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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第156話 始まりの日。






 翌朝。


 徹夜での作業が終え、目が重く、睡魔が襲ってくる。


 ティナは。


「・・・本当に大丈夫ですか?・・何でしたら私が将軍に・・・」


 そう言ってくれた。


 ティナ自身も私を心配してかあまり寝ていないようだ。


 私は。


「・・大丈夫だ。夜明け前に何とか終わったから、大体一時間くらいは寝れた。」


 空元気に答えた。


 ・・・こんな夜通し作業は会社時代に嫌というほど強いられた。


 当時、終わらなかった作業の為に残業しようとしたが。


 ・・・上司が`残業代を出すのがもったいない。`という理由から会社に残るのはダメだった。


 家に持ち帰り、私の資料と`これもやれ。`と強制的に渡された資料を片付ける作業。・・・その中には他の社員がしていたが中途半端な形でこっちにきた。


 当然、できなければ私のせいにされる。


 あんな理不尽な作業に比べればこんな物はむしろ楽しんでやれる。


 私は。


「・・それにこんな時の為に用意したチョコがある。・・これを食べれば・・」


 二、三回噛んで呑み込んだ。


 ・・・しばらくすると脳が沸騰するかのように巡り、体が生き生きと脈動する感じになってきた。


 ・・・ある意味ヤバい感じになった私は。


「・・・きたきたきた!!!!ドクンときた!!・・・今日の仕事に支障は無い!!」


 高揚状態になった。


 傍目から見ると危ない薬に手を出した廃人である。


 ティナは。


「・・本当に大丈夫ですか?」


 心配と同時に哀れみのある瞳である。


 私は。


「・・大丈夫だって。・・さぁ行こうぜ。何か進展があるかもしれない。」


 そう言ってテントを出た。


 ティナも続くように後に付いていった。




 司令官室。

 

 ゴルトール将軍は目をつむりながら椅子に座っていた。


 私たちの姿を見ると。


「・・・すまなかった。こちらの都合とは言え、急な休みを与えて。」


 申し訳ない顔に私は。


「・・お気になさらずに。こちらも有意義に過ごせました。・・所で、王都から冒険者が多数来たとか?」


 この質問に将軍は。


「・・ああ、全く何を考えているのか。・・・ギルド長からの指令と異例の賞金で吊られた連中がやってきたのだ。・・・こちらは人数が多くなればそれだけで動きにくいというのに。・・・この件に関する抗議文を送ったら。。。。返ってきたのが`私は国の為に最善を尽くしました。`だとさ!!・・・私も皇帝陛下も王都にはそれなりに戦力を残したいというのに。」


 苛立ちに机を叩く。


 ティナは。


「・・残す?・・・王都に何か異変が起きると?」


 この質問に将軍は。


「・・可能性としてはな。・・・君たちも知っているだろう?この戦線の異常さ。どう考えても策を感じる。・・念のために戦力を大幅に削らないようにしていたのだがな。・・・あのアホのせいで。・・ふぅ~~一応、戦力のバランスという名目で何十人かの兵士を王都に戻した。・・・昨日やってきた一部のバカ冒険者どもが`腰抜けかよ`と悪口を言う始末。・・・混乱しか与えないのか。あいつは。・・」


 かなりの苛立ちである。


 私は。


「・・?将軍は、あのギルド長をご存じで?」


 この質問に将軍は苦い顔で。


「・・あぁ。・・奴は先代の皇帝時代からの冒険者だ。・・・元は貴族出身で己の武力と評価のみを求めていた。理由は邪だが、仕事熱心だったのは事実。・・・実力主義の帝国にとってはまさに模範と呼ぶに相応しいくらいの男だった。・・だが、先代皇帝が前戦を退き、戦いに関しての積極性が無くなった頃。過去の功績からギルド長になったのだが。・・その時、奴は変わった。・・仕事をしていても昔のほどの熱心さはなく、武力を示すことも無く。他の貴族同様の権力にすがりつく始末。・・・先代皇帝の行事が変われば、示し合わせたように変わった。・・私のような頑固者は今の帝国にどれだけいるか分からん。」


 懐かしそうに語った。


 私は。


「・・・と言うことは。今回の件もギルド長の権力に関わる何かですか?」


 話を聞いてある可能性を言った。


 将軍は。


「・・・それはない。ヨルネ皇帝は冒険者を募集したがあくまでも数を均等にする為だ。君たちのように実力のある者は秘密裏に交渉して基地に来てもらい、それをカモフラージュする為に募集した。Cランク以上にしたのも経験はもちろんだが、腕に自信がない奴が来ては困るという意味合いでもある。・・実際、参加したときの報酬金もたかがしれている。普通の仕事をした方が危険が少ないほどの。・・それをあいつが台無しにした。・・・来ているCランクの中には明らかに使えない奴がいるほどに。」


