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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第164話 奇妙な朝。






 翌日。朝。



 何時ものように起床し、食事を取った。・・・装備も万全。体調も万全。申し分なし。


 私は。


「・・よし!!ティナはどうだ?調子は?」


 この質問にティナは。


「・・問題ありません。いつも通りです。」


 体を少し動かしながら答えた。


 私たちの準備は整った。早速、正面口へと向かった。



 ・・・そこには他の冒険者達も勢揃い。


 少し疲れが残っている人もいればやけに元気な人もいる。


 元気な冒険者は。


「・・・よし。今日は絶好調だ。思う存分戦える。・・・あのクソリーダーがいないおかげだな。」


 最期の部分は小声であった。


 隣にいた冒険者は。


「・・分かるよ。その気持ち。あんな奴の指示で戦っていちゃ、命が幾つあっても足りねぇ。・・・でも逆らうこともやめることもできなかったからな。・・・まぁ、奴が死んでくれたおかげで借金もうやむやになるからな。」


 最後の部分を小声で言いながら少し笑っていた。


 ・・・それを聞いた冒険者は無言で右手を差し出した。意図を察した彼は無言で握手した。


 通じる物があるということか。同じ境遇だからかな。


 ティナは。


「・・まぁ人それぞれ悩みの一つや二つはあるものです。・・・気にせずに行きましょう。」


 そう言って歩いた。


 ・・・私も同じ気持ちだ。他人の事情はその人達で解決すれば良い。首を突っ込むのはかえって迷惑でしか無い。


 その時、後ろから声が。


「・・おやおや?Aランク様はお早いお着きで。・・真面目で結構ですね。」


 イヤミを言いながら近づいてきたのはアルミだ。


 ・・・後ろには三人もいた。


 ティナは。


「・・当然です。私たちは仕事で来たのです。遅刻をするのはあり得ません。」


 淡々と正論を述べた。


 それを聞いたアルミは。


「・・はっ。エリート様は真面目ですね。」


 悪態をつきながら横切った。


 ・・・相変わらずのケンカ口調にミミィも同意しながら付いていった。


 後ろからルーズが来て。


「・・・すみません。リーダーは昨日戦闘が満足いかなくて。ただの戯れ言だと思って。」


 そう言って頭を下げた。


 ・・・ドルドも同様である。


 私は。


「・・気にするな。・・それはそれとしてずいぶんと礼儀正しいな。一年前のあいつの元にいたときはそんな態度では無かったはず。」


 首を傾げる私にルーズは。


「・・あの人だけだったのです。私とドルドを拾ってくださったのは。・・一年前、あいつから離れた後いくつかのパーティーの募集を受けたのですが。どこも雇ってくれなかった。それもそうです。あんな陰険な貴族と一緒だったのです。・・・煙たがれて当然。」

「途方に暮れていた時に声をかけてくれたのがリーダーです。評判は知っていたのですが、`そんなの知ったこちゃない。私がいいぞと言った。`と言って手を差し伸べてくれた。・・・嬉しかったです。そう言ってくれて。だからリーダーの評判が悪くならないように支えていくつもりです。・・・それではこれで。」


 おじきして去って行った。


 ・・・人間。出会う人でここまで変われるとは。・・・いいもんだ。


 ならば守らなきゃ。この生活を。・・・・何気ない幸せこそが宝だ。


 私は。


「・・なんかやる気出た。・・・・行くかティナ。」


 この言葉にティナは。


「・・気が合いますね。私も同様です。」


 そう言ってニヤけていた。


 例え、イヤミを言う同僚だろうといい人なら問題ない。口は悪いが性格は良い。というやつだ。



 正面口の扉が開き、冒険者達は外に出た。


 ・・・光景は策や投石機、エッジソンが置いてある。そして、魔物たちの姿は無い。


 一応`探知`を発動したが、約五十メートルに敵の反応無し。・・・まだ来ていないのか?


 ティナは。


「・・敵はいますか?・・と言いたい所ですがその様子ではいないようですね。」


 私の顔を察したようだ。


 私は。


「・・その通りだ。全くない。・・・寝坊しているのか?」


 少し冗談を言った。


 ・・・それだけ余裕があるのか?と思いたい。


 その時、兵士長が来て。


「・・・シンスケ殿。魔物たちは何処に?」


 この質問に私は。


「・・気配が全くない。透明でもない。・・・どこにもいない。」


 兵士長は。


「・・すぐに将軍に伝えてきます。・・・お二人はこのまま待機で。」


 兵士長は基地内へと戻った。


 この状況を理解していないのか冒険者が。


「・・昨日みたいに姿を消してるかも知れない。すぐに石を投げて索敵しよう。」


 そう言ってパーティーと共に石を複数持って前に出た。


 他の冒険者達も同様に行動した。


 ティナは。


「・・待ってください。この周辺に魔物たちはおりません。無駄な体力は使うものではありません。」

 

 制止の言葉に女魔術師が。


「・・・ですが、向こうがそれを学習して対策を練っているかも知れません。・・・ここは私たちにお任せください。」


 言葉を振り切り行動した。


 私は。


「・・手柄ほしさか?」


 この疑問にティナは。


「・・では無いようです。・・彼らの目は真剣そのもの。邪なものは感じません。おそらく、昨日の戦闘で助けて貰ったから少しでも恩返ししたいのでしょう。」


 何とも言えない表情。


 ・・そんな理由で動かれては止めようにも止められない。




 司令官室。


 兵士長の報告に将軍は。


「・・ご苦労だった。引き続き、正面口で警戒に当たってくれ。」


 指示を受けた。


 兵士長は敬礼して退出した。


 隣にいたシェヴルは。


「・・・何かを企んでいるのでしょうか?」


 最も可能性がある質問に将軍は。


「・・そうとしか考えられない。・・・他の所も同様の報告がある。だが、現状ではそれを知る術は無い。警戒以外にやれることもない。シェヴル。君は定期的に各持ち場に行き、異常が無いかを確認してくれ。私は女王陛下に伝える。」


