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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第160話 荒れ狂う戦闘。






 何とかゴブリンガーディアンに勝利した。


 ・・・体への負担はそんなにない。手強い相手だが、倒し方さえ分かれば何とかなる。


 その時、後ろにいた剣士が。


「・・・ありがとうございます。・・・助けていただいて。」

 

 御礼の言葉に私は。


「・・・助けるのは当然。この戦いはなるべく戦死者を出さないようにしなければ、これで終りだとは思えないので。・・・まぁ恩に感じるのなら、騒動が終わった後に酒をおごってくれれば良い。・・それまでは死なないでください。」


 これに剣士は。


「・・・・ははっ。参りましたな。これでは迂闊には死ねなくなりました。・・分りました。その時は最高の酒を約束します。」

 

 そう言って前戦に向かって行った。


 私はそのまま同じ方向に向かっていった。




 ティナは前戦で戦う冒険者達に。


「・・・これより指揮は私が執ります。文句のある人は聞かなくてもいいです。」


 簡潔の言葉に冒険者達は。


「・・・おおっ!!戦乙女様が我らの為に!!」

「・・これで我らの勝利は約束された!!」

「・・我らに栄光を!!」


 その叫びと同時に冒険者達の動きが良くなった。


 ・・・むしろ、力が漲るかのような印象さえもある。


 ・・・スキルの影響を百%、受けているようだ。


 ティナは。


「・・では、前衛の方はそのまま防衛戦を。迂闊に攻め込もうとしないように。・・後方の方は魔物たちの後方。遠距離をおこなう者を重点的に攻撃。・・・魔物たちが退くまでの持久戦。・・無茶をしないように。」


 この指示に冒険者達は。


「「「はい!!喜んで!!」」」


 良い返事をした。


 ・・・前衛の冒険者達は盾を前に出し、何人も通さない壁を作った。襲いかかるゴブリン達の攻撃は効かず、剣や槍で反撃。

 ・・一体ずつ確実に仕留めていった。


 魔物の後方にいる弓を構えたゴブリン達を同じく弓を構えた冒険者達によって阻止した。


 このままいけば、かなりの数のゴブリン達を仕留めることができる。内心、喜んでいる冒険者達。しかし、その思いは露と消えた。


 ここでリザードマン達が動いたのだ。


 ・・ゴブリン達はそれを見るや道を空け、左右に分かれた。・・・向こうでも階級みたいなものがあるのか?と思うくらいの行動である。


 ティナは。


「・・・リザードマン達は勿論、ゴブリン達も注意を!!・・奴らが戦いを止めることはありません!!!」


 この号令に冒険者達は勢いよく頷いた。


 ・・・そして、戦いはリザードマン達が中央から攻め、左右からゴブリン達が奇襲する戦法に変わった。


 ・・冒険者達は迫り来るリザードマン達の動きを臨機応変に対処していった。


 ティナは槍から放たれる炎で左から攻めてきたゴブリン達を一掃。・・・遅れてきた私は回収した鎚で土の槍をトゲ地獄の如く発動し、右側のゴブリン達を串刺しにした。

 ・・・リザードマン達もただやれるわけではない。


 ・・・攻撃の合間をついては冒険者に重傷を負わせていった。


 その時、リザードマンハンターを三体現われた。


 さすがにまずいと感じ、私とティナで対処した。・・・槍と鎚を捨て、剣で迎撃をした。


 リザードマンハンターも応戦していたが、前の奴よりも積極性がない。・・・むしろ、何かを調べるかのような立ち振る舞いである。・・・相手の力量でも測っているのか?


