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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第154話 地球の交渉事。






「働く?・・・私はそちらにも利になるように動いたつもりだが、何かご不満があるのですか?」


 少し気持ちが高ぶった。


 ・・・私がやっていたことに何か気に入らないことが?あれだけの品々を提供したのに。と少し怒りを感じた。

 しかし、相手はかなりの手練れだ。


 ・・・こちらが少しでも油断すれば食われる。


 あっちでは力があれば生き残れるがこっちでは知での駆け引きが重要。


 その辺りは区別しなければ負けてしまう。


 黒田は。


「・・いえいえ。不満所か満足を超えています。貴方がもたらしてくれた品の数々は各大手企業に恩恵をもたらしてくれました。調査した成分から完全とまではいかないまでもそれに近い性質を作ることに成功し、落札品は今でも重要素材として保管しているそうです。・・・まぁ、中には素材を少し使わなければならない所もありますがね。・・・それを差し引いても好評な事に変わりありません。・・・更には海外からの発注も来ている所もあります。・・まさに革命。・・まさに新たな改革と言っても過言ではありません。」


 大げさに宣言した。


 何か芝居掛かっているな。・・・自分に酔っている印象を受ける。


 私は。


「・・・それならば今まで通りの関係の方がいいでしょう?俺にとってもお金さえあれば充分なので。」


 率直の気持ちを伝えた。


 ・・正直、世の中がどう動こうが知ったことでは無い。


 ・・あの日、社会の現実に絶望し。逃避行するかのように田舎に引っ込んだ。


 あの本がなければ今頃世捨て人のように田んぼで野菜を何も考えずに栽培していただろう。


 黒田は。


「・・ふふふっ。それこそこちらにとっては好都合です。私の所で働けば。手数料は無料。オークションで落札した金額を全額支払います。・・更にはちょっとした仕事をしてくれればその分の時給を支払います。時給五千円。・・・これ以上の高待遇はありませんよ。」


 詐欺師のような笑みを浮かべた。


 だが、詐欺では無い。・・確かに待遇は良い。


 ・・・社会での時給平均は約一千二百~一千五百。・・・残業代や時間外労働を入れ、そして、税金や保険を差し引いて約二十五万の収入が一般的とされている。


 ・・何故、これを知っているかというと。


 会社時代に働いたときにあれだけ働いたのに得られる給金があまりにも少なかった。


 月給が約二十万。・・・おかしいと思い、パソコンを使って徹底的に調べたら、私の給料が天引きされていることに気付いた。


 すぐにでも訴えようと思ったが、社会に味方が一人もいない私に手を貸してくれそうな者はいない。


 ・・・例え、こちらが正しかろうと間違いを支持する多くの人の声が正しいと認識され、私は間違いを言う悪者にされる。


 ・・多数決。


 ・・・多くの信頼を勝ち取った者が正義を語れる。


 ある意味納得であるがある意味理不尽。


 ・・・これでは悪党が支持を集めればそいつが正義として君臨し、罪なき者が汚名の烙印を押される。


 世の中の闇が表に出たような表現だ。



 話は逸れたが、それ故に黒田の提示した金額は魅力的で断る理由はどこにも無い。


 ・・・本来であれば。


 私は。


「・・・ちょっとした仕事というのは、あっちでの物品を多く入荷し、あなたの部下を何人か派遣する事で?」


 この質問に黒田は。


「・・その通りです。・・・楽な仕事でしょう?」


 更なる笑みを浮かべた。


 確かに楽だ。魔方陣とやり方を教え、あちらにある豊富な資源を持って帰ること。


 私にとってこれ程のホワイトな案件は無い。


 私は。


「・・・確かに魅力的で素晴らしい話です。これ程の提案は他には絶対に無いでしょう。」


 この言葉に黒田は笑みが深くなった。


 勝利を確信した表情。


  だが。


「・・・ですが、お断りします。・・・俺にとってもあそこは理想の場所。存在を知ったからこそ今の俺ができた。・・・例え、何人かの人が向こうに行って資源を持って帰っても。今は大丈夫だろうが。将来的には枯渇する可能性がある。こっちの人達は強欲で容赦ない。・・・例えとしては不適切かもしれませんがオイルショックのような事態になりかねない。」


 この例えに黒田は息を呑んだ。


 ・・・オイルショック。


 ・・・一千九百七十年に起きたとされる事件。


 原油価格の高騰により、類似する全ての製品が値上げ又は数が少なくなり、買い占め騒動が勃発。更には強制的な節電命令により、施設の営業や一部機械が停止したりと様々な取り組みがおこなわれた。


