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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第161話 初戦終えて。







 私たちは基地で休憩を取っていた。


 ・・・先の戦いでの疲労は思っていた以上に大きい。他の冒険者や兵士達も疲れ切った顔で食事をしていた。


 私は。


「・・今日も来る可能性があると思うか?」

 

 この疑問にティナは考えて。


「・・・あると思った方がいいでしょう。・・・向こうはどういう策を用いるかによりますね。短期戦か長期戦か。・・・いずれにしても分らない以上無闇に考えるのは止しましょう。気が滅入るだけです。」


 そう言ってパンをかじった。


 ・・・それには同意だ。思考するにも気力を使う。・・・無駄な消費は後々響く。


 そう思いパンをかじっていると。


「・・なんだ?なんだ?・・シケた面っしやがって。・・・この程度でお疲れか?」


 空気を読まずに来たのはBランク冒険者の`狂犬`のリーダー、アルミである。


 その隣に立つ弓使いの女性が。


「・・さすがお姉様です。・・あれだけの魔物を相手にお疲れになっていないようで。・・・このミミィ。感激であります。」


 嬉しそうに呟いた。


 棒使いの女、ルーズは。


「騒がしいだけだと思うけど。・・あんたはどう思う?ドルド?」


 この言葉に魔術師、ドルドは。


「・・別に。・・私の魔術が発揮できるのなら多少は我慢できるし。・・見ていて飽きないわ。」


 そう言いながらも本を読んでいた。


 ・・・この二人は以前、Aランク冒険者の貴族のパーティーに入っていたが、ある決闘の末、あっさりと見切りを付けて去って行った。


 それからどういう経緯かアルミとミミィのパーティーに入り、今に至る。


 ・・それを聞いていた冒険者の一人は。


「・・・無茶を言うな。・・正面の方はゴブリンガーディアンやリザードマンハンターが現われて大変だったんだから。そっちはどうなんだ?・・・一匹でも上級はいたか?」


 この質問にアルミは。


「・・・ゴブリンガーディアン?・・・そいつが現われたって?・・・ちっ。こっちはそんな奴はいなかったよ。・・・ゴブリンやオオカミ、フレイムオオカミが現われただけだ。・・・雑魚どもは片付けたが。フレイムオオカミは仕留め損ねた。」


 苦い顔をした。


 何とも言えない表情で聞いた冒険者は。


「・・・そっちも大変だったんだな。・・まぁ仕方ないだろう。・・今は休もうぜ。」


 疲れ顔でへたり込んだ。



 呆気にとられたアルミは。


「・・なんだよ。・・何も言い返さないなんて。・・・気持ち悪いな。」


 そう言いながら歩いていると私たちの前に現われ。


「・・・誰かと思えばAランクの。・・そっちもお疲れのようだな?・・・指揮するのがそんなに疲れるのか?」


 挑発の言葉に私たちよりも先に側にいた剣士の冒険者が。


「・・・おい、言葉を慎め。・・・そちらのお二人がゴブリンガーディアンを仕留め、リザードマンハンター三体を相手にしてくれたのだ。・・俺たちが生きているのも`赤雷`のおかげだ。」


 怒気を込めていた。


 ・・・他の冒険者も同様の顔をしてアルミを見ていた。


 空気を悪くしたアルミは。


「・・・そいつは悪かった。・・・Aランクって一年前にムカつく奴がいたからな。・・・偏見を持っちちまった。」


 頭を掻いて謝罪した。


 ・・一年前。あの貴族冒険者か。・・・名前は忘れたが将軍の息子だったか?


 ・・私は。


「・・・気にするな。誰だってそんな噂を聞けば嫌な気持ちになる。・・・Aランクはそんなにいないからな。仕方ないよ。」


 素っ気なく答えた。


 アルミは。


「・・・っ。・・・でも、まぁ、あたしが尊敬する人には及ばないけどね。・・・・Aランクじゃ無いけど。それでも腕っぷしは強くて口は悪いが明るく気持ちの良い男がね。・・・今は帝国はいないけど。」


