第4話 冒険者ギルド。
私は町に向けて歩き出した。・・・師匠の許可をもらいそして贈り物の装備を身につけ歩き出した。
今の私の服装は、上着は動きやすい作業服で両胸にポケットがある灰色のしたもの、ズボンは、 サルエルパンツ 無地 ワイドパンツ 夏用で動きやすくベルトの代わりにひもで固定、色は同じ灰色で上下ともにシンプルな作りである。・・・この服装は、師匠も問題ないだろうというお墨付きである。
両腕と両足には、それぞれ師匠からもらった籠手と具足を装着、腰には刀と剣を帯刀、ゴテゴテとした装備では無く、どちらかというと金のないやつの装備だが。・・・そんなこと私にとってはどうでもいい。・・・この装備こそ私の誇りであるからだ。
そして、左手の人差し指と中指には指輪が一つずつ嵌めており、それぞれ、ルーン文字で、火と雷の文字が書かれている。・・・火は太陽を意味する文字を書いたが、雷に直接関わる文字が無く調べた結果、アース神族のルーン文字があり、中でも雷神トールのことを知った。・・・そのルーン文字を書きトールの名前を書くという無理矢理な方法で試した結果。・・・成功した。
以上の装備を身につけ、私は、地方都市アルムに向かった。
森を抜けたとき、目の前に広がったのは、大きな壁に覆われた町が見えた。
「あれが都市アルムか。・・・異世界に来て二年、師匠以外の人々に会う初めての場所か。」
私の胸には、いろいろな思いでいっぱいだった。
どんな人たちがいるのか、どんな店があるのか。・・・冒険者ギルドはどれほどの組合なのか、領主はどんな貴族が納めているのか。
領主については、不安要素がいっぱいあるが、普通に生活すれば会うことはまず無い人物なのでこれはひとまず頭の片隅に置いておく。
問題は、冒険者ギルドだ。
ギルドの冒険者登録については、登録申請を行った後。・・・試験会場で捕らえた魔物と一対一で戦い勝利すること、全部で五回あり合格するには、二回勝たなければならない。・・・また、勝つ回数に応じてランクが決まり、最高で、Dランクから始まるとのこと。
ただし、それだけ魔物は強くなるので自分に合った実力にするのが基本だと師匠から教わった。
・・・この教えを胸に、私は冒険者ギルドに向かうことにした。
都市に入る門の前には衛兵が二人いた。
師匠からは、入るときに金は支払う必要は無く目的と定住するのかを質問してくるので、素直に答える。・・・定住する気が無く、町の外で生活する場合には何の問題も無いが、自分の身は自分で守るのが基本であり。・・・町の中は衛兵が守るため大抵の人々は中で暮らす。
ただし、その場合は月に一度、住民税を支払なければならない。
・・・住む場所は、地球の実家があるので定住する気は全くなかった。
衛兵の質問に答え、町の中に入っていった。
・・・私の目の前に広がる町の中は、一言で言えば活気があった。
歩く人々の顔は、明るく、生き生きとしており、露天に広がる店には客が賑わっていて、貧しいという雰囲気は無かった。。。。さらに町の中を進むと目に入った店が一つあった、・・武具屋である。
地球には無い本物の武器や防具を売っている店であったが、・・今はお金がほとんど無いので店に入ることは無かった。・・・下手に入って何も買わずに出ると悪印象を持たれる可能性があるので、ここにはお金に余裕ができたときに入ろうと決めた。
しばらく進むと、学校の体育館並に広く大きい建物が二つ並んでいるのを見つけた。
・・・右側の建物に看板がついており、『冒険者ギルド』と掲げていた。
「ここが、冒険者ギルドか、でかいなぁ。・・・これは冒険者としての収入にも期待ができる。狩人としての本業にも全力で取り組めるってもんだ。」
あくまでも私の本業は狩人であり、冒険者は副業である。
