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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第152話 目的の場所。







 私は二時間かけて到着した。


 大きな鳥居が立ち、正月になれば参拝客が大勢押し掛ける。今はチラホラといる程度だが、それでもよく来る人はいる。


 ここは引洋神社。


 この街では有名な寺だ。


 ・・・広さは大体、学校のグランド並みでお守りやお札、破魔矢。どこの寺でも売っている物があるが、ここには他にはない物がある。


 それは陰陽道の歴史館。


 ・・・平安時代。陰陽師が大勢いた時代の中で腕の立つ陰陽師がいたとされている。当然、京都にも似たような場所がある。

 ・・・ここの人は弟子を多く取り、後世に伝え残すことを使命としていたとされている。


 だが、今では陰陽道の知識のみで実際の力は全くないに等しい。しかし、私なら資料から読み取り、習得することができる。


 ・・・・・かもしれないしそうかもしれない。


 ええい。やってみなければ分からん!!人生。挑戦精神が大事だ!!!


 神社の中を散策。


 寺や道具を置く小屋、祭祀殿、事務所、販売店があった。


 肝心の歴史館が見当たらないので事務所に聞いてみた。


「・・すいません。ここに陰陽道の歴史がある歴史館があるはずなんですが?」


 この質問に窓際にいたメガネを掛けた中年男性は。


「・・・・ん?あぁ、目の前に祭祀殿の中に入って地下に続く階段があります。そこが歴史館になります。・・・入館料は無料です。どうぞ、ご自由に見学してください。」


 営業スマイルで答えた。


 ・・・地下が歴史館とは随分と変わった場所だな。私はお礼を言い、地下へと向かって行った。



 祭祀殿から入り、地下に続く階段の上の表式には`陰陽道の歴史`と書かれていた。


 下りると薄暗い明かりしか無くどこまで下りるのか分からない深さだった。



 ・・・到着した感覚は地下五階分の感覚である。


 秘匿している主張だろうか?そう思いながら周囲を見た。


 広さは敷地の半分ぐらい、明かりは天井から吊されたランプのみ。薄暗い印象だが全然見えないわけではない。肝心の資料はガラス張りで展示されており、絵巻や古文書など古い物ばかりだ。

 ・・・当然のことだが、そう思いながら見ていた。


 中々に興味深い、陰陽道の五芒星や使役していたという使い魔の種類。護符による文字の種類。・・・この辺りが知りたい物だった。


 その時、背後から。


「・・いかがな?陰陽道の歴史は?」


 すぐに振り返った。


 そこには白いヒゲを生やし、白い着物を着た七十代の老人が立っていた。


 気配を感じなかった?あの階段は木製で音がかなり鳴る。・・・しかし、鳴っていない。ここに最初からいた?


 いや、周りを見たが誰も居なかった。


 困惑していると老人は。


「ほっほっほっほ。・・・まさか、こんな所に来るとはな。サボる場所としては好都合だったのが、仕事するしかないか。」


 笑いながらヒゲを触った。


 ・・・なんだ何処かに隠れてサボっていただけか。確かにここはうってつけの場所だな。


 私は。


「・・・あまりサボりすぎると追い出されますよ?俺はここで調べ物をしに来ただけだから何も言いませんよ。」


 そう言って調べを再開した。


 その様子を見た老人は。


「・・ほっほっほっほ。お主の調べ物はここでは得られないだろうよ。・・・力を持つ者よ。」


 その言葉に驚き振り返った。


 ・・・なぜ?という疑問に老人は。


「・・ここでは何だ。上がって茶でも飲もうぞ。」


 そう言って階段に向かって行った。


 ・・・私は警戒しながら上っていった。


 老人に案内されたのは寺の中、すれ違う僧が。


「・・これは住職。そちらの方は?」


 住職はにこやかに。


「・・ワシの客だ。茶を出してくれ。」


 この言葉に僧はすぐに何処かに向かって行った。


 私は。


「・・住職さんでしたか。」


 驚きであった。


 住職は。


「・・ほっほ。見た目で分からないか?それとも職に対する態度か?」


 見定めるような目である。


 私は。


「・・職に対する姿勢です。」


 これに対して住職は。


「・・ほっほ。まぁ当然だな。今の世の中では。」

 

 そう言って歩き出した。



 ・・・部屋に到着、中は机と座布団のみ、他は何もなかった。


 住職を座り、私は対面するように座った。そこに僧がやって来てお茶を出した。


 置いた後、一礼して去って行った。


 住職は。


「・・さて、お主の疑問だが。ワシにも似たような力があるから大体分かるのだよ。と言ってもお主ほどの力は無い。微々たるものでな。・・・相手の力を測るぐらいしか分からん。」


 茶をすすった。


 私は。


「・・ということは、住職さんの前の人は俺、いや、私のような体験を?」


 この質問に住職は。


「・・うむ。お主の言う体験かどうかは知らんが。・・・まぁ、違うと言っておこう。・・その昔、この神社の創始者である陰陽師様が異なる世界で修行をしたという言い伝えがある。その習わしから代々ここの僧は修行に励んでいる。そして、見込みある者がいた時はその者を住職とし、創始者の遺産を守ることを使命としている。・・・が、もう一つ言い伝えがある。もし、遺産に相応しき使い手が現われし時。その者に力を貸せともな。」


