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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
186/268

幕間 四国の様子。





 時は遡る。



 王国。


 正門から離れた場所に突如現われた魔物たち。王族はすぐに緊急招集を発令。


 全兵士ならびに騎士達、そして腕に自信がある冒険者達が正門前に集めた。


 それを指揮するは盾の騎士にして団長の地位に就いたグラドである。


 グラドは。


「いいか!!ここは王都に入る門!!ここを突破されたら民達への被害は甚大だ!!総員、心して当たれ!!!」


 この号令に雄叫びが上がった。


 これから察するにグラドへの信頼は厚い。


 しかし、中年の騎士隊長は。


「・・っ!女王陛下に気に入られているからっていい気になりおって。・・今に見てろ。この戦いで私の方が優れていると照明してくれる。」


 野心溢れる発言をした。


 ・・ある意味フラグを立てて。


 ・・・正門に集める全戦力。相対するは数え切れない魔物の軍団。・・・しばらくすると魔物たちが一斉に動き出した。


 ・・・先行するはゴブリンとスライム。先鋒といった感じである。


 騎士達は余裕の顔。兵士達も楽勝の表情。冒険者達は何時もの事。それぞれ初戦の勝利を確信していた。


 ・・・だが、`ドォォォォォン!!!`


 突如、左右の方から爆発音がした。


 グラドは。


「!!何だ!?今の音は!!!?」


 この疑問は当然である。


 すぐに兵士達と一部の冒険者達が左右に別れて調べに行った。


 兵士が戻ると。


「・・はっ、はっ、・・・ほ、報告します!!!王都を守る壁が破壊されました!!」


 この報告にグラドは。


「・・な、何だと!?・・敵の奇襲か?!」


 兵士は。


「・・そ、それが敵の姿は近くにはなく。その爆発と同時に外から攻めてきました。現在、共に行った兵士ならびに冒険者達で応戦していますが、数が多すぎます!!至急、救援を!!」


 その報告と同時にもう一人の兵士が走ってきた。


「・・こ、こちら左側!!・・・壁が破壊され、魔物たちが襲ってきております!!!応戦していますが、数が多すぎます!!!」


 同様の報告である。


 グラドは、しばし考えて。


「・・伝令兵!!至急、Aランクの五人に通達を!!左右に分かれて破壊された壁の防衛に当たってくれてと!!」


 伝令兵は敬礼し、街に入っていった。


 グラドは女王との会話を思い出していた。





「・・・街に何かされている可能性があると言うことですか?」


 この質問に女王は。


「・・あくまでも予想です。・・私ならそうすると考えたまでです。・・・気にしすぎだと思いますが、用心してください。・・特にAランクのあの人達は戦力の中枢の一つ。危険だと判断した場所に移動させるように。」





 回想を終えたグラドは。


「・・オリビア女王の予想は本当によく当たる。・・・」


 ニヤけ顔でグラドは目の前の軍団に集中した。


 宿屋にいたバードス達の所に伝令兵が現われ、状況を伝えた。


 レオナは。


「・・成る程、先ほどの爆発音は壁の破壊ですか。・・・バードス?どう分けます?」

 

 この質問にバードスは。


「・・そいつは任せるわ。・・俺は暴れるだけが脳だからな。」


 斧を持ちながらニヤけ顔でレオナに放り投げた。


 ため息をついたレオナは。


「・・・では、私とバードスは右側に向かいます。・・・ルミリィとミルフィとマチルディは左側に向かってください。」

 

 この指示にマチルディは。


「・・・ちょっとまって。戦力のバランスとしては傾きすぎたと思うけど。・・そちらに魔術師を一人に付けるのは?」


 この疑問にレオナは。


「・・確かにその通りです。・・しかし、私は兎も角バードスはそういう連携を取ったことはありません。・・シンスケとコンビを組んでいても彼は接近戦が主流でした。・・・魔術師との連携は無いに等しい。・・ならば、互いに組みやすい相手と戦った方が効率が良い。・・貴女も私たちよりもミルフィ達の方が動きやすいでしょう?」