 自慢げに話した。


 ・・・・聞きたいとは言っていないが、おそらく何か話して気を逸らすのだろう。


 私は。


「・・そいつはいい人だな。・・さぞ、強いんだろう?」


 相づちを打つように答えた。


 アルミは。


「・・当然。あたしと同じ斧使いでゴリラと見間違えるほどの体格を持ったあたしの憧れの人だからな。」


 その時、後ろから。


「・・お姉様。・・そろそろ私たちも食事を・・・」


 そう言って弓使いが現われた。


 アルミは。


「・・っと。そうだね。・・んじゃ。そういうことで。」


 手を振って仲間達の元に向かった。


 私は。


「・・・なぁティナ?・・さっき聞いた斧使い。俺はある奴を連想した。」


 ティナは。


「・・・気が合いますね。私も同様です。」


 頷いた。


 しばらく考え込んで。


「・・・思い出した。・・・確か昔、バードスと酒場で飲んだときに聞いたな。あいつのいた村で`狂犬`と呼ばれていたって。・・・それに同調したのか。同じ斧を持つ女と馬が合っていたと。」


 悩みが取れてスッキルした私にティナは。


「・・・では最初に彼女の事で考えていたのはどこかで聞いたことがあると?・・・ですが、どうしてバードスは彼女と行動をしなかったのでしょうか?」


 この質問に私は。


「・・一匹オオカミが性に合っている。だとさ。」


 呆れた答えである。


 ・・・昔は`お前と一緒の方が戦いに事かかない`なんて理由でコンビを組んだからな。


 王国に来る前のお前は厨二病か?と。・・・その辺りは言っていないが、まぁ心境の変化は人間の付きもの。・・・とやかく言う気はない。


 ティナは。


「・・・とすると現在の彼については話さない方がいいでしょう。・・・とんでもない事になるでしょう。」


 少し汗を掻いた。


 ・・・私も同意見だ。あいつ王国で妻を取り、子を成している。そんなことを言えば王国で何が起きるのかは想像できる。


 私たちはため息をついた。


 とその時、私たちの所に兵士長が来て。


「・・失礼します。・・将軍がお呼びです。司令官室に来てください。」


 いきなりの呼び出しである。


 ・・・私たちは了承し、部屋に向かった。




 司令官室。


 私たちが入ると将軍は少し、考え込んでいた。


 私たちの姿を見て将軍は。


「・・・来たか。早速で悪いが聞かせて欲しい。・・今回の戦いはどう思った?」

 

 この質問に私は。


「・・・・正直分らない。・・今までの魔物狩りとは全然違う。・・うまく言えませんが。なんかこう。やりにくい?かな?」


 しどろもどろの答えにティナは。


「・・・そうですね。・・向こうは全く本気では無い印象です。ある程度戦えばそれで終りという感じです。・・何かを狙っているのか?それとも・・・・長期戦を狙っているのか?」


 




 魔物側。


 本拠地。


 帰還した魔物たちは各々思いで休みを取っていた。・・・それを眺めるは王とヴィルである。


 ヴィルは。


「・・・少しよろしいでしょうか?何故、魔物たちを引かせたのです?このまま押し込めばよろしいのに?」


 この質問に王は。


「・・・ヴィルよ。私の目的は各国を支配することだ。皆殺しが目的では無い。人間達に思い知らせるのだ。いくら頑張ろうと絶対に勝てない戦いがあると言うことを。・・・まず、心をへし折るべきなのだ。」


 何かを悟ったようである。


 ヴィルは。


「・・・それが王の考えであるのなら従いましょう。・・・ですが、各国の王たちも中々やるようです。特に王国では細工を施したのにすぐに対処されました。・・・破壊された壁を守るのはAランクの冒険者、それもかなりの手練れ者達です。」


 報告をした。


 ・・・王は。


「・・そうか。そう簡単には折れそうに無いか。・・・ならば長期戦をしかければいい。・・全ての王都は完全に包囲している。物資の搬入をやっていたとしても限度はある。いずれ無くなる。」


 この策にヴィルは。


「・・・とすると少し問題が。・・・共和国は半分が海に囲まれております。いざという時は海からの調達があるかと。」


 海産物による補給を示唆した。


 王は。


「・・・ヴィルよ。それを知らぬお前でもあるまい。・・既に手は打っているのだろう?」


 試すような笑顔である。ヴィルは。


「・・さすがにあなたの前では通じませんな。・・・お察しの通り。もう手は打っております。」


 笑っていた。


 ・・・・骸骨故に表情は変わらないが。




 こうして、初日からの戦いは終わった。


 ・・・現状では両者痛み分けだが、精神での勝負では魔物たちが上手である。


 何故なら、奴らは何も考えない。・・・何も感じない。ただ、暴れ、食い、寝る。それだけだからだ。


 人間のように不安や未来の想像などとは全くの無縁である。 





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