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108/131

108.俺にできることは※レオ視点

「しかし、なぜ突然この街の湖に瘴気が……」

「本当に不思議っすね。この土地は平和だったんすけど」


 その日の夜。

 俺はミュッケ伯爵家の温泉に浸かりながら、先ほど聞いた話をミルコたちにも伝えた。

 温泉の湯気が立ち込める中、心地よいあたたかさが身体を包み込む。だが、心の中では不安が渦巻いていた。


 数週間前に発生したという瘴気だが、トーリの魔石が割れた時期と近い。


「……」

「レオ? なにか気になることでもあるのか?」

「いや……」


 ……だが、偶然だよな?

 

 シベルちゃんが聖女の力に目覚めて、まだ日が浅い。

 この国全体の平和を一度に守ることは不可能だし、たまたま重なってしまっただけだろう。だが、その偶然が不安を呼び起こす。


 もしかしたら、トーリで発生した魔物がミュッケ領に逃げ込んでしまったのだろうか……。


「とにかく、その場所に行って調べてみる必要がありそうだな」

「ああ」


 ミルコの言うように、まずは見てみないことにはなんとも言えない。

 原因が判明するかはわからないが、とにかく瘴気を浄化しなくては。


「明日は俺が案内するんで、任せてください」

「ああ、ヨティ。頼む」


 ヨティはこの地に詳しいし、ミルコは魔物の瘴気の正体を感じ取る力に長けている。リックも魔物や魔法に詳しいし、彼らはとても頼りになる。


「だが、シベルちゃんにはまた負担をかけることになるな」

「しょうがないだろう。彼女も聖女としてその覚悟はできていると思うぞ」

「そうだが……」


 魔石に加護を付与するのも、瘴気を浄化するのも。

 すべてシベルちゃん任せになってしまう。


 もし魔物が現れたら全力で彼女を守るが、それですら彼女が片付けてしまったほうが早いのだ。


「彼女が魔力を使いすぎたときは俺の魔力を分けますので、ご安心を」

「ああ……リック、頼む」


 彼らはとても頼もしいが、俺がシベルちゃんのためにできることはあるのだろうか。


「俺にできることはなにもないんだろうな……」

「殿下には聖女シベルちゃんの疲れを癒やしてあげるという、重要な役目があるじゃないっすか!」


 ヨティの陽気な声が温泉の静かな空気に明るく響き渡る。


「彼女も今頃この温泉で疲れを癒やしているだろう?」

「まぁ、そうっすけど。うちの温泉は聖女様並に疲れを癒やせますからね~」

「…………」


 俺を励ましたかったのではなかったのか、ヨティは簡単に同意して軽く笑っている。

 彼の正直で裏表のない性格には救われているが、同時に自分の無力さを感じずにはいられなかった。


「そんなにシベルちゃんを癒やしてあげたいなら、マッサージでもしてあげたらどうっすか?」

「マッサージ?」

「温泉に入ってあたたまった身体にマッサージは効くっすよ~! ぐっすり眠れますし」

「へぇ……そうなのか」

「殿下がマッサージしてあげたら、シベルちゃんも喜びますよ。あ、うちには優秀なマッサージ師がいるんで、後で教えてもらったらいいっすよ」

「……そうだな、そうしよう」


 ヨティの提案に、俺は深く頷いた。

 シベルちゃんのためになにかできることがあるなら、それを試してみる価値はある。


「しかし、シベルちゃんが本当に疲れているのは心のほうかもしれないな……」

「そうっすね。聖女としての責任は重いっすからね。でも殿下がそばにいるだけで、シベルちゃんはきっと安心しますよ」


 ヨティの言葉に、俺は少しだけ微笑んだ。彼の明るさと前向きな姿勢は、いつも周囲を元気づける。


「ありがとう、ヨティ。君の言う通りだ。俺もシベルちゃんの支えになれるよう、頑張るよ」

「その意気っす! 俺たちにできることがあったらなんでも言ってくださいよ」


 な、リック! と続けたヨティに、リックも頼もしく頷いた。

 ミルコも、エルガもいる。大丈夫。俺たちにはこんなに信頼できる仲間がいるのだから、みんなで力を合わせよう。


 温泉の湯気が立ち込める中、俺は深く息を吸い込んだ。シベルちゃんのために、そしてこの国のために、俺もできることを全力でやろうと心に誓った。



みんなでわいわい温泉に入る騎士たち。レオにマッサージされるなんてシベルにとってはただのご褒美だ。


本日、騎士好き聖女のコミカライズ第11話が更新されてます!(^^)

リックがあれでシベルがそれでレオがこれな回です!!(なに)

ぜひぜひコミカライズもお楽しみくださいませ~!!

そして皆様の推しを教えてくださいᕙ( 'ω' )ᕗ

https://pash-up.jp/content/00002552

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― 新着の感想 ―
実際レオのマッサージしたほうが聖女の力出そうだ。
[一言] レオにマッサージされるなんてシベルにとってはただのご褒美だ。 ↓ レオをマッサージするなんてシベルにとってはただのご褒美だ。 という誤字かと、一瞬、思いかけました。アブナイ。
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