 これにマチルディは少し考えて納得した。


 そんな会話をよそにバードスは。


「・・もう終わったか?・・早く行こうぜ!!」


 いつの間にか玄関にいた。


 レオナは宿屋にいた城勤めのメイドに。


「・・ではあの子のこと。よろしくお願いします。」


 そう言って槍と盾を持ってバードスの元に向かった。


 メイドはお辞儀して部屋に戻った。


 この光景を見ていたミルフィは。


「・・バードスさんは相変わらずですね。・・では私たちも向かいましょう。」


 そう言って杖を持った。


 ルミリィも頷いて装備を確認した。


 マチルディは。


「・・・聞き分けが良いのか悪いのか。・・分らないわね。」


 自身も言っている意味が分らないくらい困惑しながら、杖を手に取った。






 共和国。



 正門に集める騎士達ならびに兵士達。そして、ギルドにいる全冒険者達が戦闘態勢を取っていた。


 ・・・ここの守りは正門だけで充分。何故なら左右は海岸が三日月のように緩やかなカーブになっていて陸からの攻撃はここ以外に無いからだ。


 騎士団長に昇格したブラダマンテは。


「・・では冒険者への指示はよろしくお願いします。・・ギルド長。」


 この言葉に突撃槍を持ったギルド長は。


「・・任せて。一匹たりとも王都には入らせない。・・・我が誇りにかけて。」


 その言葉と同時に闘気を発していた。


 ・・・これが共和国でも指折りの実力者。筋肉体質の体に冷静な判断力。長と呼ぶに相応しい。


 年齢は五十代だがまだまだ現役に活躍できるはずだった。しかし、先代が病で倒れた為に跡継ぎとして彼が指名されたのだ。


 ・・・つまり、全ギルドでも最も現役に近いギルド長である。


 ブラダマンテは。


「・・それは頼もしい限りです。・・では私は私の仕事に専念するとしましょう。」


 そう言って三叉槍を手に自身の指揮する軍へと戻っていった。


 ギルド長は。


「・・いいか。お前達!!この戦い、何時終わるか分らない!!・・・無駄な体力を使わず、守りに徹しなさい!!!・・・勇者のような行動は慎むように!!」


 一喝した。


 ・・・冒険者達は武器を天に掲げ、雄叫びを上げた。・・・と同時に魔物たちが動き出した。


 先鋒はゴブリンにゲッコーである。


 それを見たギルド長は。


「・・・さてと、ではこちらの力を少し見せてやりましょうか。」

 

 そう言って前に出た。


 襲ってくる魔物たち。・・ギルド長は突撃槍を構えた。


 魔力を込めて。


「・・・スキル`波動`!!」


 叫びとともに槍を突き刺した。


 すると、そこから見えない何かが一直線に魔物たちに向かって行った。


 ・・・それに触れた瞬間。ゴブリン達は一斉に吹き飛んだ。アニメやマンガのような吹き飛び方をして。


 見ていた冒険者は。


「・・おぉ。あれがギルド長の『猛牛』と呼ばれる所以のスキルか。・・・初めて見た。」

 

 興奮していた。


 他の者達も同様の気持ちであり、ギルド長の期待に応えるべく武器を構えた。


 ギルド長は。


(さて、先制攻撃はこれくらいだな。・・・向こうは怯える雰囲気ないし。・・・どこまで粘れるか。)


 内心焦っていた。




 教会。


 騎士団詰め所。


 ・・・アルトリネ教皇は魔物たちの策のある動きに注意しつつ、正門を守る為の指示を出していた。


 その時、詰め所に槍を手に武装した老人と三人の冒険者が現われた。


「・・教皇様。・・こ、このギルド長。・・・助太刀に、まい、参りました。・・ぜぇ、ぜぇ・・・」


 すでに息が上がっていた。


 ・・・この方は教会のギルド長。年齢は九十歳を超えているが、未だに`現役だ`と言い席を空けない堅物。


 アルトリネは。


「・・ギルド長。お気持ちは受け取っておきます。・・・あなたはとりあえず、ギルドで冒険者達に指示を出してくれれば充分です。」


 懇切丁寧にお断りをした。


 それを聞いたギルド長は。


「な、何をおっしゃるか!・・ワ、ワシはまだ、現役ですぞ。ほれぇ、この通りに・・」


 そう言って槍をブンブン振り回す。


 ・・・側にいた冒険者達は`危ない`と言いながら回避した。・・・・そして。


 ・・・・`ゴキッ!!`・・・


 ものすごい音がギルド長から響いた。


 ・・ギルド長は槍を手放し、青ざめていた。顔だけで無く全身から汗を出しまくっていた。


 ギルド長は。


「・・・こ、腰、が・・・」


 何か言おうと必死である。


 アルトリネは。


「・・・そこの冒険者の方々。・・・ギルド長を救護場所に。」


 その指示に冒険者二人は頷き、ギルド長を運んでいった。


 アルトリネは気を取り直して。


「・・では、指揮はあなたが執ってください。・・私はここで各部隊への対処をします。・・・そこのあなたは冒険者の代表として指揮を執ってください。・・・人望は伺っています。・・騎士達とともに正門の守りをお願いします。」


 騎士隊長ならび冒険者は一礼した。アルトリネは。


(・・・さて、これで現状やれることはやれた。・・後は帝国が片付くまで何とかするしか無い。)


 内心、不安を抱えつつこれからの事を模索していた時に詰め所に騎士が入ってきて。


「し、失礼します!!!魔物たちに動きが!!ゴブリンならびにベアーが進軍してきたと!!」

 

