第171話 夜の出来事。
国境線。
左側で援護していた私たちの所に兵士が駆け寄り。
「・・す、すみません!!!右側の・・・」
続きを言う前に私は。
「・・今度は右か!?・・油断し過ぎだろう!!?・・・正直、やる気が出ん!!!」
愚痴を言った。
・・当然である。真面目に働いていたのは私たちだけで他はサボっていたと思うと気持ちが低下する。
ティナは。
「・・・仕方ありません。・・私が向かいます。シンスケはそのまま援護をしてください。・・・後で気持ちを落ち着けましょう。」
最期は小声で耳元をに囁いた。
私は。
「・・・何かやる気出た!!!」
ものすごい勢いで火の魔術を連発した。
それを見たティナは。
「・・・ふふっ。それでこそシンスケです。・・・・まぁ、最初に惚れたのは私の方ですがね。」
少し赤面しながら右側へと向かっていった。
こうして国境線の戦いは苦戦しながらも防衛に成功した。
その夜。
帝国。王都。
玉座の間。
ヨルネ皇帝はマグネスからの報告を聞いていた。
皇帝は。
「・・・はぁ~~。残っている冒険者達で良心があるのは若き者達と苦汁をなめてきた者。それ以外は初心を忘れて堕落した者達か。・・呆れて物も言えない。」
ため息をついた。
・・・今いる王都がそんな連中が大半では王都防衛は騎士達と兵士達のみ。数の差があったのにこれでは悪化する。
・・・状況は絶望的である。
これからどうするかマグネスと模索しようとしたとき、扉が開いた。
謁見の予定はマグネスのみのはずだが。・・・そう思っていると入ってきたのはギルド長だ。
マグネスは。
「・・何だ?一体?・・挨拶も無しに無礼であるぞ。」
牽制した。
皇帝も同じ表情である。
ギルド長は。
「・・・無礼ですか。・・・それはこちらの台詞ですよ。あれだけの事が起きていながら魔物たちが一斉に襲ってこなかったのは。・・・私のおかげだというのに。その物言いは失礼極まる。」
やれやれと言った表情である。
その言葉に皇帝は。
「・・成る程。あなたが魔物側と通じていたのですね。」
納得した顔である。
ギルド長は。
「・・あまり驚かないのですね。・・それとも、感づいていたのですかな?」
試すような口ぶりに皇帝は。
「・・薄々ですがね。・・ギルドでの異例な依頼と報酬。何を考えているのか分かりませんでしたが。今回の戦いでもしかしたらと疑っていましたよ。現にマグネス団長は冒険者の指揮をあなたではなく、熟練の冒険者に一任させていました。」
マグネスは表情を変えること無く直立不動であった。
ギルド長は。
「・・さすがは前皇帝のご息女です。見事な推理です。・・・ならば、お分かりでしょう?今ここで私に何かあれば魔物たちがどうするのか?」
人をバカにする顔である。
マグネスはすぐにでも斬り捨てたい気持ちが湧き上がった。しかし、できなかった。・・ここでそんなことをすれば魔物たちが一斉に襲ってくるかも知れない。
・・詳細な関係が分からない以上手を出すのは悪手である。
皇帝は。
「・・・それで?貴殿の目的は何だ?」
率直な質問をした。
ギルド長は。
「・・何。簡単なことです。・・・今すぐ降伏し、玉座を私に明け渡すのです。」
この言葉にマグネスは。
「・・き、きさま。・・・よりにもよって・・・」
感情が頭を支配し、剣に手を掛けた。
それを見た皇帝は。
「・・抑えなさい!!ここを何処だと思っている!!!」
一喝した。
マグネスは正気を取り戻し、手を離した。
ギルド長は。
「・・そうですよ?ここは神聖なる儀式をおこなう場。・・血で汚すことは許されません。団長ともあろうお方がそれを忘れるとは。・・・・父親が英雄なのは何かの間違いでしょうか?」
かなり煽っていた。
マグネスは内から湧き出る感情を何とか抑えるかのように握りこぶしから血が少し出ていた。
それを察した皇帝は。
「・・・ギルド長。・・あなたの要求に応える気はありません。・・・私はこの命が尽きるまで離れる気はありません。」
決意を込めた瞳で宣言した。
ギルド長は。
