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101.筋肉好き仲間ができました!

「――なぁ、シベル。おまえ、レオさんの身体見たことあるか?」

「……!?」


 その日、みんなで朝食を囲んでいたら、ふとアルミン君が私の隣に身を寄せて、こっそりとそんな質問を投げかけてきた。

 彼の声は小さく、周りの賑やかさに紛れてしまうほど微かだったけれど、その言葉は私にはしっかり聞き取れた。


「そ、それは、どういう……」


 どういう意味でしょうか?


 アルミン君の目を見つめながら、私は心の中で動揺を隠すのに必死だった。

 レオさんの身体……つまり、その、は、裸……を見たことがあるかということでしょうか。


 その問いに、私の脳裏には無数のイメージが浮かんでくる。

 それは半分はイエスで、半分はノーです。

 トレーニング中に上半身を晒しているレオさんの姿は、私の記憶の中で鮮明に焼き付いているから――。


「俺さ、昨日レオさんと一緒に風呂に入ったんだけど」

「まぁ」


 そういえばそうだったわね。

 ……本当に羨ましい。


 そんなことを脳内で考えて答えに迷っていた私に、アルミン君が続けた。


「レオさんって、すごく筋肉がついていて、たくましいんだぞ。さすが元王宮騎士団長だよな」


 その言葉に、私の心は暴れそうになった。


 私は無意識に大きく頷き、興奮のあまり顔が真っ赤になってしまうのを感じた。

 もちろん一緒にお風呂に入ったことはないけれど、ありがたいことにあのたくましい身体(筋肉)には何度かお目にかかったことがある。


「わかります!!」


 思わず大きな声で答えてしまった私は、周囲の視線を感じて慌てて咳払いをし、声をひそめてアルミン君に言った。


「わかりますよ。騎士様は本当にたくましく頼もしい身体をされていますが、それは努力の賜です。それに、そこには筋肉だけではない魅力もたくさんあってそれが本当に尊いのです」

「そうそう、だから格好いいんだよ、騎士は!」

「そうなんです!!」


 アルミン君と気持ちを共有できたことで、心の中で小さくガッツポーズをしたい気持ちになった。

 普段は理解されにくい私の筋肉……騎士様好きが、ここでようやく理解されているのだと思うと、幸福感が込み上げてきた。


「……シベルちゃん? アルミン? なにをこそこそ話しているんだ?」


 そのとき、アルミン君とは逆隣に座っているレオさんが、不思議そうな表情で声をかけてきた。


 興奮して大きな声を出してしまった。

 向かい側に座っているミルコさんとエルガさんがなんとも言えない視線をこちらに向けている。


「あ……っ、えっと……その」


 私の心臓はドキドキと音を立て、顔が更に赤くなっていくのを感じる。

 思わず漏れた言葉に、レオさんになんの話をしていたのかばれてしまったかもしれない。


 ああ……、今は食事中だというのに、シベルったら……!!


「シベル、おまえわかってるな!!」

「こら、アルミン! シベルちゃんは聖女様だぞ? そんな口の利き方をするなって何度も言ってるだろう?」


 けれどそんなことはまるで気にしていない様子で、アルミン君は笑った。

 ヨティさんがすぐにアルミン君を叱責したけれど、彼の明るい声に、私の気持ちが少しだけ軽くなる。


「いいんですよ、ヨティさん。アルミン君、騎士様についてもっと語り合いましょう!」

「騎士について語り合う?」

「あ……っ!」


 私の言葉に、レオさんが目を見開き、苦笑いを浮かべた。

 その反応に、私の心は再び高鳴り、顔がどんどん熱くなっていくのを感じた。


 でも、まさかこんな素敵な同志ができるなんて。感激だわ!

 だからアルミン君は私と同じように騎士様の訓練を見て「格好いい」と呟いていたのね。


「おいシベル、俺たち話が合うな」

「そうみたいですね……!」


 心の中で密かに固く握手を交わす。

 この仕事を無事終わらせたら、アルミン君とゆっくり語り合わなければ。


 私の筋肉好きも、騎士様好きも、これまではなかなかわかってくれる人がいなかった。

 そもそも私には友人があまりいないし、貴族のご令嬢はこんなはしたない話をしないから、いたとしても気づけないのだけど。




     *




「団長さんじゃないですか! お久しぶりですね!」

「おいおい、もう団長さんじゃないだろう? この方は第一王子のレオポルト殿下だぞ!」

「そうそう、立太子されたんだ、口の利き方に気をつけろよ」

「そうでした、申し訳ありません」


 朝食後、私とレオさんはトーリの街を訪れた。

 街の人たちが、久しぶりにやってきたレオさんに嬉しそうに声をかけてくれるのを見て、私は心があたたかくなるのを感じた。

 レオさんが人々に愛されていることを実感し、私はますます彼の魅力に引き込まれていく。


「ははは、気にしないでくれ。しかしみんな変わらず元気そうだな」

「ええ、そりゃあもちろん! 以前に比べてトーリは平和になりましたからね」

「これも聖女様のおかげですね!」


 ここは魔物が猛威を振るっている危険な土地だけど、この地に残っている人たちは故郷への思い入れが強い方ばかり。

 そんなトーリの人たちは本当にあたたかくて優しい人が多い。


 レオさんと一緒に歩くと、自然と人々の笑顔が集まってくる。彼はいつもそうだった。

 レオさんの存在は、まるで太陽のようにトーリの人々を照らし、あたためている。


 今回、魔石に直接加護を付与しに来て、トーリの人たちの顔が見られて、よかった。


「殿下、聖女様! ご婚約、本当におめでとうございます!」

「ありがとう」

「ありがとうございます!」


 あの頃はまさかレオさんと婚約できるなんて夢にも思っていなかったけど、レオさんはあの頃から本当に素敵な方だった。


 トーリに来ると、やっぱり当時のことを思い出して幸せな気分になる。


 もちろん今も、最高に幸せだけどね!



「シベルちゃん、他にどこか寄りたいところはないかい?」

「そうですね……」


 市場で以前も食べた串料理をいただいて、レモネードを飲みながらお店を回ったりして、楽しいひとときを過ごした。

 そろそろ騎士団の寮に戻ろうかということになったけど、明日にはミュッケ領に向けて発つ。

 そうすれば、次トーリに来られるのはいつになるかわからない。


「あ……そうだわ、レオさんのペンダントを買ったお店にもう一度行きたいです」

「ああ、あの魔石を売っていた店か。いいよ、行こうか」


 あのお店には、なんだか不思議な魅力があった。

 あのときは魔石の知識がまだ不十分だったけれど、今ならもっと深く理解できる気がする。

 それに、あの店主はきっと私よりも魔石に詳しい。だからトーリの魔石が割れたことを相談してみてもいいかもしれない。



朝から何を考えているのか、この聖女様は……( ◜ω◝ )w


今日は第5火曜日なのでコミカライズの更新は来週です!

今なら7話まで登録不要で無料で読めます!(もうすぐ有料になっていくはずなので今のうちにどうぞ〜!)

https://pash-up.jp/content/00002552

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― 新着の感想 ―
[一言] いやあ性女のHENTAI趣味と見習いの憧れは似て非なるモンじゃねぇかなァ……?(゜д゜)
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