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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
199/268

幕間 王国の賭け。







 夜。


 王国。詰め所。


 昼間の戦いは苦戦しながらも被害を最小限に抑えることができた。


 ・・一番の成果は壁の修復もたったいま終ったのだ。これで左右のことを気にせずに正門だけに集中できる。

 明日からはバードス達にこっちで戦って貰うよう指示を出している。


 ・・・だが、周りの空気は重かった。


 何故なら、魔物たちとの戦闘が始まってしばらく経った頃。




 独断専行した騎士隊長が率いた騎士が重傷を負いながら帰還し。


「・・・はっ、はっ。・・・た、隊長が・・・戦死しました。・・・お、オークキングが三体と、み、見たことの無い巨大な、トカゲが、・・・」


 そう言って気絶した。


 ・・・すぐに医務室に運ばせ、徹底した治療を施した。何しろ、魔物たちの拠点に行き、帰ってきたのは彼だけ。・・・情報はなるべく多く手に入れたいからだ。


 グラドは。


「・・・この事については他言無用。・・・士気に関わる。」


 騎士を発見した者達に通達した。


 ・・・数名の兵士達は黙って頷いた。彼らも分かっている。


 上級が三体に未知の魔物。言いふらすだけでどれだけの戦死者が出るか。


 グラドは己に渇を入れ直して戦場で指揮を執った。



 現在。


 医務室にいる騎士にグラドは。


「・・さて、君が見たことをを詳細に説明してもらおう。」


 少し圧を込めた発言に騎士は。


「・・・はい。・・・私は騎士隊長と共に魔物たちの拠点に向かいました。・・・そこでオークキングを一体と遭遇。最初はそいつがボスだと思いました。隊長は予め用意した作戦を実行し奮戦しましたが。・・・ですが。横からオークキングが二体現われ、更に後方から巨大なトカゲが現われました。」

「・・・トカゲみたいに四足歩行で尻尾もありました。しかし、顔は尖っているというか丸い印象。皮膚の色は赤色。まるで炎で燃えているかのような灼熱です。・・・自分は恐怖のあまり逃げました。他の騎士達も逃げました。・・・逃げている最中に魔物たちに囲まれました。・・・自分はその時に隊長の方を見たのです。すると、隊長はトカゲに突撃し、トカゲは炎を纏った舌の攻撃で隊長は死にました。跡形もありませんでした。・・・自分の恐怖は頂点に達し、必死で、逃げ、ました。・・・」


 それを最後に目を閉じた。


 ・・・呼吸はしているので死んではいないようだ。・・・思い出して再び恐怖を感じて気絶したのだろう。


 それ程までの体験だったと言うことだ。


 グラドは。


「・・・私はこれから陛下のところに行く。・・バードスさん達にも城に来て貰うように通達を。」


 近くにいた騎士は敬礼し、退出した。


 ・・・グラドは城に行く道すがら報告するべき内容を整理していた。


 ・・・騎士隊長の勝手な行動。・・・魔物の拠点にいた上級三体。・・・そして未知なる魔物。


 ・・・元凶がいる事は把握していたが、まさかオークキングが三体とは。・・大型の魔物は一匹を仕留めるのにどれだけの兵力が必要か想像に難くない。

 ・・それに加えてそれ以上にでかい魔物がいる。


 更に言えば、魔物の軍勢もまだ健在。・・・正直、この報告は悪い物である。


 だが、行かなければならない。どの道、戦いが進めばいつかは知れる情報だ。場を乱す隊長が突撃してくれたおかげで手に入れたのだ。王国軍の内部決裂が起きることもなくなった。


 ・・不謹慎だが流れとしては悪くない。


 グラドは。


(・・・いかんな。軍の生活が長くて均衡を優先に考えてしまう。・・・人命こそが最優先なのにな。)


 己の変わりように心を痛めつつ内容まとめに集中した。





 玉座の間。


 オリビア女王の前にはグラドとバードス達がいた。


 グラドからの報告を聞いた女王は。


「・・はぁ。・・かの者も身勝手なことを。・・・しかし、その犠牲で有益な情報を得られたのなら良しとしましょう。・・・戦いが終わった後はそれ相応の特進は考えておきましょう。」