 この苛立ちに私は。


「・・・?Cランクでもこの国ならそれなりに実力があるのでは?」


 この質問に将軍は。


「・・・威張り散らすだけだ。・・言うなれば役立たずが後方で指揮をする名目で戦いには参加せず、前戦で戦う冒険者を使って功績を挙げているだけ。・・・パーティーでの仕事達成は全員に等しく与えられる。・・・君にも経験は無いのか?」


 これに私は考えた。


 確かに、バードスと組んだときもあいつに合わせる感じでランクが上がった。・・・クラーケン討伐も同じく、二人揃ってAになった。・・・そういう仕組みか。


 ティナは。


「・・・しかし、前で戦う冒険者はよく納得しましたね?・・そんなことをし続けたらやめるはずですが。」


 この疑問に将軍は。


「・・・何人かはやめている。しかし、やめたとしても新しい奴をいれればいいだけ。中には弱みを握られて無理矢理のやつもいると話を聞くが、大半が借金返済だからな。・・・強くは言えない。」


 呆れた顔である。


 ティナは。


「・・では、今回の増援は役に立たないと考えてよろしいのですか?」


 話を戻すように尋ねた。


 将軍は。


「・・その通りだ。兵士達には一通り教えろと通達しているが、効果は無いだろう。・・昨日のような愚者が出る確率は高い。・・・その時になったら、絶対に軽率な行動は慎め。・・我々の戦いは勝てねばならん。」


 真剣かつ威圧を込めた言動。


 私は。


「・・・無論です。・・しかし、人命を可能な限り守ることも大事だと俺は思います。」


 負けない位の威圧で答えた。


 ・・・ティナも同様である。


 ・・・冷たくなる空間。・・・第三者がいれば卒倒しかねないほどに。


 しばらくの睨み合いの中、将軍は。


「・・・ふぅ~~・・・そうだな。私としたことが。・・・命を落とす覚悟を持った冒険者とバカな事を考える冒険者を見過ぎて、一番大事なことを忘れていたようだ。・・・だが、可能な限りだぞ。・・お前達まで巻き添えで死んだら意味が無い。」


 最後の部分は反論は揺るさんという意思を感じた。


 私は。


「・・勿論です。・・俺は俺のやれるだけの事をやるだけです。」


 ティナも頷いた。


 将軍は。


「・・よろしい。では二人には正面の前戦で戦って貰う。左右の方は気にするな。こちらもできる限りの手は尽くした。・・・簡単に言えば、柵や投擲機を増やしたぐらいだ。・・・あそこは高低差があるからな。いざというとき正面の援護にも回せる。」


 説明してくれた。


 ティナは。


「・・分かりました。では私たちはこれで。」


 一礼して退出した。


 私たちは廊下を歩いて目的の場所に。






 一方。


 

 帝国。王都。


 玉座の間。


 ヨルネ皇帝は頭を抱えていた。


 ・・・ギルド長からの勝手な行動。


 ・・・本来なら厳罰に処置したいが状況が状況。・・強くは言えない。


 だが、このまま何もしないのは王族としての面目も無い。・・・不本意だが、冒険者が問題を起こせばそれだけで処罰ができる。


 己の暗い影を見ながら物思いにふけっていた。


 その時、騎士が慌てて。


「・・はぁ、はぁ。・・も、申し上げます!!!王都の正門。約三十メートル付近に突如、魔物の軍勢が現われました!!!」


 最悪の結果が起きてしまった。





 共和国。王都。


 玉座の間。


 ルストルフォ王は謁見を申し出てくる貴族達の対応をしていた。


 ・・・内容は自分の沽券や税についてばかりのつまらない内容である。


 その時、兵士が慌てて入ってきて。


「・・・え、謁見中に失礼します!!!・・王都の正門から約五十メートル付近より、突如、魔物の大軍が現われました!!!」


 この報告に貴族達は驚きの顔をしたが、ルストルフォ王だけは`やはりか`という確信の顔をしていた。






 教会。本部。


 最上階。


 アルトリネ教皇が枢機卿と数人の騎士達とともに書類整理をしている最中に騎士が慌てて入ってきて。


「・・も、申し上げます!!!教会の入り口付近の森から突如、多数の魔物が出現!!その数は不明であります!!!」


 驚きの顔をするが平静を保っているアルトリネ。







 王国。王都。


 玉座の間。


 オリビア女王はアルフォンス宰相と話していた。


 ・・・内容は、調査漏れが無いか?戦力のバランスはどうか?という聞く者が聞けば戦争でも起こすような会話である。


 その時、騎士が慌てて入ってきて。


「・・し、失礼します!!!王都の正門から約五十メートル付近より、突如、魔物の軍勢が現われたとの報告が!!!」


 静かに状況を考える宰相。


 オリビア女王は。


「・・・・遂に来たと言うことですね。」


 まるで予知したかのように呟いた。




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