冒険者としての仕事は、採取や調査といったものであり、魔物を狩るのは狩人としての仕事として依頼は受けず素材のみを売ることにしようと決めた。
この考えはあまりにも効率が悪すぎる。・・・冒険者として魔物討伐の依頼を受け、それを狩人の仕事として思えばいいのに。
・・・だが、私は狩人だ。
それを冒険者の仕事として同時に考えて行うなど、私にはできなかった。
頭が固くてもいいそれが私の悔いの無い人生だから。
冒険者ギルドの扉は常に開いており、普通に入ることができた。・・・中は広い食堂のように机と椅子が横並びで並んでいたのようになっており、受付はその奥でまるで社員食堂の料理を受け取るような場所に配置していた。
中には人がまばらに座っており、入ってきた者に対して見ることなく各々の時間を過ごしていた
これは、わたしにとっては好都合。・・・あまり目立ちたくないのでそのままの足で受付に行く。特にこれといった嫌がらせも無くスムーズに受付に到着した。
「・・・冒険者ギルドにようこそ、ご依頼ですか?それとも、登録希望者ですか?」
受付嬢がにこやかに聞いてきた。歳は大体二十~三十といった所だろう。
この質問に私は。
「登録希望者です。」
率直に答えた。
すると、受付嬢は。
「ではこちらに登録申請書がありますので書いてください。文字は書けますか?」
文字については、言語習得で理解しており、師匠に書いたところを見せた所、`問題は無い`と合格みたいな言葉をもらっていた。
「はい、書けます。ここに名前と得意な武器を書くのですね?。」
受付嬢は。
「はい、そうです。では早速書いてください。書き終えましたら、左側の扉に入ってください。」
左側は、距離約十メートルに大きな扉があった。
・・・その上の看板には、『修練所』と書かれていた。
「わかりました。」
私は名前をシンスケ。
武器は剣、と記載し、扉の中に入っていった。
扉の先は、ドーム状の場所であり広さは大体サッカー場並みであった。・・・奥には鋼鉄の扉があり、その前の中心には円が描かれており直径およそ三十メートルこの中で戦うのかと理解できるほどの舞台であった。
しばらく待つと、後ろから一人の男が現れた。・・・歳は大体四十~五十の年配であるが、その者から放つ気力は、中々のものであった。
試験官風な感じの男は。
「お前がシンスケという希望者か、剣が得意と書いてあるが。・・・魔物と戦ったことはあるか?」
その質問に私は。
「オオカミとスライム、あとファルコンを相手に戦いました。」
この答えに、試験官の男は。
「それなりには、訓練しているようだな。・・よかろう、これより試験を開始する。ルールは簡単、奥の扉から出てくる魔物を倒すこと。・・全部で五回、連続で戦い、二回勝てば合格。・・ただし、この円から出たら失格である。」
「・・二回以上戦いたい場合は`次を出してください。`と叫べばよい。二回勝てばEランク、五回連続で勝てばDランクからの登録とする。・・また、試験前にはこれに自身の血を入れること。」
それは、手のひらサイズの土人形であり、中心にくぼみがあった。
・・・試験官である男は。
「これは、身代わり人形といって、死ぬ攻撃を受けた場合に発動し、人形と自身のいた場所と交代し、その時に受けた傷は、人形が肩代わりする。」
「・・ただし、肩代わりするのは、死ぬ攻撃であり、かすり傷や死ぬような攻撃ではない傷を肩代わりすることは無い。・・極端に言えば、腕を切り落とされたとしても人形は発動しないし、だが、死ぬ攻撃を受け、入れ替わった時は切り落とさされた腕は元に戻っているから安心したまえ。・・・他に質問はあるか?」
その問いに私は。
「・・・・武器が全部破損した場合は、戦いを継続することができるのですか?」
試験官の男は、少しため息をついて答えた。