 この指示にシェヴルは敬礼し、部屋を退出した。


 一人になった将軍は無線機を取り出した。





 帝国。


 玉座の間。


 ヨルネ皇帝は将軍からの報告を聞いていた。


 皇帝は。


「・・・分かりました。引き続き、そちらの事は任せます。何かあればすぐに連絡してください。」


 そう言って無線機を切った。


 皇帝は騎士を呼び出して。


「・・・あなた。すぐに正門に向かい、状況確認を。そしてマグネス団長に伝えて。何かあればすぐに伝令兵を送るようにと。伝えてください。」


 騎士は敬礼し、現場に向かった。


 


 正門。


 ・・・マグネス団長は困惑していた。遠目からでも見える魔物たちが翌朝になった瞬間、一斉に姿を消した。


 隣にいた騎士が。


「・・・逃げたのでしょうか?」


 楽観する感想にマグネスは。


「・・それならば良いのだが。・・・・引き続き、警戒してくれ。今日一日は絶対にここから離れるな。」


 騎士は敬礼した。


 ・・・他の騎士達ならびに兵士達。そして冒険者達は魔物がいなくなったのを見て安堵したのか寛いでいた。


 中には完全勝利としたと言って浮かれている者もいた。


 マグネスは。


(・・・浮かれすぎだバカもんが。・・・こんな状況で喜ぶなど。どうかしている。)


 内心舌打ちをした。


 ・・・勝利したと確信するのは魔物たちの大量の死骸を見るか敗走するのをこの目で見るかだ。


 あまりにも唐突な消失は気味が悪い。


 その時、城の警備に当たっていた騎士が来て。


「・・皇帝陛下より現状報告を聞きに参りました。」


 敬礼しながら説明した。


 ・・・マグネスは正門で起きた出来事を詳細に説明した。


 騎士は。


「・・・了解しました。皇帝陛下より何かあればすぐに伝令兵を呼ぶようにとの指令です。・・・・団長。戦いは終わったのでしょうか?」


 個人的な質問にマグネスは。


「・・・そうであれば良いのだがな。」


 何を言っていいのか分からない顔である。


 騎士は察したのか何も言わずに城に戻っていった。


 マグネスは。


「・・お前ら!気を緩めるな!!今日一日!警戒を怠るな!!」


 この号令に騎士達ならびに兵士達が敬礼した。

 

 ・・・各班が作業をしていると一人の冒険者が。


「・・団長様?そんなに目くじら立てないで?一緒に飲みましょうよ??」


 そう言いながら酒を飲んでいた。


 それを見たマグネスは。


「・・・もういい。飲みたい奴は飲んでろ。」


 呆れ顔でその場を後にした。


 ・・・それを聞いたCランクの冒険者達が一斉に酒を飲んだ。


 だが、一部の冒険者達は飲まずに兵士達の手伝いをしていた。彼らはDランク。経験浅い冒険者達だ。


 ・・・この機会に少しでも経験を積みたいと考え、行動していた。


 マグネスは。


(・・・どうやら冒険者全員がバカの集まりで無いようだ。・・・・だが、この戦力。考え直す必要がありそうだ。)


 作戦の練り直しをしていた。


 ・・・こうした出来事は帝国だけでは無い。各国でも同様に起きていた。


 王国では今までいた魔物たちが朝日が昇ると同時に消え、共和国と教会は森の中から一向に出てこない。


 勝利を浮かれる者達と警戒する者達。


 ・・・この割合は王国と共和国は三:七。教会は0:十。


 ・・・教会はアルトリネを崇拝している故に彼女の一声で動いている。





 国境線。


 太陽が中天に到達。


 ・・・午前はなにも起きずに兵士達は見張り。騎士達は定期連絡。冒険者達は基地内で遊んでいた。役割を持っている人はサボらない。当然である。


 そんな中、私とティナは正面口の外。荒れ地にいた。


 腕を組みながら考える私にティナは。


「・・・どうしました?・・・考え事ですか?」


 この質問に私は。


「・・いや、このパターン。どこかで見たというか知っているような。」


 悩んでいた。


 いつものように来ない。こんな状況をどこかで?


 ・・・ティナは。


「・・・私は知りませんから。シンスケの世界。・・・マンガではないでしょうか?」


 一つの答えに私は。


「・・・マンガ。・・・確かに。何かで見たようなものとそっくりというか。ん~~~。」


 考えていると隣から。


「・・おやおや?Aランク様はこんな時でも真面目でいらっしゃる。」


 気楽に声をかけてきたのはアルミ達だ。


 ティナは。


「・・・どうしました?・・持ち場を離れてよろしいので?」


 この質問にアルミは。


「・・はっ。魔物たちがもう来ないんだ。・・・どこにいようがあたしの自由だよ。」


 笑うアルミにミミィは。


「そうです。お姉様。・・・お姉様の力に魔物たちは諦めたのでしょう。さすがです。」


 褒め言葉に喜ぶアルミ。


 その言葉に私は。


「・・・諦める?・・・・・そう思わせて動揺を誘う。・・・まさか。」


 あることに思い当たったと同時に黒い霧が前方約二百メートルに展開。


 ・・・・そこから魔物たちが一斉に姿を現した。

 



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