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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第163話 苦悩する国々。






 共和国。


 王都。



 玉座の間。


 ルストルフォ王の前にはギルド長とブラダマンテ団長がいた。


 ルストルフォは。


「・・此度の戦い。ご苦労であった。・・早速で悪いが、魔物たちとの戦闘はどうだった?」


 この質問にギルド長は。


「・・はっ。実戦での感想は統率された動きをしておりました。明からに上級がおります。それも複数です。」


 この答えにルストルフォは。


「・・ほぉ~~?複数とは?根拠があっての事か?」


 興味津々の質問にギルド長は。


「・・・後方の魔物たちの中にムエタイコングを確認しました。・・それも二体です。」

 

 苦い顔にブラダマンテは。


「・・・私も確認しております。・・指揮をしているというよりも眺めている印象がありました。・・・おそらくですが、ムエタイコングは隊長のような役割だと思われます。」


 推測を述べた。


 ルストルフォは。


「・・・ふぅ~~~。上級魔物が隊長か。・・・悪い冗談だと思いたい。」


 頭を抱えた。


 ・・・上級魔物は強さは勿論、同種に対しての絶対命令がある。他の種に関してはその実力を示せば従うことがある。


 ・・・そんな奴が隊長?指揮していない?・・・


 それはつまりムエタイコングよりも強い魔物がいる証拠である。


 ギルド長は。


「・・・現在。冒険者達に多数の負傷者はおりますが、大半は軽症です。何人かは魔物の包囲にさらされ重傷を負いましたが。命に別状はありません。」


 報告にブラダマンテは。


「・・騎士団ならびに兵士達も負傷者はおりますが、いずれも軽傷です。・・・しかし、アナコンダの毒にやられ、戦線に復帰するには少し時間が掛かります。」


 報告をした。


 ・・・あの戦闘ではギルド長が先々攻撃をし、その勢いで一部の命知らずのバカ達が突撃。ギルド長の命令に従わず、穴が空いた場所から奇襲を仕掛けた所、魔物たちの第二陣と呼べる部隊と遭遇。

 ・・・奮戦をしたが包囲され、絶体絶命。


 ギルド長を中心に冒険者達が救出。なんとか死者だけは出さなかった。


 追ってくる魔物たちを兵士達が防衛戦を敷き、阻止した。・・・しかし、その攻撃は激しく、突破されるのは時間の問題であった。

 ・・・兵士達の後方から魔術心ならびに弓兵の冒険者達の援護で助かった。


 騎士団もブラダマンテの指揮の下、向かってくる魔物たちのみと交戦。激しい戦いの中、その間に這って現われたアナコンダの奇襲を受けた。


 ・・・数名の騎士が毒の犠牲になった。・・・幸い、近くにいたブラダマンテがアナコンダを全滅させたので被害は最小限で済んだ。


 こうした戦いが午前を過ぎ、午後を指したとき。


 突然魔物たちは森の中へと姿を消した。


 撤退したのか?そう思い、一部の兵士達と冒険者達を偵察に向かわせた。


 しばらくすると、戻ってきたのは大けがをした冒険者一人だけだった。


 息も絶えない冒険者は。


「・・ほ、ほうこく、します。・・ま、まものは、もりの、なかに、じんど、っています。・・・ほかの、ものたちは、や、やられ、まし、・・・た・・・」


 その言葉を最後に絶命した。


 ・・・この戦いはまだ終わっていない証拠でもあった。


 兵士達と冒険者達はすぐに門の前で防衛体制を敷き、いつ来ても対処できるように各自の交代勤務を実施した。


 これらの報告を聞いたルストルフォは。


「・・・そうか。まだ終わらないというのか。・・ギルド長?あなたの見解を聞きたい。・・・この戦い、勝機はあるか?」

 

 真剣な質問にギルド長は。


「・・・申し上げにくいのですが。・・・分かりません。魔物たちを指揮する存在が現われず、更にはスケルトンを見たという情報。・・・・前代未聞の事ゆえに守りに徹する以外、思いつきません。」