「・・その場合は、例え素手に自信があったとしても、戦闘続行不可能とみなしその場で終了とする。又、その時点で二回勝っていて三回目で武器が破損したとしても合格扱いになる。・・他に質問は?」
私は。
「ありません。」
とはっきり答えた。
試験官の男は。
「・・・それでは、人形に血を入れて円の中に入れ。その瞬間から試験を開始する。」
私は、人形に一滴の血を入れその場に置き、剣を抜き、円の中に入っていった。
周りを見たら、いつの間にか何人かの見物人がいた。
暇つぶしに見に来たという感じがあった。
試験官の男は。
「では、早速始める。まず一匹目、オオカミから始める。」
その言葉と同時に扉が開き、オオカミが一匹出てきた。
体長は普段よく目にしているサイズであり、脅威では無かった。・・・オオカミは、私に向けて突進してきた。
だが、それを余裕で躱した。
師匠の教えでよく言われていることがある。・・それは、危機管理能力である。・・獲物の動きを目で追っていたら間に合わないことが多く、実戦には不向きである。
その為、大事なのは恐怖を感じること。
恐怖は、その者の危ないといった感覚であり、命のやりとりでは重要なものであると師匠がよく言っていた。
私は、オオカミの攻撃を躱し、横を通り過ぎるまでに剣を下段斬りにして首をはねた。
・・・周りの人々の中には、口笛をふくような音が聞こえた。
感心したのかもしれない。
「次、二匹目、スライム。」
扉から、スライムが一匹、大きさはサッカーボール五個分、山積みのサイズと言ったところだ。
スライムがジャンプしながら近づき、次の瞬間、ジャンプ力が強くなり突進してきた。それを左に避けた。
だが、交差したときに斬りつけなかった。
・・・スライムは、突進するとき一時的に堅くなるからだ。
スライムが、着地したと同時に剣を片手突きの構えをして駆け出した。・・・スライムの体制が整う前に一気に仕留めるように動いた。剣はスライムに刺さり、そのままの勢いで横になぎ払った。
スライムは、切り裂かれた部分から水が出てしぼみ動けなくなった。
・・・この技は、あるアニメにある片手一本突きからの横なぎであった。
周囲の反応は、`なんだあれは?`とか、`あんな技、あったか?`とか、珍しいものでも見たかのような反応であった。
・・・試験官の男は。
「これで、試験は合格だが、まだ続けるか?」
この問いに私は。
「次、お願いします。」
今の自分がどこまで戦えるのか、知りたかった故の答えであった。
周りの人々は、`若いやつはいいね、命知らずで。`と少しバカにしたような声がしたが。・・・どうでもよかった。
試験官の男は。
「それでは、三匹目、アナコンダ。」
扉から出てきたのは、全長およそ五メートルもある蛇だった。
・・・アナコンダ、その名は地球にもいる。でかいやつは人間も襲うという獰猛な蛇だ。
だが、不思議と怖さを感じなかった。
それどころか、この蛇相手にこの戦法なら勝てるのでは無いか。と考える自分がいた。
蛇は蛇行しながら近づき、口を開けて襲いかかった。・・・私はそれを避けること無く、左手に持ち替えた剣を突き出し、蛇の口の中に入れた。
刺された蛇の尻尾が悶え始めると同時に左側の腰に帯刀していた刀を右手で抜刀し、横一文字に斬り蛇の首を斬った。・・・蛇はそのまま絶命した。
周囲の声は、`おおっ`と言う声がした。
・・・どうやら苦戦すると思っていたのだろう、私が、あっさり勝ったことに驚いていたようだ。
試験官の男は。
「やるな、だが次はどうかな? 四匹目、ヘヴィータートル。」
扉から出てきたのは、大きさがゾウガメほどある亀だった。
・・・・動きがノロそうだが一度甲羅に入ると攻撃が全く通用しないだろう。
亀が動き出した。・・・・その足は予想通りノロかった。