 この報告にアルトリネは。


「・・・すぐに迎撃してください!!正し、深追いはせずに守りを重点に!!絶対に街には入らせないように!!」


 この指示を出した後、次の兵士が入ってきて。


「・・・も、申し上げます!!倉庫街にアナコンダが壁を伝って侵入!!現在、騎士達が応戦しております!!」


 この報告にアルトリネは。


「・・・騎士隊長はすぐに現場に向かい指示を!!アナコンダを一匹たりとも討ち漏らさないように!!!」


 指示を受けた騎士隊長は敬礼し、兵士と共に向かった。






 帝国。


 王都。


 グリネ皇帝は大規模な魔物軍団の報告を受けて。


「・・・前線基地からやってきたのですか?」


 最悪の予想を口にした。


 騎士は。


「・・不明であります。・・・ただ、魔物たちは突然、現われまして。それも正門を囲むように配置されております。・・・とても、基地からやって来たという印象を持ちませんでした。」


 率直な意見を述べた。


 グリネは。


「・・すぐに騎士団ならびに兵士達に正門の守りを固めるよう指示を!!冒険者ギルドにも通達を!!戦力を出し惜しみするなと厳命!!・・エッジソン隊も動ける機体は全部出すようにドワーフ達に!!!」


 その命令に騎士は敬礼し、去って行った。


 その時、グリネの所に執務官が現われ。


「・・失礼します。ゴルトール将軍からの通達です。・・`魔物たちは未だに姿を見せず。`とのことです。」


 この報告にグリネは。


「・・・ということは突破された訳ではないのですね。・・・執務官。こちらの事情は一切将軍には伝えないように。」


 この指示に執務官は。


「・・しかし、それでは王都が。」


 焦る執務官にグリネは。


「・・・だからこそです。・・・今、将軍が基地から離れることになればあそこの守りは誰がするのです?・・・それに、この王都には将軍の息子であり、騎士団長のマグネスがいます。」


 その言葉に執務官は安心した表情をした。


 

 騎士団詰め所。


 ・・・そこには各部隊を指揮する騎士達とギルドの代表であり、基地に行かなかったBランクの冒険者が集まっていた。


 ・・・そして、身長百八十センチ。黄色のフルプレートを身につけ左胸には家紋が刻まれており、同じく家紋が刺繍された黄色のマント。・・・大型の剣を背負った二十代後半の若者が入ってきた。


 彼は騎士団長マグネス。


 ・・・ゴルトール将軍の息子にして歴戦の戦士にも負けない程の実力と人望を持った将来有望の騎士。


 マグネスは。


「・・・状況は聞いている。・・魔物たちは正門から離れた場所に展開。何かを待つように待機していると。現在、騎士団ならびに兵士達が正門に集まって戦闘態勢を取っているとも。・・・他の所では見かけていないのですね?」


 この質問に騎士隊長は。


「・・・はっ!王都周辺の壁を徹底調査しましたが、魔物の姿を確認されておりません。・・また、城壁ならびに街への被害はありません。」


 短的に述べた。


 マグネスはしばし考えて。


「・・・ご苦労様です。では我々は正門を守ることにしましょう。城壁の上には少数の兵士達を配置し、何かあればすぐに知らせるように。・・・各部隊に通達。余計な攻撃はせず、防衛にのみ徹せよと。」


 この指示に騎士隊長は。


「・・・防衛ですか?失礼ながら申しますが。我々にはエッジソンがあります。あれを使って派手に暴れれば魔物たちも撤退するのでは。」


 この進言は他の者達も同様である。


 圧倒的な力を見せれば逃げるのは魔物の本能である。


 マグネスは。


「・・今回の魔物たちの動きがおかしいことは知っているだろう?そんなことをしても無駄だ。・・・こちらの気力が落ちるだけだ。」


 その言葉に隊長達は沈黙した。


 ・・・魔物たちの行動が異常だというのはこの場にいる者達は誰もが知っている。


 マグネスは。


「・・それと冒険者の方。あなたには全冒険者の指揮をお願いします。」


 中年の冒険者は。


「・・私でよろしいのですか?・・ギルド長に何も相談なく?」


 当然の疑問にマグネスは。


「・・・正直言うと。ギルド長は信用できない。・・・先の冒険者達への異例の依頼。そして、今回の魔物たちの出現の時期。あまりにもタイミングが良すぎる。・・・通じているかも知れない。」


 この言葉に全員絶句した。


 つまり、ギルド長が魔物側についたということだ。


 考え込む者達にマグネスは。


「・・無論、証拠はない。あくまでも状況証拠だ。根拠は無い。・・・皆もこの話は他言無用で頼む。・・・これ以上の不安はさせたくない。」

 

 沈痛の表情をしながらも全員敬礼した。


 ・・・こんなこと言う必要はないのに。にも関わらず言ったのはここいる人達を信用しているということだ。


 マグネスは。


「・・よし、では作戦会議を始める。」




 一方、帝国ギルドでは。


 ギルド長がワインを片手に。


「・・ついに始まったな。・・では私も時が来たら・・・くっくっくっ・・・」


 笑いながら飲んでいた。


 

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