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124.負けないで

「二対一でいい。私に一撃でも入れることができたら認めてやろう。だが、それが無理だったら……そのときは聖女様の護衛から外れてもらう」

「いいっすよ。なぁ、リック」

「当然」

「……ああ、お二人とも」


 外は既に暗く、お城から漏れる光と月明かりだけがその場を照らしている。


 本当に大丈夫かしら。お二人を信じたいけど、今の状態で本気を出せずに負けてしまったら……。


「シベルちゃん」


 不安げに見つめる私に気づき、レオさんがそっと声をかけて頷いてくれた。

 レオさんの目は、「大丈夫」と言っているように見える。


 ……私もお二人を信じて、レオさんと一緒に見守ろう。



「手加減は抜きっすよ!!」


 まず剣を抜き、オスカー様に向かっていったのはヨティさんだった。

 突然表情が変わり、お酒を飲んでいるとは思えない動きを見せる。


〝ガキィィィィン――〟


「すごい……」


 ためらいなく斬りかかったヨティさんの剣と、それを受け止めたオスカー様の剣が激しくぶつかり合う音が辺りに響く。


 本当に、お酒を飲んでいてもいつもと同じように動けるなんて。

 あれははったりでもなんでもなかったのね。

 これが王宮第一騎士団の実力。すごいです、ヨティさん!


 でも、さすがは団長様。オスカー様は余裕そうにヨティさんの剣を弾いた。


「くそ……っ」

「なにやってんだ、ヨティ! 退け!!」


 次はリックさんが斬りかかったけど、オスカー様は素早く手を前に出すと氷の盾を作り出し、リックさんの大きな剣を防いだ。


「ハッ、こんなのありかよ……!」

「おまえも惜しまず魔法を使え」

「……っ」


 リックさんの重々しい一撃でも壊れない、頑丈な氷の盾。

 瞬時にあんな強力な盾を作れるなんて、オスカー様の氷魔法は一流なのね。


「そうか……じゃあ俺の炎とあんたの氷、どっちが強いか勝負だな」


 リックさんは口角を上げて盾から剣を離すと、左手で炎を作り出す。


「火傷しても文句言うなよ――!!」


〝ボォ――――ッ!〟


 リックさんが叫ぶのと同時に、大きな炎が氷の盾を覆った。けれど、オスカー様の表情は変わらない。


「ふん、まだまだ甘いな、小童が」

「……っ!」


 氷の盾は溶けるどころか、更にそこからメキメキと氷のつるを伸ばし、リックさんに向かって伸びていく。


「くそっ!」


 リックさんは氷のつるを剣で受け止め、負けじと炎の威力を強めていくけれど、オスカー様の氷は溶けそうにない。


 以前私に氷のつるを向けたときは、やはり本気ではなかったんだわ。


「リック、おまえこそ退けよ!! 俺が一撃入れてやる!!」

「ああ!?」


 オスカー様の隙を見て、ヨティさんがもう一度斬りかかる。

 けれどオスカー様はヨティさんの攻撃を剣で受け止めると、すぐに片手で弾いた。


「く……っ!」


 魔法はリックさんより上、力はヨティさんより上……。


 これが普通の稽古だったなら、とても頼もしいと思いながら、ただ興奮して見ていられるのに。

 お二人が負けてしまったら、もう私の護衛ではなくなってしまう。

 やっぱりそれは嫌……。


 ヨティさん、リックさん……。お願い、負けないで!!


 だから私は、心の中でお二人を応援した。



戦いは続きますが、お知らせです!


★お知らせ★

3/7(金)に、騎士好き聖女の文庫小説1〜2巻&コミックス2巻、3冊同時発売決定です\(^o^)/

文庫版のイラストはコミカライズ作画の土橋朱里先生が担当してくださいました!

文庫限定の書き下ろし番外編&イラスト収録で、小説2巻はなろう版に大幅加筆しておりますᕙ(`・ω・´)ᕗ


そして本日コミカライズ19話が更新されてます!

18話も無料公開となりました!

https://comicpash.jp/series/4c849f776c070


よろしくお願いいたします!m(*_ _)m

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