第170話 告白と確信。
国境線の基地で私たちが休んでいる間。
アルミ達も治療を受けていた。
・・傷は私たちよりもひどく、すぐに戦線復帰は難しかった。
アルミは。
「ちっ。・・・・大丈夫だ。これぐらいの傷は傷じゃねぇ。」
強がりに医師は。
「・・ダメですよ。いくらポーションで回復しても外見は治っても中身は回復しきっていないのです。・・おまけに毒も入っています。大人しくしてください。」
アルミは舌打ちをした。
・・・毒攻撃。ゴブリンがリザードマンと共闘したときに受けた傷だ。一瞬目眩がしたが気合いで耐えた。・・・他のメンバーに被害が出ないように全ての攻撃を受けていた。
しかし、それも限界。
一緒に戦っていたルーズに疲労の顔が浮かび上がり傷を負った。ドルドもミミィも泣き言を言わないが汗まみれの顔が物語っていた。
・・・何しろ、倒してもきりがない。正直、応援が来なければあの場で全員死んでいた。
その現実はアルミには受け入れるには難しかった。
そんな中、ミミィは。
「・・お姉様。・・・無理はしないでください。」
涙目で訴えてきた。
・・今まで質問はしてきてもアルミの言い分に意見を言うのは初めてである。
それ程までに心配してくれる事にアルミは。
「・・・なぁ、ミミィ?・・どうしてそこまで私のことを?・・・あんたとは王都に来る前の街で知り合ったんだぜ?」
疑いの目である。
ミミィは。
「・・・それは。・・・・お姉様が。・・・私の初恋の相手だからです。」
赤面しながら答えた。
アルミは。
「・・・・えっ?・・・私は女だよ?」
当たり前のことにミミィは。
「・・それでもです。・・・お姉様と初めて出会ったあの街のギルドで見かけたとき。・・・その風貌とまっずぐな瞳に私の心は撃ち抜かれました。・・・頼み込んで一緒について行ったのもお姉様の側にいたかったから。・・・・それだけです。」
真っ赤になっていた。
・・アルミはそれなりに人を見る目がある。Aランク二人を見た時も悪人では無いことは分かっていたが。何というか。意固地か?それが入ってあの態度を取った。
だからこそ分かるミミィが本気で言っていることに。
アルミは。
「・・・変わった奴だよ。あんた。」
どう言えばいいのか分からない。
ミミィはそれでいいのか満足した顔である。
その時。
「・・・君たち。・・そういう話は二人だけの場所でしてくれ。」
医者が咳払いしながら言った。
・・・二人は辺りを見渡した。
ここは医務室。昨日戦闘に復帰できずに寝込んでいる者がいる。当然、起きている。・・・全員、ニヤけ顔である。
二人は気まずいのか布団を頭から被ったまま動かない。・・・恥ずかしいのだろう。
少し離れたベッドにいるルーズは。
「・・・なんか懐かしい感じにならない?ドルド?」
ドルドは無表情で。
「・・・そうですね。」
どこか嬉しそうである。
・・まだ、あいつがバカでは無く、素直な頃のパーティーだった頃を思いだしていた。
シンスケサイド。
硬い床で寝転がっているとき、兵士が駆け寄ってきて。
「・・お休み中に失礼!!・・左側の防衛で魔物たちに苦戦しているそうです!!お疲れの所を申し訳ありませんが。・・何卒、ご助力を!!」
頼み事に私は。
「・・いいよ。困っているのなら手伝う。冒険者の仕事としてな。」
そう言って立ち上がった。
ティナは。
「・・・同意見です。ただ、私たちも今まで通り動けるかは保障できませんが。」
同じように立ち上がった。
兵士は。
「・・遠距離からの魔術でも構いません!!こちらに!!」
急かしてきた。
私とティナは武器を手に、現地に向かった。
左側地点はハッキリ言ってヤバい。
・・・ファイターモンキーとゴブリン集団の攻撃に冒険者と兵士達は苦戦していた。足場は二十人ぐらいは通れるであろう道で右側は崖。左は高い岩が壁のようになっていた。
