128.あれは幻覚だったのかしら
「甘い! もっと先を読め」
「はいっ!」
今日も騎士様の訓練を見学に来たら、オスカー様が部下に稽古をつけていた。
しっかりと騎士服を着ているし、いつもの恐ろしいくらい真面目なオスカー様だわ。
「……」
この間私が見たのはなんだったのかしら……?
あのとき、オスカー様はご自分の身体を見てうっとりしているように見えた。
〝美しい〟とも言っていたけれど……。
「判断が遅い」
「はい……っ!」
やっぱり、あのオスカー様があんなことを言うとは思えない。
「もしかして私は幻覚を見たのかしら?」
「――シベルちゃん、見つけた。やっぱりここか」
「! レオさん!」
そんなことを考えながら騎士様たちを見つめていたら、ふいにレオさんに名前を呼ばれてドキリと肩が跳ねた。
「……ん? オスカー殿が稽古をつけているのか。珍しいな」
「うふふ、そうですね」
「シベルちゃん、やはりオスカー殿に見とれていないか……?」
「いいえ!! 違うんです、そうではなく……!」
「そうではなく?」
「えっと……」
レオさんが疑いの視線を私に向けて、ずいっと迫ってくる。
ああ……ちょっと拗ねているレオさんのお顔も素敵です……!
ではなくて! あのとき見たことを、レオさんになら話してもいいかしら?
それともあれはオスカー様の秘密? はたまた私の幻覚?
「シベルちゃん?」
「……その」
「ん?」
「…………」
言い淀む私に、レオさんがどんどん迫ってくる。
ちらりと視線を上げると、やっぱり少しだけ拗ねた表情をしたレオさんが、すぐ目の前にいて。
視線を正面に向けると、レオさんのたくましい胸板が目に映って。
婚約しても、どんなに一緒にいても、完璧なレオさんの美しさに慣れることはない。
だからこんなに近づかれると、未だにドキドキしてしまう。
「――レオポルト殿下」
そんな私たちの耳に、オスカー様の声が届いた。
「どうかされましたか?」
「いや……俺はシベルちゃんを迎えにきただけだ」
「シベル様を?」
レオさんの影になっていた私に気づき、視線を向けてくるオスカー様。
「……シベル様は、なにを?」
「えっと……私は騎士様たちの訓練を見学に」
レオさんは知っていることだし、隠す理由はないので正直に答える。
「そうでしたか。それでしたらこんなところでこそこそせず、堂々と近くでご覧になってください」
「はい……、ありがとうございます」
オスカー様はいつも通りだわ。
やっぱり私が見たアレは幻覚だったのかしら?
「それじゃあ俺たちはもう行こう。オスカー殿、忙しいだろうに彼らに稽古をつけてくれてありがとう」
「いいえ、当然のことです」
「それじゃあ行こうか、シベルちゃん」
「はい」
いつも通りの美しい所作でレオさんに頭を下げたオスカー様を置いて、私たちはその場をあとにした。
……うん、きっとアレは私の見間違いね!
私の願望が幻覚となってしまったのよ。それから、幻聴と。
気になってしまうので、もう考えるのはやめましょう。
「レオさん、どこに行くのですか?」
「頼んでおいた指輪が出来上がったんだ」
「え! 結婚指輪がですか?」
「ああ、だから一緒に確認しようと思って」
「まぁ、嬉しいです」
レオさんとの結婚式まで、あと二週間となった。
この間オーダーした結婚指輪。どんなものになったか、楽しみだわ。
次回で3章もラストです!!;;
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