 茶をすすった。


 私は。


「・・それでは、地下に最初からいたというのは?」


 この疑問に住職は。


「・・いや、サボっていたのは本当だ。地下でうたた寝していたらすごい力を感じてのとっさに隠れたのだ。・・・ワシ、小心者だからな。」


 薄ら笑いをした。


 サボっていたのは本当か。住職がサボるのはどうかと思うが。


 私は。


「・・それで?話はそれだけではないのでしょう?・・さっきの遺産について話したのなら・・・」


 続きを言う前に住職は。


「せっかちじゃぁのぅ。これだから今の若い者は。・・・まぁ、茶を飲んでからにせい。」


 その言葉に私は茶を一気飲みした。


 ・・苦い。抹茶かよ。


 住職は。


「本当に忙しないのぉ。・・では行くとするか。お主の話も聞きたかった。だが、話してくれそうに無いからなのぉ。」


 残念そうな顔である。


 ・・・異世界の事など話せるわけ無いだろう。気付いてる連中はいるが、あくまでも噂程度。本気信じているのか怪しいレベルだ。


 ・・・私が連れて行かない限りは。


 住職は席を立ち、私も付いていった。



 歩くこと三分。


 中庭にある倉庫に到着。


 ・・・南京錠が掛けられているが住職が懐から鍵を取り出し開けた。中は暗く、窓も無い。完全な暗闇に埃っぽい。

 住職が先に入ると何やらゴソゴソという音がした。


 しばらくすると天井から明かりがついた。


 ・・・旧式のランプ。まさに昔のまま保存している感じだ。・・・倉庫の中は色んな木箱が置かれていた。何かいらない物を置いている印象が強く、とても大事な物が置いているとは思えん。


 しかし、住職の仕事に対する姿勢で全く気付かなかった。・・・ここも似たような理由だろう。


 そう思っていると住職は。


「・・すまんが、ここの木箱をどかしてくれんか?・・年故に重くてな。」


 指さす方向には人一人簡単には入れる木箱が置かれていた。


 私は納得し、木箱を右横にずらした。かなり重いが鍛えられた肉体の前では無意味に等しい。


 何の苦労も無くどかした。


 住職は。


「・・・ほっほ。さすがに鍛えられているのだな。こうもあっさりとは。・・・さて、行くとするか。」


 そう言って床板の一部を外した。


 ・・・すると、思った通り地下に通じるはしごがあった。住職に続いて下りていった。



 そこも暗いが住職がいつの間にか持っていたランプが照らされた。


 私の目の前には横幅が広い箱が置かれていた。・・・棺桶みたいである。


 私は。


「・・まさか、ここに創始者の遺体。が、あるとか?」


 恐れながら聞くと住職が。


「・・・だとしたらどうする?」


 にっこりと笑った。


 ランプの光で恐怖の笑顔に見える。


 私が`ぞっと`すると住職が。


「・・・ほっほっほっほ。冗談じゃ。・・・そんな罰当たりなことはせぬ。・・・ここには刀が置かれているのだ。・・・創始者様が使われていた刀がな。」


 そう言って箱を開けた。


 ・・・中には見るからに立派な鞘に入った刀があった。しかし、形が微妙に違う。今まで見てきた打刀とは違う。太刀に近い物である。


 住職は刀を取り出すと鞘から抜いた。


 ・・・その刃文は美しく波が繊細に写し、刀身は光で輝き一切の曇りが無い。柄の部分もややほつれているが劣化している印象は無い。


 ・・・これが平安時代からの刀?・・・現代で作ったといっても通じるほどである。


 住職は。


「・・ほっほっほっほ。見とれているようだな。ワシも最初はそうだった。あまりにも美しくての。何故、世に出さないのか疑問だった。・・・先代の話ではこれは世に出してはならぬ業物。かの創始者様が異なる世界の技術と見たことも無い石、そして自らの陰陽道の力で作られたと言い伝えられている。・・・納得のいく説明だとは思わぬか?」


 笑いながら言った。


 私はその美しさに奪われかけるのを防ぐように説明してくれた。私は気を取り直して`解析`をした。


 ・・・・素材はアダマンタイトに光石。


 ・・・光石?聞いたことが無い。


 私は。


「・・・陰陽道と言っていましたが。どの辺りに力が?」


 この疑問に住職は柄の部分を取った。


 すると本来、銘があるはずだが。・・・梵字になっていて読めなかった。


 住職は。


「・・・陰陽道における魔除けの文字だそうだ。一説では淡い紫色に光り、物の怪を一刀のもと斬り伏せたという。・・・ワシにはそんな力はない。・・・・だが、お主なら。」


 そう言って柄を元に戻し、私に差し出した。


 ・・・無言で受けてとり、魔力を込めた。ここまで案内してくれたのだ。お礼はしたい。


 ・・・すると、柄の部分に熱い感覚が走り、それと同時に刀が淡い紫色に輝いた。


 住職は。


「・・・おお。伝承通りの光が。・・・ああ、ワシの代で見れるとは・・・・ありがたや。」


 涙を流しながら手を合わせた。


 私は魔力を流すのを止めると光が消え、住職に返そうとした。


 だが、住職が。


「・・持って行きなされ。創始者様の遺産。そなたにこそ相応しい。」


 何やら悟りきった顔である。


 ・・・本来なら貰うのが礼儀だが、私は。


「・・・いいえ。これは寺の象徴です。私が持って行っていい物ではありません。私が欲しいのは陰陽道の力の源である文字だけです。それを教えてください。・・・あともう一つ。これを持って行ったら銃刀法違反で捕まります。」


 最後の部分は苦笑いで答えた。


 住職はキョトンとしたが。


「・・・ほっほっほっほ。そうじゃったな。今の世では持ちにくいだけであるな。・・分かった。梵字の書かれた書物を提供しよう。」


 そう言って刀を受け取り、鞘にしまい、木箱に入れた。


 私は。


「・・できれば貸す形でお願いします。」


 この願いに住職は頷いた。


 私たちは地下から出て、書物を取りに向かった。



 ・・・こうして、力の一端を手に入れることができた。しかし、この時までの私はこれから起きる想像以上の大きな戦いが待っているとは思わなかった。





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