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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第169話 未来の先は・・・。





 ここで少しだけ話を逸らします。



 王国ではいきなり現われた魔物たちの対処に当たっていた。


 グラドも人員配置で指揮を執っていたとき、騎士が。


「だ、団長!!報告します!!騎士隊長が数名の騎士を連れて魔物たちの所に進軍しました!!」


 この報告にグラドは。


「!!な、なんだと!?何故そのような!!?・・・いや、落ち着け。焦ってはダメだ。まずは考えるんだ。・・・先ほどの態度から推測するに。・・・手柄をたてる目的?・・・可能性としては高い方か。」


 呆れて物も言えない。


 ・・・元凶がなんなのか全く分からない状況で闇雲に突入するのは自殺と同じである。


 騎士は。


「・・どうされますか?・・すぐに戻るように伝令兵を・・」


 グラドは。


「・・いや。その者まで危険を及ぼしかねない。・・・各自、指定した持ち場につけ。以上だ。」


 この判断に騎士は。


「・・あの。・・・独断専行した・・・」


 オドオドしながらの質問にグラドは。


「・・持ち場につけ。・・話は終りだ。」


 そう言ってグラドは盾を持って正門に向かって行った。


 ・・・騎士達は思った。`見捨てろ`と。・・・・


 人としては最低だが、指揮する者としては正しい判断である。


 ・・・勝手な行動をした者達を止める為に兵を出すのは`死ね`と言っているようなものである。それに元はと言えば突撃していった連中が悪い。

 ・・しかも、態度が悪く、好感どころか同情にも値しない。


 人を助ける仕事に就いてもここまでやる気がでないのは珍しい感情である。


 騎士達は無言のまま持ち場に向かった。






 騎士隊長率いる集団は魔物たちへと向かって馬を走らせていた。


 ・・・途中、ゴブリン達が襲ってきたが、返り討ちにした。疲労感も全くない。


 当然である。・・・騎士隊長が選んだ騎士達は貴族だが、実力は勿論、実戦も数え切れないほど経験している。加えて、隊長自身も若い頃は前戦で戦い武功を上げている。


 ・・・この程度の魔物たちに後れを取ることは無い。


 そして、この先にいるであろう上級魔物にして親玉も知恵と連携が取れた人間が後れを取るはずが無い。負けるはずが無い。


 ・・・そして、倒したとき訪れる栄光と功績。輝かしい未来が待っている。


 騎士隊長は何の疑いも無く進軍していった。


 ・・・その先にある絶望を知らずに。


 ・・・魔物たちを蹴散らしていくと前方に巨体の影を見た。見た目はオークだが、その大きさは従来よりも大きく。手に持つ武器も鉄の棍棒。何よりも纏わり付く存在感が物語っていた。


 騎士は。


「・・隊長。感じましたか?」


 息を呑む騎士に隊長は。


「・・あぁ、間違いない。・・あれはオークキングだ。・・・まさに元凶と呼ぶに相応しい。」


 悪い笑顔である。


 ・・・オークキング。上級魔物にしてオークの親玉。


 一年前の魔物の騒乱時、多くの魔物たちを従えて都市アルムに侵攻。激しい戦闘の末、『麗剣』の手によって討伐された。

 ・・しかもかなりの深手を負いながら。


 騎士達は少し怯えていた。


 ・・・『麗剣』といえば王国でも屈指の冒険者パーティー。女性だけでありながら完璧な連携と強さを持っていた。今では解散し、一人はパートナーとともに帝国の国境線で戦っていると聞き、三人は王都を守る為に来てくれた。


