123.試してみるか?
「――またオスカー団長に言われましたよ、俺とリックをシベルちゃんの護衛から降ろすって!」
その日の夜。私とレオさんは、少し遅めの夕食をミルコさん、ヨティさん、リックさんと一緒にとった。
今日の仕事は終わり。そして今は私たちの他に誰もいない。
食後にブランデーを開けたヨティさんは、鬱憤を吐き出すように言った。
「どーして俺たちのことを信用してくれないんすかね!」
「その件は俺も聞いた。シベルちゃんが湖に落ちるのを防げなかったのは俺の責任でもある」
「でも殿下がすぐに助けたし、俺たちが魔物を倒して、最高のチームワークだったじゃないっすか!」
「まぁ、そうだよな」
ヨティさんは不満そうにぷんぷん怒っている。
その隣で、リックさんも静かに同意した。その顔をよく見たら、リックさんも十分不満げに眉をひそめていた。
ブランデーが入っているグラスを強く握りしめているようで、手に筋が浮いている。
……グラスを割らないでくださいね?
「その件は、なにより私の不注意が原因ですので……私からも改めてオスカー様に話してみます」
「シベルちゃんは悪くないけど、聖女様自らお願いしてくれたら聞いてくれるかも!」
「はい」
ヨティさんたちは、私は悪くないと言ってくれるけど、凄腕の護衛騎士様がついてくれているとはいえ、油断した私が悪いのは事実よ。
いくらお二人が優秀でも、いつでも守ってもらおうなんて思っていては駄目。
むしろ魔物や瘴気からは、私が皆さんをお守りするくらいの気持ちでいなければ……!
それに、ヨティさんとリックさんが私の護衛じゃなくなってしまうのはとても寂しい。
もちろん、他の騎士様を信用していないわけではないけれど、このお二人とは以前から特に親しくさせてもらっているから。
「へへっ! いくらオスカー団長でも、俺たちの絆に割り込むことなんてできないっすからね!」
「うふふ」
ヨティさんはすっかり機嫌が直ったのか、陽気にお酒を飲んでいる。
私はヨティさんや皆さんが楽しそうに笑っているのを見るのが好き。
この笑顔は、私が守らなければ……!!
「――また酒を飲んでいるのか」
「! オスカー様」
そのとき、呆れたような溜め息が聞こえて振り返ると、そこにとても険しい表情のオスカー様が立っていた。
「仕事終わりにちょっと飲むくらい、いいじゃないっすか」
「そんなに酔っていて、聖女様の身になにかあったらどうする」
「全然酔ってないっすけど……もちろん守りますよ」
「その状態でいつもの動きができると思うか」
「できますよ!」
「そんなはずないだろう」
「はぁ!?」
「……ヨティさん」
一瞬にして、険悪な空気が流れる。
「オスカー殿、今は俺もミルコも一緒だ。それに城内で危険なことは早々起きない。いつでも気を張っていては、シベルちゃんも彼らも無駄に疲れてしまう」
「それが甘いと言っているのです。シベル様には常に護衛の騎士を二人つけ、城から出ないでお過ごしいただきたい。極力、部屋からも」
「それはさすがに……!」
「あなたもですよ、レオポルト殿下」
「……っ」
オスカー様の厳しい言葉に、レオさんが言い返そうと反応した。
そうよ……部屋から出なかったら、どうやって騎士様の訓練を見学すればいいの!?
それに常に見張られていたら、こっそり騎士様が出てくるロマンス小説を読んでにやけることもできないわ。
「それは困ります!!」
だからレオさんより早く、私が大きな声を上げてしまった。
「そうだ。いくら護衛とはいえ常に男が部屋にいては彼女の気が休まらないし、ときには街に出かけたりもしたいだろう?」
「えっ? …………はい! その通りです!」
「……シベルちゃん、今の間はなに?」
「いいえ、レオさんのおっしゃる通りです……!!」
少しだけ、レオさんと私が思う困る理由が違ったけど、だいたいレオさんの言う通りだわ。
「では聖女様の護衛騎士は改めて私に選ばせてください。仲がいいという理由で選ぶのは納得できません」
「仲がいいというだけの理由では――!」
「そんなに言うなら、試してみますか?」
「え?」
私の声に被せるように、今度はリックさんが大きな声を出す。
「この状態でもしっかり聖女様を守れると、証明してみせますよ」
「そうだな。確かにそれが一番手っ取り早い!」
「リックさん、ヨティさん……」
立ち上がり、手のひらの上に炎を作り出したリックさんは明らかにオスカー様を挑発している。
ヨティさんも隣に置いていた剣を手に持ち、立ち上がった。
「……ほう。私とやる気か。しかもその状態で」
「それなら納得しますよね?」
「よかろう。では外に出ろ」
リックさんの挑発に乗るように、オスカー様はふっと口角を上げると外の訓練場に向かった。
やる気満々のリックさんとヨティさんに続いて、私たちも外に出る。
ああ……なんだかとんでもない展開になってしまったわ……!
「ヨティさん、リックさん……本当に大丈夫でしょうか」
「大丈夫! 俺たちはどんなときもシベルちゃんを守れるって証明するから、見ててよ!」
「そうだぜ、シベル。俺たちを信じろ」
「……はい」
もちろんお二人の強さを疑っているわけではないけれど、オスカー様はレオさんとミルコさんの師匠でもある方だし、氷魔法が得意。だから、すごく強いはず。
それに、ヨティさんは顔がちょっと赤いし、リックさんだってお酒を口にしていたし……。
本当に大丈夫なのか、私の胸中に不安が広がっていった。
オスカー団長VSヨティ&リック。ファイッ!!٩( 'ω' )و
本日コミカライズ18話が更新されてます!
17話も無料公開となりました!なにとぞm(*_ _)m
https://comicpash.jp/series/4c849f776c070





