第168話 リザードマンハンターとの戦い。
私たちとリザードマンハンター二体の戦いが始まった。
ティナは警戒している。
・・・一見すると小型のリザードマンだが、脚力と突進力は普通のリザードマンより上。一瞬たりとも目を離せない。
・・睨み合う両者。仕掛けてきたのは魔物だ。
迫ってくる槍使いの突きの一撃を右に回避。そのまま反撃しようとしたとき、相手が半回転し、槍の柄部分が迫ってきた。
・・ティナはとっさに剣で防御。その勢いでティナは少し飛ばされた。
倒れ込んだティナに槍使いは追い打ちをかけてきた。
ティナは。
「!!風加速!」
両足から風が噴出。
・・ロケットの如く後方に下がった。
ティナは。
「・・危なかった。地球の発想に助けれました。」
立ち上がりながら感謝した。
・・以前、マンガで足から火やら風を噴出し飛び上がるシーンがあるのを思い出し、実戦した。
・・・無論、初めてのぶっつけ本番。
成功したのもティナの魔術鍛錬を疎かにしていない証拠である。槍使いは少し驚いたがすぐに構え直した。
ティナは。
「・・さすがは上級ですね。・・シンスケが速攻で片付けたい気持ちが分かります。」
冷や汗を掻いた。
・・通常の魔物であれば時間をかけても問題ない。何故なら知能がないからだ。本能のままに動く存在はある程度学習するが微々たるもの。
だが、上級の学習能力は凄まじい。
・・特に武器を扱う魔物はそれだけで脅威だ。
しかし、すぐに倒そうにも相手の技量は高い。人間で言えばBランク相当だ。その上、身体能力は人間を超えている。Aランクは間違いなし。
・・ティナは腰に掛けたブロードソードを目にした。
この剣であればリザードマンを倒すのは簡単だ。
・・光魔術が施された伝説級と呼ぶに相応しい代物。しかし、無闇やたらに使うのは相手に情報を与えるようなものだ。
それだけは避けたい。
ティナは。
「・・・とすると。魔術を使うべきか。しかし、相手が待ってくれる保証は無い。・・・こうなれば。」
ティナは深呼吸し、剣を構えた。
・・槍使いはその仕草を見て、隙ありと確信し、襲いかかった。槍使いの一足は早く、一気に間合いを詰めてきた。
・・ティナは槍の矛先を最短の動きで回避。槍使いは予測していたように柄頭を半回転させた。
同じ手だが戦闘中はそんなことは関係ない。
だが、ティナは剣を最小の動作で振り落とし、柄頭を斬り落とした。槍使いは驚いていたが、すぐに気を取り直す。
・・・・その間、わずか一秒。
ティナはその時間で槍使いの右足を切り落とした。
槍使いは気を取り直す前におきた出来事についていけず、そのまま倒れ込んだ。
なんとか立ち上がろうとしていたがティナは無慈悲に近づき、槍使いの首を跳ね飛ばした。
私は剣使いとの戦いを開始した。
昨日と奴とは違いロングソード。小型のリザードマンには大きすぎるとは思うが相手は魔物。筋力が人間とは違いすぎる。
・・・一気に間合いを詰めてくると思いきや左右に反復横跳びをしながら近づいてきた。
攪乱戦法だな。どっちからくるかは相手次第。
私は惑わされること無く待ち構えた。
・・・どんな動きをしようと近接武器を持っている以上近づかなければ斬ることはできない。段々と近づく剣使い。
右か左か。・・・左に移動した瞬間。足の動きが変わった。・・左!!
剣使いは私の前に現われて剣を振り落としてきた。
・・・私は剣で防御。拮抗状態になった。
身長の差があるのか昨日と同じくやや有利。相手も悟ったのか口から水が出てきた。
・・・唾では無く、水鉄砲のように射出。
それを顔面に直撃。突然のことですぐに後ろに下がった。
・・体勢を立て直した後、顔を確認した。ただの水のようだ。気持ち的には気分悪いが、戦いである以上何も言わない。
・・・剣使いがすぐに襲いかかると思ったが、向こうも体勢を立て直していた。
今のは奇襲と言うより即席で作った戦法のようだ。
私は。
「・・・昨日と奴と同じで厄介そうだ。・・・長引くと次からの戦いがキツい。勝負を決めるか。」
そう言って剣に魔力を込めた。
・・・剣が赤く光るのを見た剣使いは同じように剣を構え、水を纏わせていた。
互いの魔剣。一瞬で終わるのか?それともかち合うのか?
・・・睨み合う両者。・・そして共に駆けだした。
・・激突する両者。鍔なり合う剣。
だが、強度では私の方が上のようだ。相手の剣に少しヒビが入った。
・・・それを理解したのか、剣を少しずらして受け流すように左回避していた。
私は勝機と感じ、剣使いのいる方向に向かって体当たりをした。少しでも相手に時間を与えない為に。
・・剣使いは体勢を崩し、よろけていた。
私は後ろから上段構えに斬り落とした。剣使いは縦から真っ二つとなり、絶命した。
・・・私は。
「ふぅ~~。取りあえずは何とか終わったか。・・ん?」
私に近づく気配を感じた。
振り向くとティナが早足で駆け寄ってきて。
「・・そちらも終わったようですね。・・あっちの戦場も良い風向きになったようです。」
目線の先を見た。
冒険者達と魔物たちの戦いは冒険者側が有利になっている。闇雲に前に出ず、防御陣形で相手の攻撃を受け止め、後方から弓や魔術で援護。
・・・魔物側は突進する前衛に弓で援護している。
だが、命中率は冒険者の方が高いようだ。この差が戦局を塗り替えていた。
私は。
「・・俺たちも加勢するか。」
ティナは頷いた。
が、兵士がこちらにやって来て。
「・・・お二人もご無事で何よりです。怪我をされているようですし、すぐに基地内にお戻りください。」
私は。
「・・いや大丈夫だ。傷といってもかすり傷だ。この程度は大げさですよ。」
ティナも頷いた。
・・確かに数カ所傷を負っているが、全部かすり傷。手当の必要は無い。
兵士は。
「・・いいえダメです。・・将軍からも救援が成功したらすぐに基地内に戻るようにと事伝手です。」
将軍の命か。
雇われ者としては従うしか無い。
私は。
「・・・分かりました。基地に戻ります。・・・ですが、一つだけ。他の所に被害は?」
この質問に兵士は。
「・・正面の戦闘が始まって少ししたとき、左右からも同じように奇襲を受けました。その対応と人数を振り分けに時間が掛かってしまい、こちらへの救援が遅れてしまいました。」
申し訳ない顔である。
私は。
「・・大丈夫ですよ。気にはしていない。・・むしろ感謝しています。来てくれたことに。」
ティナも笑顔で頷いた。
兵士は安心したのか。
「・・ありがとうございます。ではこちらに。」
道案内のように後に付いていった。
こうして、前線基地での奇襲はなんとか防ぐことができた。
しかし、王国では・・・