「・・その目。本当によく似ている。・・だが、それだけだ。あの方のような武功もない貴女には、ただそこに座る以外何もできないのだから。」
鼻で笑いながら玉座の間を出た。
二人だけになった部屋でマグネスは。
「・・申し訳ありませんでした。皇帝陛下。」
頭を下げるマグネスに皇帝は。
「・・いいえ。あなたの気持ちも分かります。・・・私の方こそ気持ちを落ち着かせる為とはいえ、キツいことを。」
謝罪しようとする皇帝にマグネスは。
「・・・皇帝陛下。あなたは何も間違ってはいません。先ほどの一喝も私の為だと理解しております。」
再び頭を下げる。
皇帝は安堵からか。
「・・・それを聞けて嬉しいです。・・・さて、話を戻しますが。・・裏切り者が分かった以上。調べる必要はないでしょう。」
話し合いを始めた。
・・・この事からギルド長以外から裏切り者がいないと確信しているようだ。何故なら、あのギルド長は独占欲の塊であること。
・・・誰かを配下をするのは取り分が減る。
そう結論付いた二人は今後の事を話し合った。
国境線。
前線基地。
疲労感が蔓延する野営地。
・・・何しろ、今までとは違うやり方で魔物たちが現われたからだ。魔物たちが撤退した後、兵士達ならびに冒険者達に夜間での交代勤務がなされた。
冒険者達の一部は不満を抱いていたが、雇われている以上。余程のことが無い限り断る事ができない。
そんな中、私たちも参加するのかを聞くと。
「・・いいえ。`赤雷`と`狂犬`は今回の戦いで活躍し、かなり負傷しております。・・・ですのでゆっくりしてください。・・これは将軍の配慮です。」
最期は小声であった。
・・お言葉に甘えて私たちはテントに戻った。
夕食はテント内で取ると兵士に言ってあるので私は。
「・・今日は久しぶりに陣中食にするか。・・お前も食うか?」
ベッドの下からゴブリンが出てきて頷いた。
・・・私は外に出てたき火を起こし、鍋に水を入れた。沸騰するまでの間。地球から持ってきた物。乾燥米と乾燥ワカメと乾燥キノコを出し、キノコは適当なサイズに切った。
沸騰した鍋に味噌玉を三つ投入し、よくかき混ぜ、米とワカメとキノコを入れた。
しばらくするとワカメは元通りになり、キノコは味が染み込み、米は味付け風のおかゆになった。
完成した料理を三つの椀に入れ、テントに戻った。
私は。
「・・お待たせ。簡易的なおかゆだが、味の方は保障するぜ。」
そう言って地べたに並べた。
二人と一匹は黙々と食べた。ゴブリンは気に入ったのか、かなりがっついていた。
ティナは。
「・・・随分と濃い味ですね。・・お嫌いでは?」
私は。
「・・・嫌いというわけでは無いが毎日食いたい気分では無い。・・・今日はかなり疲れたからな。塩分多めにした。」
そう言ってすすった。
ティナは。
「・・そうですか。確か、そちらでは塩分を補給するのは必須でしたね。・・こちらでは全然考えない事ですが。」
ティナはそのまま飲み干した。
・・食事を終えた後。
ティナは。
「・・・シンスケ。・・今日は一緒に寝ましょう。」
そう言って私のベッドに鎧姿のまま入った。
私は。
「・・言っておくが。・・ここではしない。・・ただ味あわせてもらう。」
そのまま私服のままベッドに潜り込んだ。
ちなみにゴブリンは先ほど、荷車に送った。魔物とはいえ、第三者がいる所では気まずい。
暗いテントの中、灯りは外からわずかにもれるかがり火のみ。
・・私たちはベッドの中でお互い抱き合った。ティナの体を鎧越しで触った。
胸だけで無く、腕、足、お尻など。触った部分はないと思うほどに触りまくった。
ティナは。
「・・・うぅん、ふぅ。・・・あ、あまり激しくは、しないで。・・・明日に、ひびき、ます。」
赤面しながらの答え。
・・・私の理性は飛んだ。そこからは思いっきり抱きつき、キスをし、ティナの匂いを嗅いだ。首筋から脇の下、下半身の部分まで嗅ぎまくった。
ティナは真っ赤になりながらも無言で私の行為を受け入れてくれた。
・・・この夜。疲れ切ったはずの私の体力は回復し、ティナは恥ずかしさから疲れていた。