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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第一章 始まりの国
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第5話 説明と絡み。








 冒険者試験に合格し、受付場に戻る。


 席に着き待っていた頃、見物人の人々も戻ってきた。・・・最初は、何か聞いてくるのかと思い身構えていたが、近づく人はおらず、遠目でこちらを見る視線を複数感じるだけだった。


 (・・・何だろう?相手のことを聞くのがタブーなのかな?)


 そんなことを考えていると、受付嬢が近づいてきた。


「シンスケさんですね?」


 その問いに、私はうなずく。受付嬢は。


「試験合格おめでとうございます。これから冒険者としての説明を行います。まず、冒険者としての仕事は、主に魔物の素材集めと薬草の採取です。」

「・・・中には、依頼人の方がやってきて、商品の護衛や魔物の討伐など多岐にわたります。依頼の種類は、ボードに掲載されていますので自分に合ったランクの依頼を受けてください。・・・ランクの階級は仕事を受けて、達成した数が一定値に達したときに簡単な質疑応答をしランクが上がります。」

「・・・あと、希にですがフリー討伐というものがあります。このフリー討伐は、他の依頼とは違い、受付で依頼を引き受ける必要も無く、いつでも、だれでも、魔物を討伐してもいいと言うことです。・・・・これは、かなり強い魔物限定であり、そのほとんどは、国からのお達しということになります。その分の金額も相当のものになります。・・・・他に質問はありますか?」


 私は、地球の会社で散々な目にあったあることを聞いてみた。


「・・・ここでは、他の冒険者が悪口言ってきたり、ケンカを売られてきた場合は、自己判断でいいのですか?」


 この問いに、受付嬢は。


「そういうことはよくありますが、基本的には、その者たちで解決するのです。ケンカを仕掛けられた場合は、武器を使わずに素手で行うのが原則です。もし武器を使ったら、罰として、多額の賠償金を支払うことになります。・・・他に質問は?」


 次の質問をしてみた。


「・・・さっきから、視線を感じるのですが?どうして誰も近づいてこないのですか?」


 その問いに、少し微笑んだ受付嬢は。


「それは、パーティーへの勧誘だと勘違いされると思ったからです。ギルドでは、パーティー介入の時は募集の紙を見てそのパーティーの元に行き、面接を行う。・・・入れるかは入れないかはその人次第です。」

「・・・ただし、募集以外で勧誘をするのは禁止になっています。それは、パーティ内の不信とトラブルの防止のためです。パーティーは、信頼できる人が集まった仲間であり、裏切ってはいけないのです。・・・もし、仲間の相談もなく誰かを勧誘するような行為は自分たちが信頼されていないと思い込み、内部崩壊につながるからです。」

「・・・・その昔、個人勧誘しようとした冒険者が他の仲間に相談もなく話を勧めた為、討伐最中に裏切りが連続で起き、全滅したという記録があります。・・・これを受けたギルドは、パーティーへの勧誘は募集のみとすることが、原則となりました。」

「・・・ですから、他の冒険者の方々は、あなたに近づかないのです。何か聞きたいことがある雰囲気ですが。・・・仲間と相談していないから聞こうにも聞けないといった感じです。他に質問は?」


 私は、最後の質問をした。


「変な質問ですが。・・・・冒険者を副業みたいな感じでおこなってもよろしいのですか?」


 この質問に、困ったような顔をした受付嬢は、


「・・・えーと、それは初めて聞く質問ですが、問題は無いと思います。どんな理由であれ、冒険者としての仕事をやってくれれば他にどんな仕事をしても咎められることはありません。・・・他に質問は?」


 私は、もう聞くことが無くなった。


「ありません。ご説明ありがとうございました。」

 

 この言葉に、にっこり笑顔の受付嬢は。


「それでは、説明を終わります。お疲れ様でした。あと、これがDランクの証となります。」


 そう言って渡されたのは、缶バッジの形をした「D」と書かれた鋼鉄のネックレスであった。


 ・・・これが、証か、思っていたよりも簡素であった。私は、それをかけ、依頼があるのかボードを見に行こうと近づいていったとき。


「よぅ、おまえか、妙な技を使う新人は?」


 と言ってきたのは、いかにもチンピラですと言う雰囲気をまとった。


 ・・・Dランク証をつけた三人組であった。


 ・・・・武器はそれぞれ剣と槍と弓を各自一つずつ持っていた。服装は特に目立つ物は無く軽装といった感じであった。


 三人組の質問に私は。


「・・・妙な技というと先ほどの剣技ですかな?あれは、実戦で磨いた我流のようなもの珍しくもありません。」


 一応、私より経験者のようだから丁寧口調で言ってみた。


 それに対して一人の男は。


「はぁ? なんだその目と態度は?・・・ここの先輩に対してずいぶんな言い方だな。」


 もう一人の男は。


「いきなり、Dランクになったからって、調子ぶっこいていると痛い目見るぜ?」


 とケンカ腰で言ってきたり、もう一人の男もうなずいた。


 これは、物の言い方が違うが、会社に入って来たばかりの頃に先輩方が新人に対し遠回しな嫌がらせというかいじめというか、それに近い言い方をしてきた。


 ・・・・地球の会社ならこの場合、例えどんな言い方されようとも暴力や理不尽な命令以外では上司の言うことには絶対に従うものであったが。


 ・・・・だが、ここは異世界、それも先ほど説明されたとおり冒険者同士のケンカは当人同士による自己解決に近い形で終わらせるものだ。


 このケンカ腰に私は。


「・・・私が誰に、どのような態度をとるのかは私が決めることであって、あなた方が決めることではありません。・・・それに、あなた方も先輩なら、先輩らしく振る舞ったらどうですか?・・・それではまるで子供の言葉遣いではありませんか?」


