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エッセイ

作者の責任について ~嫌なら読むな論に寄せて~

作者: 蜜柑プラム


 "嫌なら読むな"又は"感想欄の使い方"をテーマにしたエッセイをいくつか拝見しました。現在のなろうの状況がよく分かり、とても興味深い内容だと思いました。エッセイの感想欄でも活発に意見交換がなされておりまして、いろんな観点から考えることが出来て大変勉強になりました。


 ただ、それらのエッセイの中で、語られていないテーマがあると思ったのです。


 それは、「作者の責任」です。


 作者の権利、作者の自由、読者の自己責任、読者の自由などのワードはよく出てくるのですが、作者の責任については取り上げられる機会が少ないのではないでしょうか。



 ここでは、作者の責任について考えてみようと思います。



 作者は気軽に投稿できて、読者は気軽に作者とコミュニケーションできる。これはなろうの良い所です。

 作者も読者もわいわい楽しくできる空間。それが理想であると、私も心底そう思います。


 実際に私自身、気軽な気持ちで投稿を始めました。

 しかし、私はある時気づいてしまいました。


 投稿して他人に読ませるという行為は、読むに人に対して、


 “影響を与える行為である”と。


 作者本人は読者を楽しませようと書いている事であっても、悲しませたり、傷つけたりします。

 期待を裏切ったり、時間を浪費させたりもします。

 さらには個人の思想を押し付けたりします。そして、何かの行動を促すことだってあります。


 それらは作者にとって十分恐ろしいことです。


 例えば、

 勇者が魔王を倒すお話の場合。

 このお話は、悪いやつは懲らしめるべきという一つの思想を表現しています。その思想が読者の思想に反していれば、傷つき、期待を裏切るのです。または、読者の思想を変えてしまうこともある。それが行動に及ぶことだってある。

 読んだ人が現実世界で悪い人を暴力によって懲らしめるという行動をするかもしれません。

 おそらく、作者はそこまでの意図を持って発表していないはずです。

 しかし、これは作者が作品を通じて読者に与えた影響に他ならない。


 別の極端な例を挙げます。

 国民的な人気アイドルが突然結婚を発表したとします。ファンだった人の中には、ひどく落ち込んだあげく、学校や会社を休んでしまう、そういった人が少なくない人数あらわれるでしょう。さらには、最悪のケースにまでなってしまうファンの人だって出てくるでしょう。

 それはそのアイドルのこれまでの芸能活動と結婚発表がファンに与えた影響です。その影響について、当のアイドル本人は無自覚でいられるでしょうか。

 私は、無自覚でいられるわけが無い、と想像します。

 しかし、どうやったって責任などとれる訳が無いのです。とるべきでもありません。何かを追求されるべきでもない。



 話をなろう小説に戻します。

 作者が作品に対する責任をとるなど、よほどでない限りは、不可能です。


 投稿を削除する?

 それができるなら作者などやっていない。


 内容を改変する?

 これも難しい。創作というのはそれが難しいほどに、繊細な精神活動なのです。

 一方で、読者の意見を取り入れたいという作者は沢山いらっしゃるでしょう。そういった場合でも、作者として可能な改変の範囲は限られるはずです。


 作品には作者の思想や価値観は必ず出ます。むしろ思想や価値観を書いてると言う方が的確でしょう。だから偏った作品しか書けない。誰も傷つけない作品など書けないのです。



 人間の精神というのは弱いものなので、責任があると感じると、その責任から逃れようとします。もしくは責任など無いという考えに走りがちです。そんなの、わしゃ知らねえと言いたくなる。弱さを否定しようとは思わない。

 しかし、現実として、発表した作品というのは読者に対する影響が有るのです。

 厳然と有るのです。

 また、なろうに投稿することは、不特定多数に対して作品を読ませようという行為です。しかも多くの場合、作者はできるだけ沢山の人に読んでもらうために積極的に工夫しています。

 つまり、作者が意思を持って読ませているのです。


 作者はその責任を自覚せざるをえないのです。目を背けたとしても、目を背けているだけです。責任があるという認識からは逃げられないはずです。

 何万人、何十万人という読者を持つ人気作者ならば、なおさらその葛藤を抱えているはずです。創作とのジレンマに苦悩するはずです。


 私がここで問題にしている責任というのは、

 無料だから、作者の自由は認めらているから、そういった事とは別の話です。

 経済上の責任、法律上の責任、サイトの規約上の責任。これらとは別の、

 道徳的な観点からの責任のことです。

 胸の内で向き合わざるをえない責任のことです。それは、ないがしろにすれば他人の心が離れていってしまうものでもあります。



 抽象的な言い方をしますが。

 書いて読ませると言う行為、つまり作品を発表するという行為は、その時点で罪を背負っているのだと思います。作者というのは産まれながらに罪を抱えている。その罪に対して、何かしらの報いをいずれ受けるのだと思っています。内側からくるにしろ外側からくるにしろ、何かしらの報いです。

 それでも作者というのは書かにゃならん生き物なのでしょう。


 であるからこそ、読者には作者に対する“許し”が必要になります。“許し”が無ければ、読者と作者の関係は成り立たないと考えるのです。



まとめます。

・作者は意図的に読者に読ませています。

・作者は自身が意図せずとも作品を通じて読者に影響を与えています。

・そこに道徳的な責任が発生します。

 そして作者はその責任を自覚せざるをえない。

・自覚はできるが、責任に対して何かできるものではない。

 つまり作者は責任を取れない。

・ゆえに、読者の許しに期待するのです。



※誹謗中傷、迷惑行為を容認するものではありません。

※作者のブロック、感想削除を否認するものではありません。

※全ての投稿作品に価値がある事は、このなろう空間では自明だとしています。



 話が重くなっちゃったんですけども。こういうのを踏まえた上で。


 気軽に投稿して、気軽に感想を言い合って欲しい。

 この記事が活発なコミュニケーションに貢献することを願っています。


以上。読んでくれてありがとう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  「現前」が文脈的に「厳然」の方が適切な気がします。 [一言]  ブックマークの某作品を読んでからこちらに来たのですが、あちらを読んだ時に「責任」において、もう少し平たいことを考えまし…
[良い点] すごい緻密なロジックですね。 こう列記されると、 うなずけます。 難しいことをていねいに整理されて、 意見とされる。 [気になる点] 私はそこまで意識して、 創作をしていませんでした…… …
[良い点]  本来あたりまえである所を、深く掘り下げて説明しようとしている所がよかったです。  ここら辺は昔なら出版社の編集者あたりが、新人作家の補助としてやっていた事だと思います。  「この作品を…
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