110.瘴気が強すぎて
昨日はゆっくり温泉に入って、レオさんのバスローブ姿が見られて、いい夢を見たような気がする。
あまり覚えていないけど、目覚めはとてもよかった。
「さぁ、今日は頑張りましょう……!」
朝食を食べ終えた私は、レオさん、ミルコさん、リックさんと一緒に、ヨティさんの案内で瘴気が発生してしまったという湖に向かった。
馬車に揺られながらその場所へ向かったけれど、さすがに少し緊張してきた。
瘴気を浄化するのは初めて。
うまくできるかしら……。
ううん、きっと成功してみせるわ!!
「――ここはピクニックをするのにちょうどよくて、人気の場所だったんすけどね」
しばらくして到着したのは、街の外れにある大きな湖。
こんな静かで美しい場所にある大きな湖なら、確かにピクニックには最適だし、とても人気があったのも頷けるけれど――。
「これは……酷いですね」
「ああ」
確かに、湖全体の水が黒く濁っている。
それに、私にでもわかるほど強い瘴気を感じる。
この湖の中に強い魔物がいてもおかしくないレベル。
でも、この湖から魔物が湧いているとは考えにくい。
これまでは普通の湖だったというし。
「とにかく、浄化してみます」
近くに魔物の姿はない。
魔物が近づけば、ミルコさんがいち早く察知する。
けれど、湖から発生している瘴気が強すぎて、ミルコさんの感知能力が鈍る可能性もある。
それに、魔物は強い瘴気に引き寄せられるようにやってくる。
聖女である私がいても、これだけ強い瘴気なら、魔物がやってくる可能性は大いにある。
だから魔物が現れる前に早く浄化してしまおうと、私は手を胸の前に組み、目を閉じて祈った。
〝悪しき魔物の瘴気、浄化されよ――〟
隣にはレオさんがいて。ミルコさんたちもいてくれる。
だから安心して聖女の力を使うことに集中できているはずなのに、手応えがない。
瘴気が消えていく感じがまるでしない。
「……駄目、ですね」
「シベルちゃんの力は解放されているというのに……」
「あの、直接水に触れながらやってみてもいいでしょうか?」
「しかし、瘴気は人体に有害だ。いくらシベルちゃんが聖女でも、直接触れないほうがいい」
「……では、もう少し近づいてみます」
「わかった」
ギリギリのところまで近づき、膝を地につけ、もう一度目を閉じて祈る。
「シベルちゃん、気をつけて」
「はい」
レオさんたちも近くまで来てくれた。
大丈夫、今度こそ私がこの瘴気を浄化してみせる――。
「おお……!」
先ほどと同じように祈ると、今度は手応えを感じた。
目を閉じていてもわかる。
私の力が湖に届いている。少しずつだけど、瘴気を浄化していってる。
思わず漏れたように声を出すヨティさん。
この調子……、この調子で続ければ、きっと――!
そう思い、力を強めた直後。
「シベルちゃん――!!」
「――っ!?」
ザバァ――と水音が聞こえるのと、レオさんが私の名前を呼んだのは同時だった。
目を開けた次の瞬間には、何者かに引っ張られるように、私の身体は瘴気で黒く濁った湖の中に落ちていた。
シベルピンチです。
本日、騎士好き聖女のコミカライズ第12話が更新されてます!
ぜひぜひコミカライズもお楽しみくださいませ~!!
皆様の推しを見つけてくださいᕙ( 'ω' )ᕗ
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