私は。
「・・成る程。・・ゴブリン達が真っ向から攻撃し、ファイターモンキーが壁伝いからの奇襲攻撃。これは苦戦するな。・・・しかし、昨日はどうでしたか?同じ状況のはずでは?」
この質問に兵士は。
「・・・昨日は投石機や弓部隊が展開し、万全の状態で迎え撃ったので難なく終えましたが。今日は見張りが三名で。投石機も調整の為に収容していたのです。」
苦い顔である。
成る程、魔物たちが現われないから調整は分かるが見張りが三名とは。油断以外何物でも無い。
ティナは。
「・・では私は風魔術でファイターモンキーをたたき落とします。シンスケは?」
私は。
「・・俺も似たようなものだな。・・・今更前戦で戦うにも崖の所以外ないからな。無理に入るより遠距離からの支援の方がいい。」
状況把握からの結果を出した。
両者頷き、同時に魔術を発動した。
「・・突風撃!!」
「・・火散弾!!」
ティナの剣から螺旋の風、私の拳から連続に火の玉が炸裂。
・・壁に張り付いていたファイターモンキーたちを次々と落としていった。風で切り刻まれ、炎を直接くらって黒焦げ。
避けた連中は体勢を崩して落ちた。
それを見た冒険者は。
「・・おお!!勝機あり!!」
叫び声が引き金となり、他の者達が進軍した。
それを見た私は。
「・・・相当、溜まっていたようだな。」
ティナは。
「・・そのようですね。」
少し疲れているのか顔が暗い。
私たちはそのまま援護のみおこなった。
司令官室。
ゴルトール将軍は各騎士からの報告を聞いていた。
「・・・黒い霧が出て、突然魔物が現われた?・・・何がどうなっているのだ?」
あまりのことに頭痛を通り越して何も考えられない。
隣にいたシェヴルは。
「・・将軍。お気持ちは分かりますが。今は・・」
続きを言う前に将軍は。
「・・分かっている。今はこの現状を何とかするしかない。・・・相手の手の内が分かっただけでも良しとするか。」
前向きに検討し始めた。
・・・その時、伝書鳥が窓にいた。シェヴルは紙を回収した。
報告者はマグネス。将軍の息子の名前が記されていた。内容を見ずに将軍に手渡した。
内容を見た将軍は。
「・・王都でも同じようなことが起きたようだ。・・・だが、王都の戦力がひどすぎる。大半の冒険者達が酒を飲んで爆睡。今も起きないそうだ。」
呆れる将軍にシェヴルは
「・・・?酒を?確か、現在王都にいる冒険者はギルド長からの要請を受けていない新参者達が多いとか?」
将軍は。
「・・いや、Cランクが大半だ。Dランクは遠慮しているのか全く飲まなかったそうだ。・・・一部、いや少数の経験豊富なCランクが一パーティーが何とか場を持たそうと奮戦している。・・・頼もしい限りだ。」
嬉しそうな顔である。
シェヴルは。
「・・しかし、そんな状況では王都の被害はかなりのものでは?」
心配する声に将軍は。
「・・それが、進軍した魔物たちはゴブリンやスライム、オオカミの集団しか襲ってこず。・・後方にいた強そうな魔物たちは攻め込んでこなかったそうだ。」
シェヴルは。
「・・?それはどういうことですか?」
当然の疑問に将軍は。
「・・分からん。現地では`助かった`という気持ちで一杯だったそうだ。息子だけはかなり疑問に思っているようだが、水を差すわけにはいかず。この事を皇帝陛下のみに報告するそうだ。」
内容を聞いたシェヴルは。
「・・・賢明な判断かと。場を濁すような発言は士気の低下に関わります。」
マグネスの判断に素直に称賛した。
将軍は。
「・・・ああ、息子がいれば王都は安心だ。・・だが、これ程の好機を魔物たちを率いる知恵者が見逃すとは思えん。・・内部に裏切り者がいるのは確定だな。」
まるで知っているような口ぶりである。
シェヴルも分かっていた。・・・これまでの事を考えればな。