 ・・オイルショックの原因は戦争や革命が起きたとされているが、私に言わせれば輸入がいつもより少なくなったという印象がある。


 高騰の原因も数が少なくなったから値上げしますという理由が大半である。


 ・・・鶏が病気になったから大半が殺傷書分になり。その結果、卵や肉が高くなった。


 その事から、現在の異世界の鉱石や魔物の素材は豊富だが、数年後には多くの地球人がやって来て根こそぎ奪っていく光景が容易く目に浮かぶ。


 そうなれば、今までの事が上手くいかず、やがて大規模な戦争になる可能性がある。


 ・・・今のままの方がいい。・・・出品する数は少なくとも、それを無駄にすること無く使い、調査し、近い物を作る。


 発想と転換こそが人類に必要な事だと私は思う。


 ・・まぁ難しく考えたが、要は私の居心地の良い場所を奪うな。が本音である。


 ・・それに私の勝手な思い込みで、友達を死なせてこともある。・・もう嫌だからだ。


 黒田は。


「・・・成る程。一理ありますね。・・・数が少なくなればそれだけでこちらの批判が高まることは目に見えます。・・・しかし、それであなたが私の所で働かない理由にはなりません。・・・制限を掛ければいいだけですから。」


 諦めない顔である。


 ・・・さすがは支配人。利があると思えば一歩も引かない。


 私は。


「・・・ご尤もです。・・しかし、俺は表社会に嫌気が差した身。・・・こちらの社会に足を踏み入れたのは俺にとって利害があると考えたからです。・・・どこかに入る気はありません。・・例え、黒田さん達を敵に回しても。」


 決意を込めて宣言した。


 ・・・待遇が良くなろうと関係ない。私は狩人としての生活をする。


 ただそれだけだ。


 黒田はしばし考えて。


「・・・どうやら決意は変わらないようですね。・・分かりました。この件、潔く引きましょう。・・ですが、今後とも取引はお願いしますよ。」


 黒田は勘定を手に取り席を立った。


 私は。


「・・・割り勘しますよ。」


 そう言って財布を取り出そうとしたら。


「・・いえいえ。こちらからのお誘いです。礼儀をするのは当然です。」


 そう言って会計場に向かった。


 ・・・私も後を追うように席を立った。


 店か出ると。


「・・またのお越しをお待ちしておりますニャン♪」


 ・・・来ることはもう無い。


 店の前には黒塗りのロールスロイスが止まっており、運転手が立っていた。


 黒田が近づくと扉が開き。


「・・・では私はこれで。・・・頑張ってください。」


 一礼した。


 私も一礼したら車は発進した。


 ・・・しばらく見た後、私は。


「・・・さてと。・・これの研究もあるからどこか落ち着ける場所に行くか。・・そして夜中には戻らんと。」

 

 呟きながら歩いた。




 ・・・黒田は目を閉じていた。


 先ほどのやり取り、提案を断れたことに腹が立たないと言えばウソになる。


 ・・・かなりの待遇を蹴る行為には度胸がいる。・・・だが、これが初めてでは無い。


 名のある資産家や大企業の社長との会談で断られることはある。・・・それ相応の経験を積んでいるからこその対応と冷静さを持つ。

 ・・・でなければ支配人は務まらない。


 一度でも感情をむき出しにすれば即座に追放される。風評を流され、二度と職に就くことは無い。あるいは事故に見せかけて口を封じられるか。


 ・・・裏の社会は儲かるがその分リスクが高い。


 秘密を知る者は誰であろうと容赦はしない。・・・黒田の代わりなどいくらでもいる。


 黒田は。


(・・・ふむ。感情的に動くかと思っていたが案外冷静だったな。・・・向こうでも似たような事でも経験したか?・・・いずれにしても取り込むことが不可能になったのは痛い。客達の要望に応えることができなくなった。)


 ため息をついた。


 四本腕のゴリラの剥製以来。


 客達から。


「・・・次はゴブリンを!・・できれば生きた物がいい!!」

「・・私はスライムだ!・・・本当に水だけなのか知りたい!」

「・・ドラゴンが欲しいけど。・・・無理なら次に凄いサイクロプスかオーガとか欲しい!!」


 異世界の魔物を要求してきた。


 これには黒田もかなりの苦労と知恵を絞って対処した。


 ・・・客の要望は`生きた生物`


 ・・・かつて自分が言った言葉がそのまま返ってきた。今なら彼の気持ちも分かる。


 そんな物を持ち帰ってどうするんだ?・・ただでさえ、地球の動物の飼育だけでも手こずる事があるのに。

 ・・・ここで異世界の生物の飼育など混乱以外何もでも無い。


 ・・死んで剥製なら使い道はある。研究だってし放題。素材の剥ぎ取りも思う存分にできる。


 死んだ生物は何もしないから。


 黒田は。


(・・・まぁいい。その分、客達の要望を抑える口実ができた。・・取り込もうと取り込まないと。必ずメリットとデメリットがある。・・・メリットになるように動くだけだ。)


 これからのことを考えながら黒田はしばしの仮眠を取った。







 異世界。


 魔物の本拠地。


 ヴィルは王の側で。


「・・・各準備は整いました。・・・後は、号令を待つのみです。」


 王はにやりと笑い、魔物たちにあることを告げた。


 

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