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90.やっぱりこの子は――

 王都は毎日平和。


 王城内を歩いていても、時々『聖女様が力に目覚めたおかげだ』という言葉が聞こえてくる。


 平和なのはとてもいいこと。

 けれど、王都以外の街では魔物の被害がないわけではない。


 大きな被害はなくても、魔物が現れたという報告は時々私の耳にも入る。

 それは元々魔物が多く出現していたトーリでも同じようで、聖女の加護を付与した魔石を置いているだけでは、魔物の発生まで抑えることはできないみたい。


 トーリには今、第三騎士団がいる。

 王宮騎士団――特に第一から第三までの騎士団は、優秀な者が集められている。

 だからマルクス様やアニカは無事のようだけど、聖女として、これ以上魔物の被害が大きくならないことを願うばかり。



「――うふふ、今日も幸せだわ」


 私は今日のノルマを終えて、騎士団の訓練を見学させてもらった。

 王城内では常にヨティさんとリックさんがついてくるわけではないので、一人になった瞬間を狙っては騎士様たちの訓練を見に行く。


 本当はもうこっそり見る必要はないのだけど、未だに昔からの癖が抜けない私はその日、柱の陰からその様子を眺めていた。


 マルクス様と婚約中も、私は隙を見ては騎士様の訓練をこっそり見学していたから。


「――やっぱり王宮騎士は格好いい」


 ……?


 そのとき。私の心の声が漏れたのかと思うような言葉が聞こえてきて、私は辺りに目を向けた。


「あら……?」


 すると隣の柱に、私と同じようにこっそりと騎士様の訓練を覗き見している少女がいた。


 私の視線に気づいたその子が、こちらに顔を向ける。


「まぁ……」


 キラキラと輝く金色の髪は肩につくかつかないかほどの長さで、透き通るような白い肌に、青い瞳は大きくて、長いまつげが伸びている。


 年齢は十歳くらいかしら?


 とにかく、とてつもなく美少女。まるでお人形のように可愛い。


「こ、こんにちは。あなたも騎士様の訓練を見学に?」

「……」


 私を警戒しているのか、大きな瞳でじっと私を見上げている少女はなにも答えない。


「初めまして、私はシベルといいます。あなたはもしかして、誰かの妹さんかしら?」

「……」

「とっても可愛いお嬢さんね。お名前は?」


 少女がこんなところにいるのは珍しい。

 だから騎士様の中に兄がいて、そのお兄様の訓練を見学しに来たのかもしれないと思ったけれど。


「はぁぁぁ? 誰がお嬢さんだよ、俺は男だ!」

「え?」


 思い切り顔をしかめて、不愉快そうにそう言った少女……いえ、少年に、私から間の抜けた声が出る。


「どっからどう見ても俺は立派な男だろ!」

「……」


 ローブを羽織っていて服装がよく見えなかったけれど、言われてみれば、確かに男性用の服を着ている。


 顔は本当に可愛くて、女の子みたいだけど。


「まぁ……それは大変失礼しました」

「……なんだよ、素直に謝るのか。まっ、わかればいいけどな!」

「それで、あなたのお名前は?」

「ふっ……、俺か? 俺の名前を聞いて驚け」

「?」


 改めて名前を尋ねた私に、少年は金色の前髪をふわりとかき上げて言った。


 ……少し幼いのだけど、なんとなくこの顔は誰かに似ているような気がする。


「俺はアルミン・ミュッケ! ミュッケ伯爵家の三男だ!」

「……ミュッケ伯爵家?」


 って、もしかして。


「そうだぞ、シベル! 俺は伯爵令息だ! 頭が高い!」

「まぁ……それはそれは、ご機嫌麗しく、アルミン様」


 私も伯爵令嬢だけど、ここは彼に合わせて淑女らしく、お辞儀をする。

 とっても可愛らしい見た目で、「えっへん!」と威張っている彼に、つい笑みがこぼれる。

 ミュッケ伯爵家の三男ということは、彼は――。


「アルミン?」

「あ! 兄貴!!」

「……シベルちゃんも。なにしてるんすか、こんなところで」


 ちょうどそのとき。その人がやってきて、私たちを見て目を見開いた。


 大きな青い目も、金色の髪の毛も、やっぱりそっくりだわ。


「シベルちゃんだと? なんだ、兄貴はこの女と親しいのか? 俺は今、このシベルという女に失礼なことを言われて――」

「おい、馬鹿……! 誰に口を利いてると……!!」

「え?」


 その言葉を聞いて、ヨティさんは焦ったように駆け寄った。


「ごめん、シベルちゃん……! こいつは俺の弟なんだ」

「痛ってーな、なにすんだよ!」

「いいえ。気にしないでください、ヨティさん」


 やっぱり。この子はヨティさんの弟なのね。

 私が聖女であるということを知らないアルミン君の頭をぐいっと下げさせ、ヨティさんは謝罪の言葉を口にした。


「なんだよ、なんで伯爵家嫡男の兄貴が謝るんだよ! しかも兄貴はあの超エリート集団第一騎士団所属で、聖女様の護衛だろ? 偉いんだろう!?」

「だから……彼女がその聖女様だ!」

「……え?」


 ヨティさんの言葉を聞いて、アルミン君の表情がひきつる。

 ギギギ、と音が鳴るようにゆっくりこっちを見たアルミン君に、とりあえず私は微笑んでおいた。


「え、え……、こいつが聖女?」

「だから、その言葉遣いはやめろ」

「だってこいつ、柱の陰からこっそり騎士の訓練を覗いてたぞ!? かなり怪しかったぞ!?」

「それは……」


 その言葉にはぎくりとしてしまう。

 ヨティさんも困ったように苦笑いを浮かべ、言葉を詰まらせている。


 ……ごめんなさい。

 そうよね。私、怪しかったわよね。フォローのしようもないですよね。


 ……あれ? でもアルミン君もこっそり訓練を見学していたようだったし、騎士様を見て「格好いい」なんて呟いていた気が――。


ヨティの弟登場です!

長くなったので二つに分けます。続きは今夜更新予定m(*_ _)m


本日PASH!UPさまで騎士好き聖女コミカライズ3話が更新されています!

無料で読めちゃうので、ぜひぜひ覗いてみてください!詳細は活動報告をご覧くださいませ!(*ˊᵕˋ*)

https://pash-up.jp/content/00002552

下の画像のところからも行けます!!

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[一言] 女に見られたくなきゃ五分刈りにせんかぁーっ!!(゜д゜)
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