 ・・・昨日の戦闘を見たが、強さは勿論、連携も見事であった。


 ・・・正直、魔術師と斥候、さらに元『閃光』に所属していた魔術師には期待はしていなかった。


 いくら強かろうと見た目は少女。・・・不安になるだけだ。


 しかし、強かった。・・・魔術は多種多様にして応用力がすごく。斥候は速さを生かした戦術で敵を一撃で仕留めていった。


 ・・・その光景は見ているだけで感動ものである。


 そんな彼女たちが苦戦する魔物だ。・・・怯えるのは当然。


 騎士隊長は。


「・・狼狽えるな!!いかに強大な魔物でも我々には知恵と気高き精神がある!!武器を振り回すだけのデカブツなど敵ではない!!!」


 一喝した。


 その顔は真剣そのもの。・・・安心感と信頼感を感じる。


 騎士達は。


「そ、そうだ。我々には隊長がいる!」

「このお方ならいかなる存在だろうと恐れるに足りず!!」

「我々に勝利を!」


 雄叫びを上げた。


 騎士隊長は剣を掲げ。


「・・よし!!作戦通りにいくぞ!!・・突撃!!!」


 馬を走らせた。


 ・・・騎士達は左右に分かれ。騎士隊長は二名の騎士とともに正面に向かっていった。


 ・・・作戦は単純。・・・騎士隊長が自ら囮となり注意を引きつけ、騎士達が左右からの攻撃をし、徐々に弱らせていき、止めを隊長がする。


 ・・・隊長が目立ち、手柄を独り占めに聞こえる戦法。


 しかし、疑問に思う騎士達は誰もいなかった。


 騎士隊長は。


「・・我こそは王国騎士の隊長を務める者!!!王国に仇なす元凶よ!!!我が正義の剣の前にひれ伏すが良い!!」


 騎士としての宣言をしながら突進した。


 オークキングは棍棒を上段に構え、勢いよく振り落とした。その動作は単純。騎馬術に長けた隊長や二名の騎士は難なく回避。その隙をついて両足に攻撃。


 ・・・しかし、かすり傷程度。血も出ていない。


 距離を取った隊長は。


「・・さすがにこの程度では無理か。・・しかし、想定内。」


 余裕の笑みを浮かべた。


 ・・その時、左右から騎士達が強襲。オークキングは左右を見渡した。驚いていると騎士達は思っていた。しかし、オークキング自身はそんなに驚いた雰囲気を纏っていない。


 オークキングは近づく騎士達に棍棒を水平に構え、一気に回り出した。・・・さながらコマの如く。


 騎士達の馬は立ち止まるのが遅く、攻撃をくらった。落馬した騎士達。馬は何処かへと走り去り、落ちた騎士達はよろめきながらも立ち上がった。・・・幸い、いち早く馬から飛び降りたので軽傷で済んだ。


 戦闘続行に問題はない。

 

 隊長は。


「・・中々、やるようだな。そうこなくては意味が無い。」


 やる気に満ちあふれながら馬から下りた。


 ・・・これ程の強敵を倒せば、盤石のものとなる。


 そう思っていると騎士の一人が。


「・・た、隊長。・・・あ、あれを・・・」


 そう言って指さした方向を見た。


 ・・・隊長は何も言えない顔をしていた。騎士達も同じように見て絶句した。


 ・・・何しろ、そこにはオークキングが二匹現われたからだ。


 ・・・ここにいる奴を含めて三匹。更にはその奥には見たことの無い魔物がいた。


 全長十メートルはあるだろう体格に四本足で動くトカゲ。何よりも肌の色は赤く、まるで燃えているような陽炎を漂わせていた。


 ・・・隊長は無表情だった。


 オークキング一体だけかと思いきや三体で。しかも未知の巨大魔物が出現。


 こんなのに勝つには王国の全戦力を持ってしなければならない。


 騎士は。


「・・・あ、あぁぁぁ。・・・もう、ダメ、だ・・・」


 剣を落とし、馬は恐怖からか立ちつくしていた。


 ・・・その隙をオークキングは見逃さずに棍棒を振り落とし、潰した。


 飛び散る鮮血を見た騎士達は。


「「「・・あぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」」」


 一斉に逃げ出した。


 必死の形相で馬を走らせた。・・・・だが、魔物たちはお構いなく襲いかかる。一人また一人、魔物たちに囲まれて袋叩きにあい、絶命していった。


 騎士隊長は。


「・・あ、あははははっ。・・・これは、いい。・・こいつらを倒せば、私は王国の王。・・いや、大陸最強の存在になる。・・・なれる!!!」


 叫び声を上げながらトカゲのいる方向に走っていった。


 ・・・その目は血走っており何も見えていない同然の状態である。



 ・・・トカゲ。サラマンダーは全身から火が吹き出し、出てきた舌も燃えていた。


 突撃する人間にサラマンダーは舌を右横に振った。




 騎士隊長は現われたトカゲが最大の敵と判断し、攻撃を仕掛けた。


 ・・・倒せば、他の魔物たちは動揺する。・・・するに決まっている。そんな妄想をしていた。


 だが、その剣が届くことは無かった。


 ・・・横から来る攻撃に対処できず、まともにくらった。


 攻撃後。その場には両足だけを残し、他は何もなかった。


 それだけでサラマンダーの舌の炎がどれだけの高温かを物語っていた。


 こうして、輝かしい人生を見ていた騎士隊長の未来は消えた。





 帝国。


 国境線の基地。


 基地内に戻った私たちは医療班からの手当を受けていた。傷口を見ては検査していた。


 医者は。


「・・・どこか気分が悪い所はありますか?」


 この質問に私は。


「・・・特にないですね。」


 医者は。


「・・ふむ。・・毒の攻撃は受けていないようですね。傷口にも異常はありません。そちらの美しいお方は?」


 隣にいる女性医者は。


「・・傷を受けていますが、問題ありません。」


 診断を終えていた。


 私は。


「・・私よりも`狂犬`の方はどうなのですか?」


 この質問に医者は。


「・・負傷はしていますが、命に別状はありません。」


 その言葉に安心した。


 遠目からだったがかなりヤバい状態だった。


 ティナは。


「・・それで?私たちはどうします?前戦に戻りますか?」


 この質問に近くにいた兵士は。


「・・いえ。あなた方は休んでいてください。・・まだ、上級がいる可能性があります。・・・他の魔物たちは冒険者ならびに兵士達に任せて、体力は温存して置いてください。」


 そう言ってその場から離れた。


 私とティナは目を合わせて。


「・・・仕方ない。休むか。・・・正直、気を張りすぎて疲れた。」

 

 硬い床で横になった。





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