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88.二人のことは信頼している

「……!」

「……あんたこそ、聖女様になにしてんだ」

「反応が遅い」


 すぐにリックさんが炎を出して氷を溶かしてくれたし、ヨティさんも剣を抜いて氷のつるの先をたた斬って、私に届くのを阻止してくれたけど。


 オスカー様は氷魔法が得意だと聞いている。

 でも実際にこんな大きな氷をこんなに早く出せるなんて、すごいわ……。


 生活魔法として使う程度の、小さな氷なら出せる人はたくさんいるけれど、リックさんやオスカー様のように、戦いに使えるほどの炎や氷が出せる人は王宮騎士団にもあまりいない。


 魔導師団にはいるでしょうけど、彼らは魔法を使って戦うというよりは、魔法薬を作ったり、人々の生活を豊かなものにするため魔石に魔力付与を行ったりするのが主な仕事。

 だから剣術と戦闘が得意なリックさんは騎士団に所属している。


「命をかけて守る覚悟があるというのなら、常に全神経を集中させていろ。敵がどこにいるかはわからない」

「それはつまり、あんたも敵だって認識でいいのか?」

「リックさん、落ち着いてください!」


 苛ついた様子で再び手のひらから炎を出したリックさんに、慌てて声をかける。


「オスカー様は本気で私を攻撃しようとしたわけではありません!」

「レオポルト殿下に聞いてみようぜ。あの人がなんて言うかで、俺は判断する」

「リックさん……!」


 本気ではなかったとしても、私に氷魔法を向けたと知ったら、レオさんは怒るかもしれない。

 リックさんはそう思ったのでしょうけど……。


 確かオスカー様は、レオさんとミルコさんが騎士団に入ったばかりの頃、お世話になった方。

 リックさんが忠義を誓っているのはレオさんであって、オスカー様にではない。

 リックさんは簡単に人を信用するタイプではないから、いくら団長様といえ、納得いかないのであれば従う気はないのだろう。


 でも、このままでは第一騎士団の間で亀裂が生じてしまう。



「――シベルちゃん!」


 どうしようかと頭を悩ませたとき。

 慌てた様子のレオさんと、一緒にミルコさんもやってきた。

 騎士様の一人が、この状況をお二人に伝えにいってくれたようだ。


「一体どうしたんだ、ヨティ、リック。それから、オスカー殿も」

「聞いてくださいよ! オスカー団長が、俺とリックはシベルちゃんの護衛として相応しくないって言ったんすよ!」


 レオさんを見て、オスカー様は礼儀正しく頭を下げた。


「……どうしてそう思ったんだ?」

「この二人は、シベル様に対して馴れ合いがすぎます。それに、昨夜も遅くまで酒を飲んでいたらしいですね。そんなことで、もしシベル様の身になにかあったとき、すぐに動けるのでしょうか?」

「ああ……なるほどな。事情はわかった。しかし、俺は彼らのことをあなたよりよく知っているが、こう見えて腕は確かだ。剣を振れなくなるほど酔いつぶれることはないし、シベルちゃんに対しての忠誠心も厚い」

「そうっすよ!」


 レオさんのフォローに、ヨティさんは大きく頷いた。

 確かにヨティさんはトーリにいた頃からよくお酒を飲んで酔っ払っていたけれど、翌日にはけろっとしているし、当日だって潰れてしまったところは見ていない。とても陽気にはなるけれど。


 でもヨティさんは元々陽気な人だから、だらしなく見えてしまったのかしら?

 それにリックさんだって。口は悪いけど、本当に私に忠義を誓ってくれているし、とても強い。


 それは私がよく知っている。

 もちろん、レオさんも。


「お言葉ですが、殿下は少々甘くないですか?」

「……なに?」

「トーリでは楽しくやっていたのでしょうが、聖女様が力に目覚めた今、その頃とは状況が違うということをわかっておられますか?」

「……それは、もちろん」

「ご自身の立場もお考えください。あなたは昔から、少し優しすぎるところがある。王太子となられたのですから、ときには厳しいご判断も必要かと」

「オスカー殿こそ、誰にものを言っているかわかっているのか?」

「……出過ぎました」


 レオさんの代わりにミルコさんが言葉を返すと、オスカー様は胸に手を当てて再び頭を下げたけど。


 レオさんは、そのことをよくわかっている。

 突然帰ってきた第一王子が立太子されたことをよく思っていない者が少なからずいることも、理解している。

 だからこそ、レオさんは悩み苦しんでいたというのに。


 それをわかっていないのは、オスカー様ではないかしら……。


 そう思ってしまったけれど、オスカー様は騎士になりたての頃のレオさんとミルコさんを指導してきた方。


 私にはわからない関係性があるのだろうし、レオさんは優しい方だからか、オスカー様にあまり強くは出られないようだ。


「とにかく、二人のことは俺が信頼している。これからもシベルちゃんの護衛を任せるつもりだ」

「……」

「今日のところは納得してくれ。行こう、シベルちゃん」

「はい……」


 レオさんに声をかけられ、私は彼に続いたけれど……。

 オスカー様は頭を下げたまま、返事をしなかった。

 


本日PASH!UPさまで騎士好き聖女コミカライズ2話が更新されています!

2話も無料で読めちゃうので、ぜひぜひ覗いてみてください!詳細は活動報告をご覧くださいませ!(*ˊᵕˋ*)

https://pash-up.jp/content/00002552

下の画像のところからも行けます!!

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