第147話 朝の戦闘。
慌てた兵士に私は。
「・・三カ所同時?!・・種類は?!」
この質問に兵士は。
「・・はっ。・・東側はゴブリンの亜種とオーガ。正面はリザードマン。西側はファイターモンキーです!!!」
簡易的に説明してくれた。
ティナは。
「・・・私たちの配置については?」
この質問に兵士は。
「・・・はっ!・・お二人には正面のリザードマン達の対処をして欲しいと。・・・朝食は現場で用意しております。・・すぐにお越しください。」
急かす兵士に私は。
「・・分かりました。すぐに装備を整え、向かいます。」
鎧や武器に手を伸ばす私に兵士は。
「・・・では自分はこれで。」
敬礼してテントから出た。
私たちは着替えている時にティナは。
「・・・聞きましたね?・・私たちはもう行きます。・・あなたは絶対に出ないように。」
ベッドの下にいるゴブリンは顔を出して頷いた。
・・鎧を着用し、武器は日本刀と剣。それと鎚を持った。何が起きるか分からない。主要武器は温存したい。
ティナも同様に鎧と剣二本。後、一文字槍を持った。
・・・鎚と槍にはある魔石が組み込まれている。鎚には土。槍には火。それぞれの属性を付与している。・・・だが、実戦で使うのはこれが始めてある。
・・・練習で素振りしたが、扱いづらい。だが、四の五の言っている場合では無い。
・・・この二つ以外で魔石を組み込んだ武器は無い。
・・何故なら、この武器に付ければ強くなるかもと実験したからだ。・・・要するに遊び心で製作した物だ。こんな形で使うとは、世の中、どう動くか分からない。
ティナは。
「・・こちらの準備はできました。・・何時でも行けます。」
この言葉に私は。
「・・こっちも終わった。・・・早速、行こう。・・待たせるのも悪い。」
少し急かすように行動した。
正面口に到着した私たちを待っていた兵士は。
「・・お待ちしていました。・・こちらに簡易ながら食事があります。・・食べ終えましたら、すぐにこちらに。」
そう言って用意されたのがパンとスープ。
・・・私たちは一分で完食した。集合場所に向うと、そこには冒険者達が集まっていた。
その前に立つ兵士長は。
「・・それでは状況を説明する。・・現状、魔物たちは柵や罠に引っかかり、足止めている。兵士達、ならびにエッジソンが各所に二体ずつ配置されている。・・・君たちは援護に向かい、魔物達を基地内に入れないように防衛。相手が逃げるまで粘る。・・以上だ。仕事に掛かってくれ。」
号令とともに扉が開いた。
・・そこは戦場のまっただ中。
・・・兵士達の慌ただしい叫びや魔物咆吼が飛び交っていた。
・・しかし、魔物たちは、大量の柵や即席の槍投げ機に翻弄され、前進できていない。
私は。
「・・どうやらティナの進言は通ったようだな。・・・しかし、何故これだけの魔物たちが一斉に?」
この疑問にティナは。
「・・・最もですが、今は目の前の事に集中しましょう。」
そう言って持ち場に就いた。私も`それもそうだ。`と思い、武器を手に配置に就いた。
・・・冒険者達もそれぞれの武器を構え、所定の場所に就いた。
・・・リザードマン達は攻めあぐねていた。
王の話では人数が少なく、例え、兵器があろうと突破できると。・・・所が、人間達が柵や投擲機を用意し、近づけないように戦っている。
・・・これでは西側にある施設を襲撃する囮作戦ができていない。
その時、リザードマン達の上級、リザードマンハンターは何かを待つように静かにしていた。
・・・私たちが所定の場所から、遠距離攻撃を開始した。
弓を持った冒険者達が一斉に発射。リザードマン達は岩陰に隠れて回避した。
・・・その時、剣を持った冒険者が。
「・・よし!!奴らは怯んだ!!このまま一気に討ち取る!!・・俺に続け!!!!」
叫びながら突進した。
・・・それに続く命知らずのバカども。
私は。
「・・バカヤロウ!!!何も考えず突っ込むな!!!今回の戦場は異常だ!!!」