私は、警戒しながら近づいた。
すると、亀の首が二メールまで一気に伸びた。
慌てて左に避けた、体勢は崩さず中腰の状態で止まった。
・・・・亀の首はそのまま引っ込んだ。
首が伸びることには驚いたが、脅威では無い。・・・私は片手突きの体制で亀に一気に近づいた、亀は驚きすぐに甲羅に引っ込んだ。
狙い通りだった。
亀の甲羅を攻撃しても意味が無い。・・・かといって手足と顔に攻撃してもすぐに引っ込んで閉じこもる。・・・だから、狙うのは首を引っ込んだ穴。
そこに片手平突きの剣を正確に入れ込んだ。入った穴は深々と刺さり、亀の手足がジタバタし始めたが、しばらくしてそのまま動かなくなった。
周囲の声が大きくなった。・・・`あんなやり方があるとは。`とか、`よく入ったものだ。`とか、そんな声がした。
試験官の男は。
「中々の実力だ。次が最後だ。五匹目、ゴブリン」
扉から出てきたのは、身長およそ百㎝前後、左手に盾、右手に棍棒を持ったゲームやアニメに出てくるゴブリンの姿そのものだった。
「これが、ゴブリンか。」
私は、無意識につぶやいた。
そうだ、これこそファンタジー世界の魔物だ。・・・こんな魔物と戦える日が来るとは、人生は本当に何がおこるかわからないものだと思った。
そんな考えも、ゴブリンの叫び声を聞いてすぐに消えた。
そうだ、これは現実だ。・・・負ければ死ぬ。・・・そんな世界に身を投じたことを忘れそうになりかけた自分に腹が立つ。
気合いを入れてゴブリンと対峙、ゴブリンが走り出し、棍棒を振った。
速度はそんなに速くなく、難なく右に躱し、剣を上段から斬りつけた。・・ゴブリンは、それを前転して躱した。
動きが器用だと思った。・・・これがゴブリンの運動神経、なるほど最後の試験にはうってつけの魔物と言うことかと考えながら、その背後に向けて走りながら剣を突き出した。
・・・ゴブリンは、振り向かずに横に転んで回避、すぐに体制を立て直し、私に向かって突進した。
私は、すぐに剣を横薙ぎにし牽制した。・・・ゴブリンは驚き、突進をやめ、後方に下がった。この攻防は中々に刺激的であった。
これぞ戦いだと実感し、心の中では喜んだ。
だが、私は狩人だ。戦いに喜びを持ってはいけない。
獲物を狩ること、それが私の仕事だ。
私は精神を落ち着かせ、剣を自然体に構えた。
・・・ゴブリンは警戒しているのか襲ってこない。・・・にらみ合いが始まった。だが、いつまでも続けるわけにはいかない。・・・そう思い私は、かつて魔物と退治したときに発したあの言葉ともに剣を刀に変え、上段構えで走った。
「チェェェェェェェストォォォォォ!!!!』
叫びながら走った。
ゴブリンは驚き、その場に立ち尽くした。
目の前に行き、刀を振り下ろしたが。・・・その寸前で木の盾を使い防御しようとした。だが、勢いがつき、更には力を込めた一撃は木の盾を一刀両断そのままゴブリンの左手前腕部分を斬り落とした。・・ゴブリンは左手を押さえながら悶えたが。・・・・その隙をつき刀を横一文字に払い、ゴブリンの首を斬り落とした。
決着はついた。
周囲から大きな歓声がした。`なんだあいつは、何かの経験者か?`とか、`あの一撃ただ者では無い。`とか。・・・ずいぶんと過大評価過ぎる声がしたが、まぁいいかと思った。
試験官の男は。
「五回連続の勝利、おめでとう。・・これで君は冒険者Dランクからのスタートだ。」
その言葉を聞きほっとした。
試験官の男は話を続けた。
「・・・では先ほどの受付まで来てくれ。そこで冒険者としての説明とDランクの称号の証を贈る。」
その言葉を言って、試験官の男は去って行った。
私は、試験が合格したとを確信し、周りの目をうけながら、早々に受付場に戻った。
腕が戻らないのを、戻すに変えました。
これは、書き間違えました。申し訳ない。