節分エッセイ 大豆から考える未来の可能性 ~根粒菌~
ごきげんよう!! ひだまりのねこです。
今年も節分がやってきましたが、
節分といえば豆まき、豆まきと言えば大豆!!
今日は身近にありながら意外と知らない……かもしれない大豆のお話。
と思ったんですが、大豆のことを書き始めると長くなるので、
大豆の相棒である『根粒菌』について少しだけ。
ご存知の通り、地球上の生物は、窒素が無くては生きていけません。私たち人間ももちろん例外ではなく。私たちの身体を構成するアミノ酸はもちろん、DNAにも窒素は含まれているからです。
ところが、生命活動に必須のこの窒素、大気中に約8割存在するにも関わらず、ものすごーく安定しているものでして、水にもほとんど溶けませんし、そのままでは利用出来ないのです。空気をいくら吸い込んでもお腹いっぱいにはならないですよね?
人間は食べ物に含まれる窒素化合物からしか吸収出来ませんし、植物もやはり同様で、土壌にわずかに含まれる窒素化合物から吸収しているのです。こんなにたくさんあるのにね……。
そして残念なことに、生物が利用できる自然界の窒素化合物には限りがあります。動物の排泄物や死骸、枯葉が微生物によって分解されることで土壌に蓄積される生態系のサイクルの範囲から抜け出ることは出来ません。
雷の莫大なエネルギーによって、例外的に窒素の化合物が出来ることがありますが、絶対的に量が足りない。
言い方を変えれば、利用できる窒素化合物の量が増えれば、その分生物が増える余地が生まれるともいえるわけです。
人類にとって画期的だったのは、化学肥料の開発に成功したこと。
科学の進歩と共に、1000気圧という超高圧、500℃という高温のもとで窒素と水素の化学反応で工業的にアンモニアという窒素化合物を生成することが出来るようになったのです。
これがどういう意味を持つかと言うと、アンモニアであれば、植物は根から吸収して養分とすることが出来るのです。
つまり、この化学肥料によって、慢性的に不足しがちだった土壌内の栄養分が増え、飛躍的に農作物の収穫量が増えたということ。豊かな食生活と現在の世界人口を支えているのは、間違いなくこの功績によるものです。
一見万々歳に思えますが、化学肥料の生成には、だいぶハードルが下がったとはいえ、まだまだ莫大なエネルギーを必要とし、困ったことに同時に大量の二酸化炭素や一酸化炭素といった温室効果ガスを発生させてしまいます。
ところが、自然界には、人類が超高圧、超高温下でないと生成できないアンモニアを、常圧、常温でやってのけるすごい微生物が存在することをご存知でしたか?
その一つが、今回の主役『根粒菌』さん。バクテリアの一種です。
大豆を始めとしたマメ科の植物の多くは、彼らと共生することで、安定的に成長に不可欠な窒素化合物を得ることが出来るのです。
大豆の根っこには、数ミリの根粒という粒状の瘤がたくさん付いているんですが、これが『根粒菌』の住んでいるお家というか工場となります。
『根粒菌』さんは、大豆から衣食住を提供してもらう見返りに、アンモニア生成をするというお互いにWINWINの関係を築いているというわけですね。
ところで、この『根粒菌』さんの力を利用すれば、莫大なエネルギー消費や大量の二酸化炭素や一酸化炭素といった温室効果ガスを発生させることなく窒素化合物を生成することが可能になります。
すでに『根粒菌』さんのゲノム解析は終わっているので、今後、研究が進めば、近い将来世界の救世主になるかもしれません。
ちなみに、牛肉を大豆に置き換えた場合、発生する温室効果ガスは千分の一に抑えられるという研究報告もあります。
現在、日本では、二酸化炭素を食べて増殖し、動物性たんぱく質を生みだす水素細菌の一種から肉を生みだす夢のような研究が進んでいます。
人類が創り出すことが出来ない物の一つに『土』がありますが、一グラムの土の中には、数十~数百億の微生物が暮らしています。
その中には、まだ知らぬ可能性を持つものもいるでしょう。
もしかしたら、今後の人類と地球環境の命運は、目に見えぬ微生物たちが握っているのかもしれませんね。