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75.シベルちゃんも食べてみる?

 今日は、息抜きにレオさんと出かけることになった。

 もちろん今日も魔石に聖女の加護を付与するけれど、一日中ここに籠もっていては気が滅入るだろうとレオさんが誘い出してくれたので、少しだけ外に出ることにした。


 お散歩がてら、手を繋いで表通りまで歩く。

 騎士服のレオさんも軍服姿のレオさんもとっても素敵だけど、平民の格好をしているレオさんも素敵。

 どことなく隙があるというか、色気があるというか……。


「格好いい……」

「ん? なにか言ったかい? シベルちゃん」

「あっ、いいえ! なんでもないんです、レオさん!」

「? そうか。あ、あっちに行ってみようか」

「はい!」


 そういえば、私たちは一応婚前旅行という名目でこの国を訪れたのだった。

 だから、本当に少しだけどこうしてレオさんとデートらしいことができて嬉しい。


 ……デート。そうよね、これはデートよね!!


 知らない国の知らない街を歩くのは少しドキドキする。けれどレオさんが一緒ならどんな場所だって楽しいし、わくわくしてしまうからとても不思議。


「まぁ、すごい。お祭りでもやっているのでしょうか?」


 表通りを抜けた先には、たくさんの出店があった。とても賑わっているし、人もたくさんいる。


「どうだろう? 普段からこうなのかもしれないな」

「皆さんとても楽しそうですね」

「ああ。これからはシベルちゃんと一緒に色んな町へ視察に行きたいな」

「まぁ! ぜひ!!」


 レオさんと色んな町に視察に行くということは、その先で一緒に泊まることにもなると思う。

 もちろん視察は遊びではないけれど、私が加護を付与した魔石を各地に運び届けることだって自分でできたら嬉しいし、できればその地で暮らす人たちを実際に見てから加護を付与したい。

 そうすることで、より強い力を魔石に付与することができるのだから。


「なにか欲しいものがあったら言ってくれ」

「はい! あっ、見てください、あれはなんでしょう?」


 私の目に飛び込んできたのは、宝石のようにキラキラと輝いている色とりどりの丸いもの。串に刺さっているから、食べ物かしら?

 でも本当に、とても綺麗。


「あれはフルーツキャンディだな」

「え? あれがキャンディなのですか?」

「ああ。果物を飴でコーティングしているんだよ」

「へぇ……すごく可愛くて、綺麗ですね」

「買ってみようか」

「はい!」


 そのお店の前まで行き近くで見てみると、確かに透明な飴の中にいちごやぶどう、レモンが包まれていた。


「シベルちゃんはどれにする?」

「私はいちごにします!」

「じゃあ俺はレモンにしようかな」

「エルガさんたちにも、お土産に買ってもいいでしょうか?」

「ああ、きっと喜ぶよ」

「ふふ、そうですね!」


 そういうわけで、エルガさん、ミルコさん、ヨティさん、リックさん、それからヴァグナー様の分のお土産を買い、私たちは食べながら歩くことにした。


「とっても甘くて美味しいです!」

「そうか、よかった」

「キラキラしていて、宝石のように美しい見た目をしているのに甘くて美味しいなんて……すごいお菓子があるのですね」

「そうだね。国に帰ったら用意しよう」

「わぁ、ありがとうございます!」


 私はいちごにしたけれど、ぜひ他の果物も食べてみたい。


「……レオさんのレモンも、美味しいですか?」

「ああ。かじるとちょうどいい甘さになるよ」

「そうでしょうねぇ……」

「…………シベルちゃんも食べてみる?」

「え!?」


 私があんまりじっと見つめてしまったからだわ。

 レオさんは照れたように笑いながら、レモン飴を私の口元に近づけた。


「い、いいえ……! その、大丈夫……です……!」

「そう? それじゃあ、やっぱり国に帰ったら色々用意するよ」

「はい……」


 ちょっと惜しいことをしたかしら?

 でも、レオさんがかじった飴をもらうなんて……。

 さすがに申し訳ないというか……。


 もうレオさんとは口づけもしているけれど、なんだかそれとは違う恥ずかしさがある。


 そんなことしたら、絶対顔がにやけるに決まってる……!


 レオさんは純粋な気持ちで私に味見させようとしてくれただけなのに、気持ち悪い女だと思われてしまっては大変。


 落ち着くのよ、シベル……!


「喉が渇いたな。何か飲み物を買ってくるから、シベルちゃんはちょっと待ってて」

「はい」


 飴を食べながらしばらく歩いて、お店を見て回った私たち。

 飴を食べ終わった頃、ベンチを見つけたレオさんは私をそこに座るよう誘導し、串を受け取って飲み物を買いにいった。


 レオさんは王子様なのに、とても優しくて気配りができる方だわ。さりげなく串も捨ててきてくれるようだし。

 私ったら、全然気が利かないんだから……。浮かれていては駄目よ、シベル。


「――ねぇ、あなた」

「はい?」


 自分にそう言い聞かせていたら、誰かに声をかけられた。振り返ると、そこには昨日ヴァグナー様のお店に来た女性が、三人立っていた。



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