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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第一章 始まりの国
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第17話 奥の手完成。







 オークキングとの死闘


 スキル`狂乱`を発動したバードスは、考えなしの突進攻撃をした。・・・オークキングは、バードスの攻撃を片手で持った大斧で防いだ。・・組み合いになるかと思いきや、バードスは、体を大きく斜め横に移動、自身の大斧を少し斜めにしてオークキングの大斧を滑るかのように走った。


 バードスは、こいつと組み合いしても押し負けるという感覚を感じ、受け流すという手段で回避した。・・・オークキングはすぐに大斧を振り上げ、バードスに追い打ちをかけようと横に振った。その攻撃に、バードスは、自身の大斧を盾のように構え、体に密着、オークキングの攻撃を受け止めた。・・・少し飛ばされたが倒れることなく少し腕がしびれる程度にすんだ。


 バードスは。


「ハハハハ!! さすがは、他の魔物共を力で支配する猛者!! たまんねぇぜ!!」


 そう叫び、大斧を振り上げ、再びオークキングと激突した。


 そこからの戦いは、一言で言えば、激戦という嵐であった。


 バードスは縦横無尽の攻撃をし、オークキングも同じような連続攻撃をしていた。・・・刃と刃がお互いの間でぶつかり、防御や回避といった行動はせず、その場から動かず、ただ武器を振り回し続ける戦いをしていた。・・・そして、その攻撃の嵐をかいくぐり、お互いの体には徐々に傷ができていった。

 

 しかし、バードスは鎧以外の部分に傷ができ血を流してもオークキングは、受けた傷をすぐに再生し無傷状態に戻る。・・・このままでは、バードスが押され、負けてしまう。彼自身もそう感じていた。・・・だが、引くわけにはいかない。


 戦いを愉しみたいから、その気持ちは半分あった。・・・もう半分はシンスケの大技が完成するまでの時間稼ぎをする気持ちであった。・・・前までの自分なら、自身が楽しければそれでいいという考えで冒険者をやっていたが。コンビを組んで魔物を狩っていく内に、背中を預けるのも悪くないという気持ちが芽生えた。

 短い付き合いだが、そう感じるほど、シンスケは面白く、強いやつだからだ。・・・そんな風に考えながら戦っていると、オークキングの後方。


 自分が最初にいた場所から。大声が聞こえた。


「待たせたな!!!下がってくれ!!!」


 その言葉と共に、大斧を渾身の力で薙ぎ払い、オークキングが少しよろめき、そのスキにバードスは後方に離脱した。


 ・・・オークキングは追撃しようとしたが、背後から殺気を感じ、振り返ったその先には、灼熱の炎が凝縮した形で作られた長刀を構えるシンスケを見た。



 バードスがオークキングと戦いを始めたとき、シンスケは刀に魔力を流した。

 

「スキル`物質変換`!」


 スキルを発動し、刀の性質を変えた。


 構成物質を鉄のまま、セリウムを組み込み、鉄と一緒に混ぜ込んだ。これによりフェロセリウムという合金ができあがった。


 フェロセリウムとは、ライターやファイアスターターという火打ち石である、高速で擦ると、三千℃の火花を発生し、可燃性ガスに引火させると火をおこす発火装置となる。


 この異世界に来て、二年の修行の中、自分のスキルでどこまでの金属を作れるのか。・・・試行錯誤していた頃、ネットで発火合金という物を見つけ、調べたときにはこれは使えると思ったが。・・・材料である金属は、ミッシュメタルとニッケルと鉄と銅とランタンとマグネシウムと鉛とスズといった種類が必要であり、この内、鉄と銅と鉛は手に入るが他の物は外国や日本の製鉄工場等にあり、市場には出回ってはいなかった。

 だが、それに近いものはないかと調べた結果、火打ち石を見つけた。


 発火石と呼ばれているが基本的には一緒の物でオイルライターに使われる物だというのがわかった。・・・これを購入し、スキル解析で調べ、セリウムという金属を知った。


 フェロセリウムを全体の五十%に変え、後の五十%は強度に優れた玉鋼に変えた。


 玉鋼は、日本刀製造によく使われる金属で、強度も保証できるものであった。・・・当然、これは市場には出回っていない代物、私がこれを解析できる機会はただ一つ、歴史博物館に行くしかなかった。・・・ネットで調べ、玉鋼が置いている場所を見つけた。


