110 未熟ゆえの無謀
「明るくなったら山狩りだ、どこのどいつかしらないが絶対に見つけてやる」
そう言いあいながら声の主達は次第に遠ざかっていく。
…どうしよう、なんとか合流しないと…
しかし、自分が今どこにいるのかそれすらもわからない。
リュレルは途方にくれながらも短剣を引き抜き、自分の体の無事を確かめると、辺りを警戒しながら斜面を下りていく。
一方、洞窟の入口で休んでいたビアトロたちは洞窟の奥から出てきたケベックに叩き起こされる。
「おい!起きろ!まずいことになったぞ!」
「どうしました?」
一同はケベックからリュレルたちがいなくなったのを聞かされる。
「しかもどうやらそのうちの誰かが村人達に見つかったようだ。村が騒がしくなっている」
その言葉に一同、とりわけビアトロとアルザーの表情が厳しくなる。
「過ぎたことは仕方がない。問題はどこに行ったのか、だ」
アルザーの指摘にしばしの沈黙の後、ケベックが口を開く。
「あんたらの連れはともかく、子供達は山に向かったのかもしれない。俺は素知らぬ顔で村人達から事情を聞いてみる。あんた達は山に行ってくれ」
「分かった」
うなずくアクレイ達、しかし…
「すまない、わたしは遅くなる。竜を相手にするのなら装備を着なければならない」
全身鎧を着たまま寝るわけには行かず、鎧を脱いで寝ていたルアンスが申し訳無さそうに切り出すが、アルザーは首を振る。
「気にしなくていい。だが、彼らに見つからないように来てくれ」
「分かった」
鎧を身に付けたまま寝ていたアクレイ達は手短に装備を整えはじめる。
「すまない」
装具を身に付けながらアクレイが謝意を口にする。
「あなたのせいではありませんよ」
革鎧の留め紐を締めながら首を振るビアトロだが、アクレイは気にせず続ける。
「いや、俺にも覚えがある。村にいた頃のことだ。子供というのは大人に認めてもらいたくてとかく無茶をするもの。わかっていたはずなんだが…」
「だとしても言って聴くようなら苦労はない」
そう言ってアルザーは兜を被り、篭手と矢筒を腰に留めると弓に手を伸ばす。
「……確かに」
「どんなに口で言って聞かせても、実際に痛い思いをしなければ身につかない、そうだろう?」
「……ああ」
アルザーの言葉に自身の体験を思い出したか、アクレイがうなずく。




