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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第159話 国境線の戦い その二。








 国境線の戦いは始まった。


 ティナは冒険者達に。


「あなた達は柵の向こう側に向かってください。・・・魔物たちを柵から越えさせないように迎撃を!!向こうが引いても追撃せず、防衛に徹してください!!」


 この指示に冒険者達は。


「「「仰せのままに!!!!」」」


 そう言って武器を構えて突進した。


 その姿はさながら飢えたイノシシの如く。


 私は。


「・・・あんなで大丈夫か?」


 心配する私にティナは。


「・・大丈夫でしょう。少なくとも私の指示に従ってくれているようです。」


 指さす方向を見た。


 ・・・冒険者達は柵を越えて数歩先に陣を構えた。


 近接戦が得意な冒険者が前に出ており、遠距離が得意な冒険者が後方で構え、魔術師の冒険者は魔術をすぐに使えるように杖を構えていた。


 ・・・そして、その後ろには数名の冒険者達が腕を組んで眺めていた。


 私は。


「・・・実力はないが、経験はあるようだな。・・これならしばらくは大丈夫かな。」


 感心するように呟いた。


 リーダーに実力がない事に不安しか無かったが。全てが無能と言うことは無かった。


 ・・・己の武器と戦術を理解し、最善な立ち位置で構える。経験があってこその賜だ。


 地球でも、例え才能や頭のデキが乏しいと言われても、辛抱強く働いていけば。・・・何をしていいのか?・・・どう動けばいいのか?頭で考えるより先に体が動く。

 ・・・デスクワークは頭を使うイメージがあるが、動かしているのは手だ。


 書くべき事さえ頭に入っていれば、文章打ちは自然にできる。


 ・・・ずいぶん前に`挫けない男達`という番組を見て思ったことだ。・・私は挫けてしまったがな。




 話は逸れたが。


 アホなリーダーに我慢して、生き残る方法をしているようだ。


 私は。


「・・・それじゃ。俺たちも行くか。・・ここにいてもやることは無い。・・俺は前戦で戦ってこそ役に立つ。」


 歩き出す私にティナは。


「・・・私も同じです。・・・いくら指揮を任されてもやることは変わりありません。・・・それに、シンスケの隣で戦いのです。」


 少し赤面していた。


 ・・・嬉しいことを言ってくれる。そんな期待に応えるべく、向かって行った。




 ・・・冒険者達は魔物の動きを見ていた。


 数は圧倒的に向こうが上。だが、姿を現してから動くこと無くこちらを見ている。・・・正直、不気味な光景だった。


 しかし、魔物の後ろから。


「・・・・ヤレ。」


 人の声がした。


 一瞬、なんで?と思ったが、魔物たちが襲ってきたので棚上げにした。


 最初に来るのはゴブリン達だ。・・個体としては弱いが、徒党を組むと厄介。


 近接戦の冒険者達は盾を構え、来るのを待っている。・・・下手に突っ込んでしまったら周りを囲まれる危険がある。

 

 背後を取られたら殺される末路しか無い。


 ゴブリン達は持っている棍棒や短剣で攻撃してきた。・・・しかし、横一列に並んだ冒険者達の盾を突破することはできずに阻まれ、返り討ちにあった。


 中には抵抗するゴブリンもいたが、横からの槍攻撃で撃沈。


 後方でそれを見た冒険者が。


「・・・ふん。所詮は雑魚魔物。私の敵ではないな。・・このままいけばあのお方は私の物に・・・」


 妙な妄想を浮かべていた。


 それを聞いた冒険者が。


「・・何を言うか!?あんな攻撃しただけでいい気になりおって。・・・所詮、命令だけで成り上がった存在だな。」


 鼻で笑った。


 その冒険者は。


「・・ふん。・・どんなことでも勝ちは勝ち。嫉妬してないでそちらも働いたら?・・・ちなみに私は頭脳専門でな。・・・戦いは彼らに任せているのだ。」


 そう言ってマントに汚れが無いかチェックしていた。


 これを聞いたもう一人の冒険者は。


「・・頭脳専門?・・そんな奴が冒険者などをして稼ぎになるのか?私は違うがな。指示を出しつつカバーできない所があれば即座に片付け、この剣で美しく戦うのみ。・・あぁ、私のような者こそあの美しい人の側に相応しい。」


 うっとりした表情で妄想を口にした。


 それを聞いた冒険者が。


「・・何をバカ事を言っているのか。・・私こそが美しい彼女に相応しい男だ。」

 