 島根県にある博物館だ。


 距離的には遠く、時間もかかるため師匠に一日ほどの休みを貰い、私の住んでいる小屋に引きこもる許可を得た。・・・・あの時はかなり無茶な要求だなと思ったが、今思えば師匠は、私が地球で何かするだろうと察して許可をくれたのだろう。・・・本当にいい師に恵まれたと感謝した。


 さて、そんな考えも目の前のオークキング打倒のために一旦考えるのをやめ、集中した。・・・本来、金属同士を融合させるのは、特殊な方法で時間をかけて作る物だが、スキルの力を使い、強引に仕上げた。


 できあがった刀は、見た目と色は変わっていないが、その構造は先ほどとは別物であった。後は、これに雷の魔術で表面を擦り、火花を生じさせた。・・・・その火花に火の魔術を加え、その勢いは更に増した。

 出てきた巨大な炎を操り、凝縮し、高熱度の炎の刀を作った。・・・長さは通常の二倍、長刀と呼ぶに相応しい形であった。


 できあがった後私は。


「待たせたな!!! 下がってくれ!!!」


 バードスに向かって叫んだ。


 それを聞いた彼は、オーキングをよろめかせ後方に下がった。・・・・オークキングは私に振り返り、突進することなく大斧を構え、警戒していた。


 それを見た私は。


「警戒するか、やはり手強い存在だ。だが、これを作った以上、お前を確実に狩る。俺の奥の手 炎牙でな。」


 私は、この炎の長刀に`炎牙`という技名を付けた。


 互いににらみ合い、そして、先手必勝の如く、私が左横した斜めの構えで突撃した。・・・オークキングはその場で大斧を右片手で振り上げ、互いの武器が激突した。


 その時、オークキングの大斧は触れた部分が溶け、最後には大斧の刃が半分に割れた。


 火花を生じたときに出た温度は三千℃。・・・その温度を保ちながら凝縮した炎牙はさながらガスバーナーをビームサーベルのように伸ばした技、それに触れれば斬られる以前に熱で溶かされるのは至極当然であった。


 武器の破損を見たオークキングは驚愕の顔をしたが、すぐに左片手を拳にして反撃しようとしたが。・・・私は、そんなことはさせないという勢いで、返す刀で大振りの右斜め上からの袈裟斬りをした。


「チェェェェストォォォ!!


 そう叫びながらの斬撃、オークキングの左肩に触れた長刀は止まることなく、体を溶かしながら斜めの状態で真っ二つにした。


 その傷口から炎が全身に広がった、その温度は、最初に放った`炎魔突き`とは比べものにならない温度で、オークキングの再生速度を上回る速さで、毛を、肉を燃やし尽くした。・・・炎が鎮火した後、残った物は、骨だけになっていた。


 勝敗は決した。私の勝利だ。


 それも、一人の力じゃない。・・・・時間を稼いでくれたバードスと情報を提供してくれた『麗剣』のリーダーのおかげだ。誰かの手を借りて難しい作業を成功させる。・・・・これこそが協力であり、人間のあるべき関係だと初めて実感した。

 特に彼女の言葉がなければどうなっていたことやら、先ほどはイラつくことをいったので怒鳴ったが、頭を冷やすと少し失礼なことをしたが。・・・謝っても遅いだろう、彼女たちを見ると、戦闘の間に一カ所に集まり、成り行きを見ていたようだ。


 かなり、唖然とした顔をしていた。・・・今更謝っても遅い、彼女たちの得物を横取りしたようなものだ、内心では怒っている違いない。


 そう考えた私はバードスの方に向かった。


「すっげぇじゃねぇか!シンスケ!あんな大技、見たことねぇぞ!どこで覚えたんだ!?」


 その問いに私は。


「・・・我流だよ。知らないのは当然。見せびらかしてもいない。」


 この答えに、バードスは`そうか`と言う顔をして何度も頷いた。


 さて、ボスを倒したなら、後は、有象無象の連中を狩るだけだが、お互いの体力もかなり消耗している。・・・・そう考えた私は、腰に付けた袋から二本の薬瓶を出した。


「こいつは、俺の知り合いが作った薬で、その名も、リボリンZという。疲労回復には適したものだ。こいつを飲んでもう一仕事するか。」


 そう言って、バードスに一本渡した。

 