 悔しいのか歯を食いしばっていた。


 ブラダマンテは。


「・・・私も同意見です。」


 申し開きの無い答えにルストルフォは。


「・・そうか。すまない。今のは忘れてくれ。・・時に、貴族の連中が派遣した護衛兵はどうだ?役に立ったか?」


 この言葉に二人は暗い顔になった。


 この時点で察しがついた。


 ・・・ギルド長は。


「・・・・正直に申しますと。・・役立たずです。」


 うんざりする顔であった。




 話を聞くと、開戦前に現われたそいつらは。


「・・なんだ?なんだ?冒険者までいるのか?王都の連中は人手不足すぎないか?」

「・・全くだ。こんな連中と戦わなければならないとは。・・・これならば我々だけで充分だな。」


 などと空気を全く読めない連中が我が物顔で歩いていた。


 これに対して兵士達と冒険者達は勿論、騎士団の誰一人とて反論しなかった。


 ・・・無駄な体力は使わない。それだけである。


 そして、こいつらこそが先ほど述べた命知らずのバカ達である。


 死んだ方がいいとは思うが、それでも味方であり、一個の命である。見捨てるのは目覚めが悪い。


 ・・・救出後は。


「・・何をやっているんだ?!私に怪我をさせるとは無能どもめ!!!」

「・・・いっててて。全くだ!!怠惰にも程があるぞ!!」


 アホらしい言葉を述べていた。


 他の連中も同様に罵詈雑言。・・・うるさい事この上ないので特別製の睡眠薬を飲ませた。


 ・・・解毒剤を投与しない限りは目覚めることは無い。


 ルストルフォは頭を抱えて。


「・・・手間をかけた。・・あいつらには護衛兵達は重傷を負い、戦線復帰は無理だと私から伝えておく。」


 二人は深々と頭を下げた。


 ・・・この時、三人は`何故?あんなのが護衛兵の代表なのだ?`と同時に思った。



 余談だが、この護衛兵は戦闘訓練はしているが、初心者レベルを合格した程度。


 実際の護衛の時は領地から連れてきた兵士達に任せ、後方で指揮をしているという名のサボりである。・・一人ならまだしも今回の護衛兵達は皆、サボりである。

 ・・・そんな連中を代表として出すあたり、何を考えているのやら。


 ・・一番の可能性は優秀な成績を残したから大丈夫だろう。そんな浅はかな考であろう。





 聖人教会。


 詰め所。


 二十人は入れるであろう部屋。中央には机が置いてあるが椅子は無い。そこには五人いた。


 各騎士達をまとめる隊長四名とアルトリネ教皇。


 年配の隊長は。


「・・・報告します。倉庫街に侵入したアナコンダ集団を撃退。何匹は外に追い出すことに成功しました。・・ただ、三人ほど毒にやられてました。治療は完了していますが、動くのに時間は掛かります。現在、壁の修復を最優先で作業しております。」


 この報告にアルトリネは。


「ご苦労様です。作業している人達に無理はさせないように。」


 この言葉に隊長は敬礼した。


 続いて三十代の女性騎士隊長は。


「・・正門の報告です。魔物たちが一斉に動き出しましたが、ゴブリンやスライム。ベアーの集団だけであり、他は動いておりません。被害は冒険者達が軽傷数十名で戦うのに支障はありません。騎士達も同様です。また、確認が取れているオオカミたちの中にロックオオカミがいたとの情報です。」


 これに対して銀髪の隊長は。


「・・ロックオオカミ?・・・あの上級の?・・・だが、そいつは帝国の方にいる魔物だぞ?・・見間違いでは無いのか?」


 この疑問はアルトリネと女性騎士を除いて同意の顔である。


 ・・・帝国にいるはずの上級がどうして教会にいるのか?・・・エサが無くなったから来たというなら分かるが、それでも国境付近で警備する者達の報告にはなかった。


 女性騎士は。


「・・・で、ですが。確かにあれはロックオオカミです。・・・以前、冒険者ギルドに回ってきた魔物一覧表で確認を・・・」


 少し自信なさげである。


 アルトリネは。


「・・・この状況自体が異常です。今更常識を持ってきても仕方ない事です。・・・常に最悪の想定はするべきです。・・でないと全滅します。」


 教皇の宣言にその場にいる隊長達は平伏した。


 この態度を見れば、いかにアルトリネの人望があるかわかるというもの。


 年配の隊長は。


「・・・では教皇様。・・上級魔物がほかにもいる可能性が?」

 

 言いたくない質問にアルトリネは。


「・・・あると思った方がいいでしょう。・・我々のできる事は。これ以上、街への侵入を許してはならない。・・・魔物たちが完全撤退するその時まで、耐えなければならない。」


 苦い顔をした。


 ・・・隊長達はなにか言いたそうだが、何も言えない。アルトリネ以上の策は思いつかず、上級魔物を全部倒せたとしても終わるとは思えない。


 ・・・何故かそう感じた。






 帝国。


 王都。


 玉座の間。


 ヨルネ皇帝は騎士団長マグネスから報告を受けていた。


 ヨルネは。


「・・・つまり、被害は冒険者ならびに兵士や騎士達は軽傷で済み、その他で目立ったことは起きず、襲ってきた魔物たちもゴブリンやオオカミの集団のみで。後方に控えていた数匹の上級魔物グレートオーガは見ているだけでしたと。」


 疑問に思う報告である。


 マグネスも同様の気持ちである。・・・ここまで被害がなさ過ぎることに。どう考えても何者かの意図を感じる。


 マグネスは。


「・・・失礼を申し上げます。・・・私はギルド長が怪しいと感じております。」


 この発言にヨルネは。


「・・それについては私も同意見です。・・・しかし、証拠は無い。当人が尻尾を出すのを待つしかありません。」


 疲れ切った顔である。


 ・・・正直、ギルド長の件はどうでもいい。あんな奴は何時でも処分できる。


 しかし、今は魔物たちの対処をし、国境線の吉報を待つしか無い。


 マグネスは。


「・・・大丈夫です。父上ならやり遂げます。何しろ、あの巨大な魔物を倒したのですから。」


 誇らしげに笑った。


 ・・・これにはヨルネは苦笑いしかできない。何しろ、あの日の真実は当人達以外で内緒でおこなわれた事。


 いくら息子でも隠さなければならない。


 ヨルネは。


「・・そうですね。将軍なら基地にいる人達とともに状況を打破してくれるでしょう。」


 そう言って窓からさす月を見た。


 ・・・将軍は勿論、あの二人なら何とかしてくれる。


 そんな気がするからだ。



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