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61.レオさんが喜ぶんですか?

 陽が落ちてきた頃、ディアヌ様とレオさん、私の三人で夕食をいただいた。


 ディアヌ様は久しぶりに息子(レオさん)に会えてとても嬉しそうだった。

 終始ご機嫌に、トーリでの様子や私との馴れ初めをレオさんの口から直接聞いては、美味しそうにワインを喉に流していた。



「――ディアヌ様、お風呂のご用意ができました」


 食事が済んでしばらく経った頃、話が止まない私たちのもとにやってきた使用人がディアヌ様に声をかけた。


「ありがとう。ねぇシベルちゃん、一緒に入りましょう。ここのお風呂は広くて立派なのよ。私があの人に言って、お風呂はこだわったんだから」

「まぁ」


 ディアヌ様は少し酔っているご様子だけど、お酒はとても強いみたい。

 結構飲まれていたのに、まだまだしっかりしている。レオさんもかなり飲んでいたように思うけど、きっとお母様譲りでお酒は強いのね。あ、もちろん私は飲んでいないので、安心してほしい。


「レオは駄目よ? 私はシベルちゃんと女同士で話がしたいんだから」

「あ、当たり前だろう! なにを言っているんだ、母上は……!」


 ふふっと笑いながら冗談(・・)で言ったディアヌ様の言葉に、レオさんは頰を赤らめた。


 レオさんとディアヌ様はとても仲のいい親子で、見ている私もとても楽しい。


「それじゃあ行きましょうか、シベルちゃん」

「は、はい!」


 レオさんのお母様と突然一緒にお風呂なんて、少し緊張するけれど……別にレオさんも一緒に入るわけではないのだし、そう緊張することもないわよね。……レオさんと、一緒にお風呂……?


 そんなことを自分に言い聞かせて、一瞬レオさんの肉体美を思い出してしまった私の顔から火が噴いた。


 馬鹿シベル……!! なにを想像しているのよ、これではお風呂に入る前にのぼせてしまうわ……!


「どうしたの、シベルちゃん」

「いいえ……! なんでもありません」

「そう?」

「はい!」


 ぶんぶんと頭を横に振って邪念を取り払っていたら、ディアヌ様に心配されてしまった。でも、ディアヌ様が気さくな方でよかった。

 王妃のメラニー様とは、タイプがまったく違う。




「わぁ……本当に、とっても素敵な浴室ですね!」

「そうでしょう?」


 ディアヌ様専用の浴室をお借りした私は、思っていた以上の豪華な浴室と大きな浴槽に、思わず感嘆の息をこぼした。

 白で統一されていて清潔感もあるし、なんだかいい匂いがする。


「ふふ、気に入った? お湯に私のお気に入りのアロマを入れているのよ」

「はい……とてもいい匂いです」

「そうでしょう。きっとレオも気に入るわ」

「まぁ、レオさんも」


 男湯のほうにも、同じアロマを入れているということだろうか?


「それにしてもシベルちゃん、貴女脱ぐと意外と……」

「はい?」

「いいえ。レオが喜ぶだろうなって」

「?」


 一体レオさんが何を喜ぶのかいまひとつよくわからなかったけど、お花のような甘くて上品な香りにすっかり癒やされた私は、鼻から深く息を吸ってほわほわした気分になりながら、レオさんが喜ぶことならいいかと、一人納得した。


「だけど本当に、レオと婚約してくれてありがとう、シベルちゃん」


 二人でお湯につかり、その優しいあたたかさにひたっていたら、ふとディアヌ様が真剣な声音で言った。


「いいえ、私こそです……! 私のような者が聖女で……なんだか申し訳ないと言いますか……」

「ううん。レオがシベルちゃんのことをとても大切に想っているのは、見ていたらわかるわ。私が王の愛人だったせいで、あの子には辛い思いをさせてきたから……レオが幸せそうでとても嬉しいの」

「……まぁ」


 先ほどレオさんの前で明るく振る舞っていた様子とは少し違い、ディアヌ様は〝母親〟の顔をしている。


「それでも最初に生まれた王子だから、弟のほうを確実に次期国王にするために命を狙われたこともあったわ。あの子が騎士になる道を選んだのは、正しかったと思う。少し心配だったし寂しかったけど、私もあの子の父親も反対はしなかった」

「そうなのですね……」


 私は騎士様であるレオさんを単純に格好いいなんて思っていたけれど、その背景にはそんなに簡単ではない事情があったのだろうし、レオさんは本当に苦労されてきたのかもしれない。

 命を狙われたこともあっただなんて……。


「でも、そのおかげでレオはたくましく強く育ったし、貴女と出会って好きになってもらえたようだから、本当によかったわ」

「はい」


 にこりと微笑んでくれるディアヌ様の言葉には、少し照れてしまう。私も、騎士となったたくましくて格好いいレオさんは大好き。もちろんレオさんのいいところはそれだけではないということは知っているけれど。


「レオが騎士団長ではなく、ただの第一王子だったら、貴女はレオに興味を持ってくれなかったかしらね?」

「え……っ」


 けれど続けられたその言葉に、私の鼓動はドキリと跳ねる。


「ディアヌ様……、その……知っているのですか……?」

「ふふ、私はこれでも長年王の愛人をやっているのよ? それなりに色んな情報は入ってくるわ」

「そうでしたか……なんというか……すみません……」


 私がたくましい騎士様や筋肉が好きだということは既に知っているらしい。まぁ、第一王子(息子)と結婚する相手がどんな女か知りたくなるのは自然な感情だろうし、もう第一騎士団の方たちも知っていることだから、当然といえば当然よね。


「レオが貴女好みの男に育ってくれてよかったわ」


 うふふ、と楽しげに笑っているディアヌ様から嫌味のようなものは一切伝わって来ないから、本当に喜んでくれているのだろう。


 心の広いお母様でよかった。




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― 新着の感想 ―
[一言] ディアヌお義母様にはお見通しと…(笑)
[一言] 脱いだら凄いカップルかぁ…
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