 死後の事故処理を口にした。


 宰相は。


「・・そのようにしておきます。・・して?陛下?・・今後はどのような行動を?」


 この質問に女王は。


「・・・防衛に徹し続ければ王都にある食料も尽きてしまうでしょう。・・・グラド?現在の兵士達の士気の具合は?」


 グラドは。


「・・・現状ではまだ戦う気力はあります。・・しかし、一部では疲労感が出ている者がいます。・・メイド達が心のケアをしていますが。・・・長くは持たないかと。」


 苦い顔をしていた。


 それを聞いたレオナは。


「・・・陛下、発言をしてもいいでしょうか?」

 

 女王は頷いた。


 レオナは続けて。


「・・・今の防衛戦を前に出しては如何でしょうか?・・・簡単に言えば魔物たちを牽制し、こちらは攻め込むぞと宣伝します。・・そうなればオークキング達が出る可能性があります。・・・確か、城には帝国の技術で開発した兵器があると。設置や射程の問題で戦場には出せなかったと聞きます。」


 女王は。


「・・つまり、射程内にオークキングをおびき寄せて一気に勝負をかける。ということですか。・・案としてはいいですが。危険ですね。味方の退避行動が迅速におこなえるように徹底した周知に加え、・・魔物たちがこちらの思惑通りに来てくれるか賭けになります。」


 宰相は。


「・・・だが、何時までも持ちこたえられないのは事実。・・・疲労したまま上級と戦うか。危険ではあるが戦意がある状態で上級と戦うか。・・・我々にはこの二つしか残されていない。」


 現実問題である。


 マチルディは。


「・・・一つ良いでしょうか?確か、その兵器は魔術師が必要であり、着弾した際の範囲も五メートルくらいだと聞きます。・・・そこに味方がいた場合はどうやって退避をされるのですか?」


 この質問に宰相は。


「・・それについては伝令兵を使うという手もあるが。如何せん初めての実戦投入だ。上手く退避できる保証は今のところない。」


 悩みの顔である。


 どうすべきか考えているとバードスが。


「・・・いいじゃねぇか。やりましょうぜ。・・そのオークキングや巨大トカゲは俺が相手しますよ。・・・そのまま兵器攻撃しても構いませんぜ。」


 ニヤけ顔で言う。誰もがバードスを驚いた顔で見ていた。


 レオナは。


「な、何を言うのです!!提案をしましたがそれは退避を前提とした案よ!あの兵器の威力は人一人を軽く吹き飛ばせる威力があります!!そんな中で戦い続けるなど!!」


 怒鳴りつけた。


 バードスは。


「・・心配するなよ。・・何しろ、俺の後ろには最強の盾がいるからな。」

 

 そう言ってレオナの肩を掴んで引き寄せた。


 あまりのことに頬を紅く染めるレオナは。


「・・な。・・・で、でも。・・私が防げるかどうかわかりませんし。・・・」


 淀むレオナにバードスは。


「・・?なんだ?一緒に戦ってくれると思っていたが。違ったか?」


 申し訳ない顔をしていた。


 レオナは。


「・・・ふぅ。そうでしたね。あなたはそう言う人でしたね。・・・・分かりました。元より言い出した私が率先して行動するつもりでしたし。・・あなたの我が儘に付き合いますよ。」


 そう言ってバードスに身を委ねていた。


 そんな光景を後ろの三人が。


「・・これが大人の愛。」

「・・信頼というの名の愛はすごい。」

「・・・ドキドキ。」


 まるで野次馬のような目で見ていた。


 ・・・グラドは負けたような顔。女王も黙って見守っていた。


 しかし、宰相は。


「・・おほん。・・して?女王陛下?・・・先の案は如何されるので?」


 この咳払いでレオナとバードスはお互い離れた。


 女王は不満げな顔で宰相を見た。


 宰相は。


「・・・今は今後の事を話し合っております。」


 負けない顔である。


 女王は。


「・・・ふぅ~~。バードス殿が率先して戦ってくれるのはありがたい。あなたが派手に暴れてくれれば上級や未知の魔物が出てくる可能性が上がります。加えてグラド団長が率いる騎士達もいれば、盤石です。・・・宰相。技術部の者達に通達を。・・・兵器の設置作業を開始しろと。」


 この指示に宰相は。


「・・はい。すぐに。兵器の設置は今晩中に終わらせるようにする。グラド団長。手の空いてる兵士たちを技術部に派遣してくれ。」


 グラドは一礼した。


 ・・・こうして王国では大規模な反攻作戦を開始した。


 一方、共和国では・・・




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