 こちらとしては好都合。・・・調べると言うことはある意味油断しているということ。


 この隙に倒そうと考えた。


 ティナも同様な顔つきで戦っていた。



 ・・・激しい戦闘。・・・魔物と人間の怒号が交差する。だが、そんな戦いも長くは続かない。



 ・・・太陽が中天に達したとき、魔物たちが一斉に後退した。


 それはさながら引き潮の如く。


 これを見た冒険者が。


「・・・た、助かったのか?」


 疲労の顔が全面に出ていた。


 ・・・他の冒険者達も同様の顔でその場にへたり込んだ。


 それを見た兵士長が。


「・・・動けない者はいるか?・・・大丈夫なら下がってくれ。基地に食事が用意してある。」


 その言葉に冒険者達は引き摺るかのように基地に向かっていった。


 それを見ていた私とティナの所に兵長がやって来て。


「お二人もお疲れ様でした。・・・しかし、どうして急に魔物たちが引いたのでしょう?」


 この疑問に私は。


「・・・向こうも食事休憩かな?」


 あり得る事象にティナは。


「・・・考えられますね。・・魔物も私たちと同じ生き物。・・食事は必須です。しかし・・」


 続きを言う前に兵士長は。


「・・それではまるで人間ではありませんか?・・・今までの経験では魔物たちが襲うのは高揚している状態が多いのです。その大半は食事を終えてからの行動です。・・・そして、時間も昼頃からやってくるのが日課でした。・・・ですが、最近では襲ってくるのは、朝方。夜には偵察に来る始末。・・・これだけでも驚きなのにあの動き。・・・恐怖を感じる以外ありません。」


 そう言って体を少し震わせていた。


 ・・・人間。有り得ない事を目にすると考えるよりも先に恐怖が走る。


 何故なら、理解できないからだ。


 ・・・分っていることなら例え、妙な行動をしていても範囲内で理解し、対処もできる。・・しかし、あまりにも有り得ない行動は範囲を超えすぎてどうすればいいか分らず立ち往生。・・・頭が考えを放棄し呆然となる。


 ・・・今回の魔物たちの動きはまさにそれである。


 だが、私には心当たりがある。


 ・・・将軍からの話では魔物達と行動を共にしているスケルトン。


 奴が指示を出している可能性がある。・・・指揮系統がうまく機能すれば統率が取れ、最高の動きができるからだ。


 私は。


「・・・色々考えなきゃいけないことはあるが。・・今は休息にしましょう。・・・休めるときは休めないと。」


 強引に話を終わらせた。


 兵士長は。


「・・・そうですね。・・・その方がいいですね。・・では私はこれで。」


 敬礼して去って行った。


 私たちも基地内に入っていった。





 司令官室。


 ゴルトール将軍は今回の報告書を見て深いため息をついた。


 側にいたシェヴルは。


「・・・将軍?・・どうされましたか?何か飲み物でも。」


 心配の声に将軍は。


「・・・いや、大丈夫だ。気を遣わせてすまない。」


 気遣いは無用のジェスチャーをした。


 ・・・シェヴルは不安な気持ちである。


 将軍が何か悩んでいるのに何もできない自分に・・・。


 ・・・これから察するに彼女は将軍に恋心を持っている。


 十五の時、初めてお姿を見た時に感じた胸の高揚。・・・恋をしたと感じたのだ。しかし、将軍には妻がおり、子もいる。

 ・・・家族関係が悪化しているのなら付けいる隙はあるだろうが、次男以外とは良好で幸せな生活だ。


 そんな中に入り込むなどできるはずが無い。


 ならば、お側で働ける立ち位置になればいい。


 ・・・その為に彼女は鍛錬と勉学を励み。・・・将軍の補佐官という最高の職に就くことができたのだ。


 これ以上の幸福は無い。


 そんな考えをよそに将軍は。


「・・・本当にすまない。私のような仕事人間に付き合わせてしまって。・・君も本来ならいい出会いがあってもいいだろうに。」


 まるで見透かしたような発言にシェヴルは。


「・・そ、そんなとんでもない!!私の幸せはすでに果たして・・・」


 言いかけの言葉を呑んだ。


 ・・・・少し赤面して。


 将軍は何かを感じたのか。


「・・そうか、もう出会いはできたのか。・・・ならば尚更、早くこの戦いを終わらせなければな。・・・恋路を邪魔する魔物どもを懲らしめなければ。」

 

 何故か一人納得し、妙に元気になって仕事に取り組んだ。


 それを見た彼女は。


「・・・そうですね。頑張りましょう。」


 メガネを`クイッ`と上げながらどこか残念というか肩透かしを食らったような顔である。





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