 受け取ったバードスは、へぇ~~みたいな顔をして眺めた後、薬瓶を開け、飲んだ。・・・私も続いて開けて飲んだ。

 このドリンクは、地球で売っている物を購入し、薬瓶に入れ替えただけの代物。


 嘘をついたことに少し罪悪感はあるが、本当のことを言えないし、申し訳ない気持ちであった。


 飲み終えたバードスは。


「おぉぉぉぉ、すげぇぇ、疲れた体に染み渡るこの感じ、まだまだいけるぞという気持ちが湧き出てきた。いいもんじゃねぇかこれ、ありがとうよぉ、シンスケェ、こいつはたいしたもんだぜ。」


 そんなことを言いながら、両腕を振り回すバードス。


 薬の効果が早すぎじゃねぇのか、普通は、数時間はかかるはずだが、薬が効きやすい体質かと思った。・・・飲んだ私は、少し疲労感が抜けたくらいで疲れはまだあるが、動けないほどではない。


 私は、刀を慎重に鞘に収め、剣を抜き、バードスに。


「よし、そんじゃぁ、残りの魔物を狩りに行くか。」


 その言葉にバードスは、`おう`と返事をし、大斧を手に持った。

 

 私は、ちらっと『麗剣』の方を見た。・・・彼女たちはそれぞれ傷の手当てをしながらこちらを見ていた。その目は、何か言いたそうなものであった。おそらく、獲物を横取りしたことによる怒っているかもしれない。・・・普通、獲物の横取りは最初に戦った者が負傷して戦闘続行不可能の時に次の者が狩ったとしてもルール違反にはならない、狩ることができない者が弱いのだからだ。

 しかし、相手はAランクの冒険者、そんな理屈は通用しない。


 そう考えた私は、バードスと共に、早足でこの場から離脱。

 

 移動しながら私は、この後に起こるであろう騒動を予感し、ある考えをした。






『麗剣』は驚愕していた。

 

 あり得ない速度で再生するオークキングに、あり得ないほどの炎を宿した剣で討伐した冒険者に、その光景を見た四人の頭の中にあったのは、あいつは何だと言う疑問であった。

 当初は、バードスとコンビを組んでいることをギルド長が言っていたので、見てみると知らない顔で強そうには見えなかった。・・・・大方、バードスに頼んでコンビを組んだ新人だろうという認識であり、すぐに興味を失せた。


 だが、その認識は間違っていた。・・・バードスでさえ手こずっていたオークキングを、一撃で仕留めたあの男、一体何者なのか?・・・失せていた興味がわいてきた。


 すぐにでも聞きたいところだが、怪我がひどく、まともに動けなかった。・・・こちらの視線に気づいた彼は、すぐにこの場から離れた。・・・他の魔物を狩りに行ったのだろうと思い、後で聞こうと三人は思った。

 もう一人、リーダーティナだけは少し違った考えをしていた。・・・あの冒険者が何者なのかと言う疑問は、三人と一緒だが、それ以上に自分に対してのあの言葉遣いに驚き、考えていた。


 ティナのスキル`八面玲瓏`は異性を強制的に好意状態にする常時型。


 ・・・これまでにも、他の冒険者の男性に`危ないから、下がって`と言ったときは、素直に従い、その度に`美しい方の邪魔はしません`という言葉を耳にタコができる程に聞いてきた。


 しかし、彼は違った。・・・私の言葉に従わず、あのような罵声を言ってきたことに心底驚いた。本来なら、怒るところだろうが、彼女には怒るどころか妙な嬉しさを感じた。・・・なぜ嬉しいのかというと、今まで自分に罵声を言ってきた人間がいなかったからだ。・・・彼女にとってそれは、新鮮な気持ちで一杯であった。


 ティナは、そう思い、ふと胸に刻んだカキツバタの絵を見た。・・・花言葉は`幸せは必ずくる`・・・その言葉を思い出したとき、胸の中が熱くなっていくのを感じた。


 彼女は確信した、運命の相手が現れたことに。






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