表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/131

33.俺のために?※レオ視点

 シベルちゃんにお礼がしたくて。彼女に喜んでほしくて。

 俺は早朝に寮を出て、一人街に向かった。

 ヨティから聞いた、新しくできた人気のケーキ屋は、すぐに売り切れてしまうらしい。


 朝から並んだおかげで、なんとかホールケーキを一つ買うことができた。


 これをシベルちゃんと一緒に食べよう。


 結構大きいから、寮母の皆にもあげよう。そう思ったが、まずはシベルちゃんだ。


 二人きりで、彼女の幸せそうな顔を見ながら食べたい。


 シベルちゃんが嬉しそうにしているところを想像するだけで、俺の胸は満たされていく。

 しかし同時に、実際にその姿をこの目で早く見たいと気が急いて、つい周りをよく確認せずに、すぐに彼女に声をかけてしまった。


 他の寮母たちが今どうしているか、もっと慎重になるべきだった。


 シベルちゃんが一人のときに声をかければよかった。


 優しい彼女が、先輩に声をかけられて一人でケーキを食べるような女性なはずがないのに。


 完全に俺のミスだ。


 でもまぁ、シベルちゃんや寮母の皆が喜んでくれるなら、俺はそれでいいではないか。


 シベルちゃんを独り占めしようとした罰が当たったのだな。


 そう思い、大人しく仕事をしようと執務室へ戻った。



 しかし、その日の夜――


 夕食を終えた俺は、再び執務室で残っていた仕事を片付けていた。


「レオさん、いらっしゃいますか?」

「シベルちゃん?」


 すると、扉をノックする音とともに、シベルちゃんの声。


「どうぞ」


 どうしたのだろうと思うのと同時に、彼女の声に高鳴る胸。


「失礼します。お仕事中にすみません」

「いや、構わないよ」

「あの、こちら……よかったら」

「なんだい?」


 立ち上がってシベルちゃんに歩み寄ると、彼女は手に持っていたバスケットの中から、それを取りだして俺に見せた。


「これは……」

「昼間は、美味しいケーキをありがとうございました。本当に美味しかったです。でも、レオさんは召し上がれなかったので……」

「え?」


 シベルちゃんが持ってきてくれたのは、カップケーキだった。

 少しだが、クリームとチョコレートがかかっている。


「いただいたケーキのように美味しくはできませんでしたけど、本当はレオさんもケーキ、召し上がりたかったんじゃないかなって」

「……シベルちゃん」


 それで、わざわざ作ってくれたのか?

 仕事もあるだろうに、その合間に? 俺のために?


 シベルちゃん……。君は本当に、なんて優しくていい子なんだ。


 それも、俺のことを気にかけてくれていたなんて……嬉しすぎる……!!


 これはもしかして、俺たちは両思いなのでは――


「ありがとう、シベルちゃん。俺のためにわざわざ。とても嬉しいよ」

「いいえ、いつも騎士の皆さんに感謝しているのは私のほうなので」


 騎士の皆さんに(・・・・・・・)、か。


 ……まぁ、いい。

 実際に俺のために作ってくれたんだ。きっと彼女も照れているのだろう。


「本当に、俺のためにありがとう。今紅茶を淹れるから、よかったら一緒に――」


 そこまで言ったとき、彼女のバスケットの中身が見えて、俺は言葉を詰まらせた。


「……随分たくさんあるんだね」

「はい! これからミルコさんたちにも持っていこうと思って」

「……へぇ、ミルコたちにも」

「皆さんいつも頑張ってくれていますから! レオさんに喜んでもらえてよかったです! 皆さんも喜んでくれるといいのですが」

「……」


 無垢な笑顔でそう言ったシベルちゃんに、俺はなんとも言えない複雑な感情を覚える。


 そうだよな……彼女は優しい子だ。なぜ俺だけのために作ったと思った?

 自惚れるな……。


「それでは、お仕事中に失礼しました」

「待って、俺もついていくよ。こんな時間に君一人で男の部屋を回るのは危ないから」

「え……?」


 第一騎士団の中に、シベルちゃんをどうこうしようとする奴などいないということはわかっている。


「ありがとうございます。でも、一人でも大丈夫ですよ? レオさん、忙しいでしょうし……」

「いや、仕事はもう終わる。全然忙しくなどない」

「……そうですか?」

「ああ」


 わかっているさ。これは嫉妬だ。一番最初に俺のところに来たのだと、皆に見せつけたいだけなのだ……。


 く……、我ながら本当に子供っぽい……。


「ありがとうございます!」と言ってまた無垢な笑みを浮べるシベルちゃんに、俺の胸は小さく痛む。


 ああ……なんて純粋な笑顔なんだ。

 俺が間違っていた。ケーキで君を釣って、二人きりになろうとしていた俺は、なんて汚らわしい男なんだ……!!

 自分が恥ずかしい!!


「でも、やっぱり本当はあのお店のケーキが食べたかったんですよね?」

「いや、いいさ。また買ってくるよ。今度は彼らの分も」

「まぁ……! レオさんって本当に仲間思いでお優しいですね!」

「……そうかな」


 キラキラと輝いた天使のような笑顔に、俺の胸は締めつけられる一方だった。




あれ……?不憫なレオを救うはずが……どうしてこうなった?( ;ᵕ;)‬w


いつも感想ありがとうございます!

皆様面白すぎます!!


次回からお話が動き出しますm(*_ _)mよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁこうなるよね~!!…としか言えないぞレオくん…だって何も言ってないもんね。 推しの皆さん、サイコー!!ってなってる相手に、個人として認識されるためには確実なヒットが必要なのだ…!それを打…
[一言] これもうサークルクラッシャー系悪女では? ボブは訝しんだ
[一言] >  これはもしかして、俺たちは両思いなのでは―― レオさんが男子中学生に見えて来たw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