 少し、嫌みをいれた返答に対し、男もといチンピラは。


「テメェ、・・・今の言葉、ケンカ売ったと取っていいんだな?」


 イラついた声で話したチンピラに対し、呆れ口調の私は。


「・・・でしたら、もう少しマシな言葉で語ってほしかったです。そんな口調ではケンカを売っていると勘違いしてしまいますよ?」


 この言葉にチンピラは切れて、私に向けて拳を向け。


「テメェェェェ!」


 拳はストレートに私の顔面に向かってきたが、それを余裕でかわした。


 まるでスロービデオを見ているかのように遅さだった。


 チンピラの放った拳の方の腕を両手でつかみ、力任せな一本背負投をした。チンピラの体重はまるで羽のように軽く、簡単に投げ倒せた。

 倒れたチンピラは、ピクピクとけいれんを起こし動かなくなった。・・・一応息はある。


 それを見た他の二人は。


「このやろうぅぅ!」

「泣かせたるわぁぁぁ!」


 三下の台詞を言いながら、同時に殴りかかってきた。


 私はその二つの拳を頭を下げて避け、カウンターの如く両腕の拳で二人の腹に深々とめり込んだ。二人は腹を抱えてうずくまった。


 勝負は、あっという間に終わった。


 なんだこの弱さは?と思った。・・・同じDランク、おそらく中か上のはずのやつらがこの程度で終わるなんて。


 周りの視線は、感心したような視線で見て、声は。


「・・・やるな、あの新人。」

「・・・本当に何者だ?」


 とか、意外な声が聞こえた。


 その時。


「何をしているのだ?・・・おまえら?」


声をした方向に向けると、身長百九十㎝、六十歳以上の筋肉質のおじいさんであった。


 周りの声で。


「・・・ギルド長。」


 その言葉を聞いたとき身構えた。


 ギルド長、ここのトップということか。・・・・まずいなぁ、いかにケンカがそいつらだけで解決しろとは言え、ここの長が出てきたら話は変わる。

 どちらの言い分を聞くのか、そんなの向こうの世界で嫌と言うほど味わっている。


 長いこと働いている者の声しか聞かない。・・・それが普通のことだ。そんなことを考えていると投げたチンピラが息を吹き返し、抗議した。


「・・・この新人が、ケンカ売ってきたので買ってやったら返り討ちに遭いました。・・・こいつに相応しい処罰をどうか。」


 早速、チンピラが嘘を言ってきた。


 ここで反論しても聞いてくれないだろうと思い、私は呆れ顔で見ていた。


 その言葉にギルド長は。


「ふん、新人にしてはできるやつが来たと報告を受けて顔を見に来たのだ。・・・そしたらお前らがそいつに絡んでいるところ見ての、そのまま静観していたわ。」


 その言葉にチンピラは青ざめた。


 ギルド長は、話を進めた。


「それに、冒険者同士のケンカにギルドが一々介入したりせんのは知っているだろう?まぁ、殺し合いなら話は別だが、そういうわけでもないだろう。・・・よって、このケンカはお前らの負け、これ以上恥をさらしたくなければとっとと帰れ。・・・あほう共が。」


 それを聞いたチンピラ三人組は、痛い部分を手で押さえながら小走りで逃げて言った。


 周りが静かになった後、ギルド長が。


「・・・さて、お前が新人のシンスケか?少し、話があるのだがいいか?」


 その言葉に緊張した。


 だが、察したのかギルド長は。


「安心せい。別に咎めることはない。・・・さっきも言ったが、ケンカは自己責任だ。それとは別にお前と話がしたいだけだ。・・・他の連中にも似たようなことをしている。」


 その言葉に胸が軽くなった。


 ここはやはり異世界。・・・・社会だの年上だの上司だのその地位を利用して理不尽なことをしてきた連中とは違うのだと改めて思った。

 

 私は、その問いに。


「わかりました。」


 返事は一言、それ以上は言わない。


 その言葉にギルド長は。


「よし、それじゃ、奥に階段があるから二階の応接間で話そうか。」


 今思ったが、ここ二階建てだったのか。


 まぁ、それはいい。・・・私は、ギルド長の後をついて行き、二階の部屋に向かった。





 部屋に入り、ギルド長が席に座り、私も向かい合うように座った。


 ギルド長は。


「さてと、回りくどい言い方は嫌いだから、率直に言うぞ。・・・お前、ドルネットの弟子だな?」


 その言葉に私は。


「師匠を知っているのですか?」


 やや驚き口調でギルド長に訪ねた。すると。


「ああ、知っている。わしとあいつは親友でな。弟子がきたらよろしく頼むと言ってきた。」


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