10.深刻な問題なのだ※レオ視点
この一週間、シベルちゃんのことを注意して見ているが、やはり彼女は当初聞いていたような女性ではないように思う。
「ミルコ、どう思う?」
「あれが演技には見えないな」
「やはりそうだよな」
この街の領主との面談のため、朝から出ていた俺とミルコは、寮に帰ってすぐに彼女を見つけた。
中庭で、小さな身体で一生懸命背伸びをしながら洗濯物を干していた彼女だが、周りに人はいなかった。
誰も見ていないのに頑張っている演技をする必要はないし、俺たちが声をかけたときの反応も、自然だった。
……いや、何かおかしな反応をしていたような気もするが、それとは関係ない気がする。
「エルガからの報告も、彼女がとてもよくやってくれているということしか聞かない。傲慢だとか、威張り散らすなんてとんでもない、むしろいつも謙虚でただただ一生懸命らしい」
「となると、報告書の内容が偽りという線のほうが濃厚だろうな」
ミルコの意見に俺も同意して頷く。
俺たちが見ている彼女も、エルガから聞く彼女も、王都から届いた報告書に書かれていたような女性ではなかった。
では、なぜそのようなことが書かれていたのだろうか。
名前は間違えていなかったし、義理の妹がいるのも事実。
彼女の実の父が五年前に亡くなってからは、親戚筋の者を養子として迎え、伯爵位を継がせたらしいのだが……。
義母と彼女は、おそらくうまくいっていなかったのだろう。
彼女は王子の婚約者で聖女候補であったのに、家のことを自分でやらされていたのかもしれない。
だからあんなに家事ができるのだろう。
「……まずいな」
まだ確定ではないが、これはもっと調べてみる必要がありそうだ。
義母がろくな人ではなかったとして。
自分の娘を聖女にしたかった、王子と結婚させたかったのだとして。
もし、虚偽の申告でシベルちゃんを陥れ、しかもマルクスがろくに調べず彼女を追放したのであれば、大問題だ。
そしてもし、彼女が本当の聖女だったとしたら――。
「このことは秘密裏に調べさせる。もしかしたらマルクス王子の今後にも関わることだ」
「そうだな。もしそうなったら……レオにも無関係ではなくなってくるしな」
「……」
冗談のように言われたミルコの言葉は、笑えるようなものではなかった。
俺にとっては深刻な問題なのだ。
これまで彼女は聖女として、将来の王太子妃として、苦労することもあっただろう。
しかし、偽聖女と言われて婚約破棄され、この地へ追い出された。
義母からどんな扱いをされていたのか、今となっては想像がつく。
俺にはその気持ちが、なんとなくわかる。
もちろんすべてを理解することはできないかもしれないが、その気持ちに寄り添うことが、俺にはできるだろう。
しかし、彼女はいつも明るい。
明るくて、一生懸命だ。
本当はこんな辺境の地――それも魔物が猛威を振るう危険な場所に一人で来るのは、怖かったはずだ。
だが彼女は、俺たちの前で暗い顔や疲れた顔を見せたことがない。
一体何が彼女をあんなに奮い立たせているのだろうか――?
あの無垢な笑顔の裏には、一体どんな思いがあるのだろうかと考えると、俺の胸はきつく締めつけられる。
あの小さな身体で、これまでどんな辛いことに耐えてきたのだろう。
誰か一人でも、彼女の味方がいただろうか。
彼女の力になれるような、元気を与えてやれるような存在はあったのだろうか。
――今だってそうだ。知ってる者が誰もいないこの辺境の地で、まだ慣れていないはずの彼女を、俺はこれからも気にかけてやろう。
何か辛いことがあったら、せめて力になりたい。
これまで辛い思いをしてきたのなら、その分報われるべきなのだ――。
「大丈夫! シベルは騎士がいれば幸せだから!!」
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ただ今せっせと続きを執筆中。今夜もう1話上げたい……!