 愚かで意味の無い会話をしていた。


 ・・・前戦では命をかけて戦っているというのにこの余裕。


 自分に実力があるのではなく、理解していないからだ。・・・だが、前戦で戦う冒険者達は何も言わない。


 何故なら意味が無いからだ。


 どんな忠告をしようとも`口出しするな`だの`無能は大人しく働け`だの。


 自分を棚に上げるようなことをし続けた。


 ・・・どんな人間でも一度や二度の失敗はある。・・・誰でもだ。


 それをしてしまった時に大事な事は失敗を無かったことにするのでは無く、失敗した後どうすれば改善すればいいのか。


 それを模索してこそ人は成長する。


 ・・・大きくやる必要は無い。例え一%の試みでもやることには変わらない。コツコツやってこそ価値がある。

 だが、それを理解せず、失敗したことを他人のせいにする輩はいる。


 ・・・精神的に弱い人間であればそれをしてしまうだろう。


 しかし、やってしまった後に後悔し、反省し、変えていこうとする行動力があれば挽回はできる。


 ・・・それでもやろうとせず、延々と他人のせいにする奴はハッキリ言って期待は無い。


 言う時間すら勿体ない。


 ・・・他人からの意見や忠告を聞き流す。こういうのを馬耳東風という。


 当然、そんなことわざを知らない冒険者達は黙々と前のみ戦っていた。・・・頭上から降ってきた魔物に気付くことは無く。


 ・・・バカな言い合いをしている冒険者達の左側から黒い大きな影が現われた。


 それを見上げた冒険者達は絶句した。


 ・・顔はゴブリンだが、三メートルはあるであろう巨体にでかい棍棒を持っていた。


 ・・・`何故?`と理解する前にゴブリンが振り落とした棍棒によって冒険者達は潰された。


 その光景を見た魔術師が。


「・・ゴブリンガーディアン。・・何故、こんな所に。」


 怯えだした。


 ゴブリンの上級魔物が突然現われたのだ。・・・震えるのは当然。


 だが、弓使いの冒険者は。


「・・狼狽えるな!!こいつは火に弱い!!魔術で燃やすんだ!!」


 この叫びに魔術師達は一斉に杖を構えた。


 それを見たゴブリンガーディアンは突進した。狙いは魔術師達。


 ・・怯える魔術師達の前に複数の盾と剣を持った冒険者達が立ち塞がった。・・・前戦から離れるのは痛いが、上級魔物である以上。警戒はこっちの方が上である。


 ・・・剣士は。


「・・・時間を稼ぐ!!今のうちに・・」


 言い切る前にゴブリンガーディアンが棍棒を振り下ろした。


 ・・・直撃コース。避けることも防ぐこともできない。


 ・・終わった。・・・目をつむる剣士。


 ・・しかし、いつまで経っても終りが来ない。恐る恐る目を開けると。


 ・・鎧を着た男が棍棒を剣で受け止めていた。・・その姿には見覚えがある。ギルドでよく見かけるAランク冒険者。・・・`赤雷`であると。




 ・・・間一髪である。


 冒険者達が戦っている戦地に近づこうとしたとき、あのアホリーダー達が意味の無い会話をしていた。


 関わる気もないのでほっとこうと思って遠回りしようとしたとき、上からでかいゴブリンが降ってきた。そして、一瞬のうちにリーダー達が死んだ。


 ・・・驚く私にティナは。


「・・あれはゴブリンガーディアン。・・・ゴブリンの上級魔物。・・異常な防御力と耐久力を持っている難敵です。」


 説明してくれた。


 私は。


「・・・とすると、弱点はないのか?」


 疑問に持つ私にティナは。


「・・確か、火に弱いと聞きます。しかし、弱い火では倒せません。全身を覆うくらいの炎でなければ無理です。・・慣れた冒険者達は大量の油を使ってゴブリンガーディアンを燃やします。・・それがなければ、魔術師の魔力を全部使わなければなりません。」


 説明してくれた。


 これに私は。


「・・なるほどな。ありがとう。・・ティナはあのアホ達の代わりに前戦を頼む。・・俺はゴブリンガーディアンを相手にする。」


 この提案にティナは。


「・・・そうですね。今のあなたなら、遅れを取ることはありません。・・気をつけてください。」


 そう言って前戦に向かって行った。


 私はゴブリンガーディアンが魔術師達に襲いかかるを見て、手に持った鎚を思いっきり投げた。


 回転する鎚はゴブリンガーディアンの背中に命中。一瞬怯んだ。・・その隙に`雷人招来`を発動。・・・間に入る為に走った。


 ・・・一撃を受け止めた私は手強いと感じた。


 ・・・この巨体に相応しいほどの重さ。小手調べをしている場合では無い。


 私は魔力を込めて。


「ふぅ~~。炎魔剣!!」


 剣から勢いよく火が燃え上がった。


 それを見たゴブリンガーディアンは後退した。どうやら感じたようだ。あの炎は危ないことに。


 私は。


「・・・よくやってくれた。後は俺に任せろ。・・・あなたは魔術師達の護衛をお願いしたい。」


 この言葉に戦士は。


「・・・分かりました。・・このお礼はいずれ。・・・」


 そう言って下がっていった。


 私は炎の剣を構えてゴブリンガーディアンと相対した。・・・敵は警戒しながらも構えていた。逃げるつもりは無いようだ。


 ・・・睨み合う両者。


 動いたのはゴブリンガーディアンだ。


 ・・・先ほどとは比べるまでも無い速さで棍棒を振り落としてきた。


 先手必勝で勝負を付けてきた。私は冷静に剣を左脇構えで待った。


 迫り来る棍棒に私は。


「チェッッッッッストォォォォォォォ!!!!」


 勢いよく薙ぎ払った。


 ・・・ヒヒイロカネで作られた剣は今までよりも高温で切れ味を増している。棍棒がいかに斬れにくかろうとこの剣の前では無力。


 `スパァァァン`


 ・・棍棒は真っ二つ。ゴブリンガーディアンは一瞬驚いたが、すぐに気を取り直して左拳を振り落とした。・・・私はそれを斜め右後ろで回避した。


 ・・・戦い慣れている。だが、早々に決着を付けたいのはこっちも同じだ。


 下がった瞬間、すぐに迎撃した。狙うは左足。ゴブリンガーディアンはまだ体勢を立て直していない。・・その隙をついた。


 ・・・私はゴブリンガーディアンの後ろにいた。


 当然、左足を斬って。・・左側に傾き、倒れた。傷口から炎が燃え上がった。勝負はついた。


 しかし、ゴブリンガーディアンは私に振り向き、襲いかかる。


 死なば諸共の覚悟。


 私はその覚悟に敬意を表し。


「・・・炎と共に成仏せよ。」


 供養の言葉を言い、炎の剣でゴブリンガーディアンの首を斬り落とした。




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