめる。
「いいの、いいのよ。それよりもあの人たちは一体……」
「それは…」




