86.夢は夢だから
大っっ変長らくお待たせいたしました!
本日から第三章開始します。
お付き合いいただけますと幸いです。
「シベルちゃん、好きだよ」
「レオさん……」
艶のある黒い前髪を垂らし、ほんのりと頰を赤く染め。
仰向けの私の上に覆い被さっているレオさんは、宝石のように美しい青色の瞳でまっすぐ私を見つめている。
暗い部屋の中、月明かりを受けてレオさんの身体が輝き、輪郭を際立たせている。
本当に……レオさんの筋肉は何度見ても美しいわ。
肩から腕にかけて流れる筋肉はまるで彫刻のように綺麗で、力強さとやわらかさを同時に感じさせる。
胸筋は騎士団長様だった頃と変わらず堅固で、内側に秘めた力が今にも爆発してしまいそう。
レオさんの筋肉はただ美しいだけでなく、力強さと情熱を兼ね備えた魅力があり、心を奪われる。
ああ……レオさん。
あなたは本当に、なんて素敵な方なのでしょう。
理想的で完璧で国宝級の身体を晒しているレオさんが、同じベッドの上で、私のすぐ目の前にいる。
「シベルちゃん、君は本当に可愛いね」
「レオさんも……本当に素敵です」
「嬉しいな」
はぁ……。
優しい声で甘く囁き、にこりと小さく微笑みを見せるレオさんだけど、その表情には昼間は見せない妖艶さを感じる。
男らしい喉仏も、綺麗に浮き出た鎖骨も、たくましい肩も、その先に伸びる太い腕も、形のいい胸筋も、腹筋も――。
灯りの消えた部屋の中で、ぼんやりとだけど私にはちゃんと見えている。
「レオさん……、これはなんて素敵な展開なのでしょう……」
「当たり前じゃないか、俺たちはもう結婚したんだから。これからは毎日こうして君と夜をともにするんだよ」
「まぁ」
そうか……そうよね。レオさんと結婚したら、毎日こんなに美しい筋肉を拝みながら寝ることができるのね。
これ以上ない幸福だわ。
「俺の筋肉は君だけのものだよ」
「まぁ……なんて贅沢なのでしょう」
それはもう、本当になんというご褒美でしょうか。
でも聖女として頑張るために、必要な養分ですものね。
うふふふふ……ありがとうございます、ありがとうございます!
シベルはこれからも頑張ります……!
「さぁ、シベルちゃん。思う存分俺の筋肉を堪能してくれ」
「それでは、ありがたく堪能させていただきます……」
レオさんの素晴らしすぎる胸筋が私に迫ってくる。
ああ……神様。本当にありがとうございます。
レオさんの筋肉に溺れそうになりながら、遠慮なくすりすりさせてもらった。
「レオさんの筋肉は……しっかりしているのに、どこかやわらかいですね」
「そうだよ。君が熟睡できるように、用意したんだ」
「……熟睡? まるで、お布団のような……」
「これは枕だよ、シベルちゃん」
「え……? レオさんの筋肉では……」
『――ベル、シベル、これは枕よ? シベル!』
……――はっ!!
突然、エルガさんの声が聞こえてぱちりと目を覚ました。
「シベル? 大丈夫?」
「…………エルガさん」
「もう、どんな夢を見ていたの? 枕を抱きしめながら『レオさんの筋肉……』とか言っていたけど」
「…………すみません」
目を開けたら、ベッドの前にはエルガさんが立っていた。
すっかり日が昇り、朝を迎えている。
もちろんそこにレオさんの姿はなく、私は一人で枕を抱きしめていた。
私ったら……つい妄想がすぎて、とんでもない夢を……。
レオさんとの結婚まで、あと数ヶ月。
まだ結婚したわけでもないのに、その日々を想像しながら眠ったせいか、とんでもない夢を見てしまった。
……とんでもなく、素敵な夢を。
「うふふふ……正夢になってくれないかしら」
「……シベル?」
「あ……っ! すみません、すぐ起きます!!」
エルガさんは毎朝こうして私のもとに来て着替えなどの支度を手伝ってくれる。
私は一人でも起きられるし、着替えもできるのだけど……一応、将来の王太子妃だから、こうしてエルガさんたち何人かの侍女がついてくれている。
「――シベルちゃん、おはよう」
「おはようございます、レオさん」
支度を整えたら、食堂に向かった。
なにもないかぎり、食事はレオさんと一緒にとるのが日課。
レオさんは今日も王太子として相応しい佇まいをしている。
騎士団長様だったときのレオさんも素敵だけど、王太子となった今のレオさんも素敵。
私は騎士様が好き。けれどレオさんにかぎっては、騎士様でも騎士様じゃなくても、どんなレオさんでも大好きで魅力的。
「シベルちゃんは今日も元気いっぱいだね」
「はい! 今朝は特にとてもいい夢を見たので」
「へぇ、どんな夢?」
「それは――」
そこまで言って、はっとする。
〝レオさんの胸筋にすりすりする夢です!〟
なんて……そんな変なこと、朝から言えるわけがない。
「シベルちゃん?」
「ええっと……レオさんと、結婚した夢です」
「え?」
「うふふ、とても幸せな夢でした!」
「そうか」
夢の中のレオさん(の筋肉)を思い出し、一人照れながら答える。
でも、嘘ではないわよね?
具体的に言っていないだけで。
「俺も、シベルちゃんと結婚した夢なら時々見るよ」
「え……?」
「本当に幸せだし、早く正夢にならないかと、とても楽しみだ」
「まぁ」
レオさんは少し恥ずかしそうに、はにかみながらそう言ったけど……。
まさか、私と同じような夢を……?
って、見るはずないわよね、レオさんがそんなおかしな夢。あれは私の願望だし。
「レオさんはどんな夢を見ているのでしょう? きっと楽しい夢ですよね。レオさんの夢の中に遊びにいってみたいです」
「えっ……」
「?」
何気なく言った言葉に、なぜかレオさんは頰を赤らめた。
「……夢は夢だからな」
「……? そうですね」
俯いて、私の目を見てくれなくなってしまったわ。
どうしたのかしら、レオさん。
お読みくださいましてありがとうございます!
三章いきなりシベル節炸裂ですがどうかお付き合いのほどよろしくお願いします!!m(*_ _)m
本日からPASH!UPさまにて騎士好き聖女コミカライズ連載が開始しました!!\(^o^)/
詳細は活動報告をご覧くださいませ!
無料で読めちゃうので、ぜひぜひ覗いてみてください!
https://pash-up.jp/content/00002552
漫画を担当してくださっている土橋朱里先生が、とっても可愛いシベルと、めちゃめちゃ素敵な騎士(筋肉)を描いてくださっています!(*´˘`*)
※また、三章からなろう版では出ていなかった国の名前を書いています。
(シベルの国→グランディオ王国。隣国→バーハンド王国)
※50.キャラクター紹介更新してます!ご興味のあるからはご覧くださいませ!
コミカライズは次回から毎月第1・第3火曜日更新予定です!
なろう連載は週一更新予定(火曜日)。
Xでもお知らせしますのでよろしければフォローしてくださると嬉しいです(*´˘`*)(@mahiro210422)
よろしくお願いいたします!!