叫んだ。
・・・しかし、行ってしまった連中には届かなかった。大半が突進し、残ったのは私とティナを含む後方支援に長けた冒険者達と兵士達。
年配の兵士が。
「・・くそ!あの連中は!!・・・全員!!防衛を固めろ!!これ以上の被害を出すな!!!」
そう言って陣形を組んだ。
ティナは。
「・・行ってしまった者達はどうするのです?!」
焦る彼女に兵士は。
「・・・残念だが、もう手遅れだ。・・・見ろ。ヤバい奴のお出ましだ。」
指を指した方向には冒険者達が一人ずつ倒れていった。
ロングソードを持ったCランク冒険者は妄想していた。
・・・この戦いで目立ち、功績を挙げれば、B所かAになることが可能である。・・・帝国にはAランク冒険者がいるが、そいつらは王国にも認められている。
・・・冒険者の代表と呼ぶに相応しい実績と実力。そして、礼儀作法を持っている。
・・・王都で働いていたときに街で一方的に見たが、誰に対しても丁寧口調。一切見下すこともしない。詐欺まがいの事をする商人がいれば説教の後、摘発。
・・・正直、ムカつく。あんな偽善者のような振る舞い。見ているだけでイラつく。
・・だが、Aランクである以上、何も言えない。何もできない。そんな無力感があった。
しかし、基地からの防衛依頼が来たときチャンスだと感じた。・・・俺の実力を見せつけることができる。しかも、Aランクの二人も来ていた。
・・神が自分を選んでくれたと実感した。
何故なら、俺がどれだけ強いのか見せつけることができるからだ。
・・・弓矢と投擲機の攻撃でリザードマン達が怯んだ。最高のチャンス。剣を掲げ、号令の声を上げ、突撃した。
後ろからAランクの制止する声が聞こえるが、どうでもいい。
・・・現に、俺に続く冒険者達がいる。臆病者はそこで震えて見ていろ。
小馬鹿にする思いで突っ込んだ。
・・・その時、岩陰からリザードマン達が武器を振り上げ、応戦してきた。だが、すぐに迎撃できた。・・・いける。そう確信したとき、岩陰から何かが出てきた。
小さく、見えなかった。気にすることは無いと判断し、目の前のリザードマンに目を向けたとき。
・・・・空が見えた。・・・`何故?空が?`と思った。場面が空から岩壁。そして、地面を見た。・・・何故、体が動かない?・・・転がるように動き、止まった時。・・・俺の体が首の部分から血飛沫を上げて立っていた。
それが終わるとゆっくりと倒れた。・・・`ああ、そうか。・・・斬られたのか。`・・・第三者を見るような感じで、視界が黒くなった。
・・小柄のリザードマンが次々と冒険者をナイフのような剣で切り裂いていった。
首を両断する一撃必殺を。
兵士が。
「・・・リザードマンハンターが出てきたか。」
舌打ちをした。私は。
「・・・あれがリザードマンハンター?・・・通常よりも小さいようですが。」
この質問に兵士は。
「・・見るのは初めてか。・・・上級と言えば、通常よりも大きいというイメージがあるが。例外がある。・・・小柄になることで動きが素早く、目にもとまらぬ速さと特異な能力。・・・厄介なことこの上ない。」
説明してくれた。
ティナは。
「・・・どうしますか?・・私としては生き残った人達の救援に行きたいのですが。」
そう言ってきた。
・・・いつの間にかリザードマンハンターの姿がない。残った冒険者達はリザードマン達の襲撃に苦戦していた。
兵士は。
「・・・ダメだ。・・・将軍からは防衛に徹せよとの命令だ。・・・それに、あれは突撃した連中の責任だ。」
どこか冷めた表情である。
・・・戦場では命令無視した者は助ける価値なしの判断だ。
だが、私は。
「・・・・・悪いな。俺もその類いだ。」
そう言って鎚を手に、突進した。
止めようとする兵士にティナは。
「・・・これが私たちのやり方です。」
そう言って槍を構えて走った。
・・・目的は冒険者達の救出。・・リザードマン達の戦闘が始まった。