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104.大丈夫です、襲ってません!

「……ううん」


 幸せな夢から目を覚ますと、あたたかさに包まれたまま、私はまだ夢の中にいるような感覚に浸っていた。

 夢の中では、レオさんのたくましい胸に寄り添いながら、心地よい温もりに包まれていた。

 ドキドキするけれど、レオさんはいい匂いがして、とても落ち着く。


 大きな手が優しく私の頭を撫でてくれて、額に口づけを落として、耳元で「シベルちゃん、大好きだよ」と囁かれ、その言葉に心が満たされる。


「私も大好きです……レオさん」


 なんだ……私はまだ夢の中にいるのね。

 うふふ、大好きなレオさんにくっついて眠るなんて、本当に幸せな夢だわ。

 ずっとこのままでいたいと思うけれど、現実にはそろそろ起きなければならない時間よね。


「そろそろ起きようか?」


 夢の中のレオさんの声が、現実に引き戻してくる。


「まだ起きたくないです……ずっとこうしていたいです……」


 そう呟きながら更に身を寄せたけど、その手触りがとてもリアルで、まるで本物のレオさんそのもののようだった。


「俺もだけど、そろそろ支度をしないと」


 どうせまた枕を抱きしめながら眠って、それをレオさんと勘違いしているだけなのでしょうけど……随分リアルな感触だわ。

 私の妄想力も、ここまで卓越したのね。


「おはよう、シベルちゃん」

「……おはようございます、レオさん」

「とてもよく眠っていたね」

「はい、レオさんの温もりに包まれて、とても幸せでしたから」

「それはよかった。でもそろそろ起きて、朝食にしようか」

「……――え?」


 やけにリアルなことを言うレオさんに、私はぱちりと目を開けた。

 そうしたら、すぐ目の前にレオさんがいた。

 私が抱きしめていたのは枕ではなく、本物のレオさんだったみたい。


「……!?!?!?」


 驚愕で大きく目を見開いた私の心臓が、一瞬にして激しく脈を打つ。


「そんなに驚かないで? 一緒に寝てほしいと言ったのは君じゃないか」

「私ったら……! そんな贅沢なお願いを!?」

「はは、俺も嬉しかったよ。それに、昨夜のシベルちゃんは本当に可愛かった」

「……!!」


 私の正面でそう囁いたレオさんに、心臓が更に速く脈を刻む。

 そして自分の格好を見下ろし、はっとする。


 ……私、肌着一枚だわ……!!

 あれ? どうやって服を脱いだのだったかしら……?

 まさか、レオさんが見ている前で?


 というか、こんな薄着でレオさんにすり寄って、抱きついて……。

 よく見たらレオさんの胸元もとても乱れている。

 とても色っぽい鎖骨に、胸筋が…………。


「あ、あ……、あの……まさか私、レオさんを襲ってしまったのでしょうか…………」

「ははは、そんなことしてないよ。大丈夫、俺も我慢できたし」

「我慢?」

「それはそうだよ。こんなに可愛い婚約者に一晩中抱きつかれながら「レオさん、大好き」なんて言われて、自分でもよく耐えたと思うよ」

「……まぁ」


 レオさんはいつも通りの爽やかな笑顔でそう言ったけど、私は自分のしたことを一生懸命思い返して、羞恥心でいっぱいになる。


 私は、欲望を全然我慢できていなかったんですね……。


「本当にすみません……!!」

「いや、俺もとても幸せだったよ。それから、忍耐力もついたし」

「……?」


 私も、酔っていてももう少し忍耐力をつけないと駄目ね。

 というか、やっぱりお酒は酔わない程度にしないと……!!

 欲望が爆発してしまう。


「……あっ、今何時でしょうか?」

「もうみんな起きて朝食をとっている頃だろうね」

「大変……! 寝坊してしまいました!!」


 あまりにも幸せで、起きるのが惜しかった。

 でもエルガさんも起こしにきていないということは……もしかして、皆さんは私とレオさんが一緒に寝ていることを知って、気を遣ってくれているのでは……?


「誤解を解いてきます!! 私はレオさんを穢していないと――!」

「大丈夫だから、まずは着替えようか」

「……は、はい」


 肌着一枚で部屋を飛び出そうとしてしまった私に、レオさんは視線を逸らしながら声をかけてくれる。


 そうよね、さすがにこんな姿で皆さんの前に出ていけないわ。


「エルガを呼んでこようか?」

「いいえ、一人で大丈夫です」

「わかった。俺も着替えてくるから、食堂でね」

「はい」


 照れた様子で微笑みながらも、「後でね」と言って部屋を出ていくレオさんの背中をぽーっとしながら見送って、着替えなければとはっとする。


 慌ててしまった私に比べて、レオさんは落ち着いていて優しくて、そして格好よかった。

 やっぱりレオさんは私よりも大人だわ。私も淑女として、しっかりしないと。


 ……でも、寝起きのレオさんは髪(と服)が乱れていて、声も少しだけかすれていて、なんだかやけに色っぽかった。


 酔っていない状態で、あんなに素敵なレオさんと一緒に寝るなんて、むしろ耐えられないかもしれない……。


 結婚したら毎日そうなるのかと思うと、嬉しいような、私には刺激的すぎて無理なような、そんな感情で顔に熱が集まっていく。


「とにかく早く支度をして食堂に行かないと……!」


 私が寝坊したせいで出発が遅れては大変。

 気を抜いたらすぐに先ほどの色気たっぷりのレオさんを思い出してしまうから、ぶんぶんと頭を横に振って、急いで支度を始めた。




「おっはよう、シベルちゃん」

「おはようございます、寝坊してすみません……!」

「そんなに遅くないから、気にしないで」


 食堂に行くとやっぱり皆さんもう集まっていた。

 真っ先に声をかけてくれたヨティさんに言葉を返して、私も席に着く。

 レオさんは先に支度を終えたようで、既に座っている。


「シベル、大丈夫?」

「はい、翌日に残るほど飲めないので、とても元気です」


 私はお酒が弱くてすぐに酔ってしまうけど、少量で酔えるせいか、むしろ二日酔いになったことはない。


「……そういう意味じゃないけど。その言い方だと、やっぱりなにもなかったようね」

「?」


 こっそり話しかけてきたエルガさんに、私は元気に答えたけれど……エルガさんは意味深に呟いた。


 なにも、とはなんのことでしょう?


「あ……っ! 大丈夫です、私はレオさんを襲っていないようなので!」

「……え? 襲ってない?」

「はい!」

「……そう。とにかく、食べて」

「はい」


 エルガさんは小さな声で「シベルが相手だと、殿下も大変でしょうね」と呟いた。


 ……やはり私は、レオさんに迷惑をかけてしまったのでしょうか。



次回からヨティの故郷、ミュッケ伯爵領へ向かいます!ミュッケ領には温泉があるのでどうぞお楽しみに……!!


本日、騎士好き聖女のコミカライズ第9話が更新されました!(^^)

いよいよリックがアレをやらかす展開です……!!

作画最強なので、ぜひぜひコミカライズもお楽しみくださいませ~!!

そして皆様の推しをぜひ教えてくださいᕙ( 'ω' )ᕗ

https://pash-up.jp/content/00002552

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[一言] レオさん… 結婚まであと少し頑張れ
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