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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第一章 始まりの国
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第15話 元凶現る。








 

 魔物の騒乱が始まって、三十分ぐらいは経過しただろうか。


 当初、冒険者側と魔物側の数は、魔物の数が上。・・・魔物の質もこれまで戦ってきた中でやや上の実力を有していた。・・・冒険者側が苦戦を強いられると予想されていた。


 しかし、現在、双方の数は冒険者側がやや上といったところまで、魔物の数が減っていった。

・・・その理由は、連携の差。

 魔物側は基本的に本能で戦う生き物、我先に冒険者に戦いを挑むものが多く、無鉄砲が如く、突進を繰り返していた。・・・一方、冒険者側はパーティで戦うことが多く、仲間内での連携は呼吸をするがの如く攻撃と防御を繰り返していった。

 ・・・この連携をするかしないかによって戦況を大きく覆すことは、常識と言っても過言ではない。


 だが、冒険者側の被害が皆無というわけではない。・・・魔物の攻撃という名の波にのまれ、連携が崩れ、負傷、又は死亡している。


 まさに一進一退、この繰り返しであった。


 その攻防も、冒険者側がやや優勢になってきたため、この騒乱の勝者は冒険者側であると後方で補給と救護を担当していた新米冒険者達は思った。・・・しかし、この時、新米達は忘れていた。


 この騒乱の元凶と精鋭部隊がまだ健在であることに。




 魔物の達を多く狩りまくったシンスケは、一つの疑問を抱いた。


 当初、魔物の数を見たときの記憶を思い出していた。・・・報告にあった魔物の中で一種類だけ確認が取れていない魔物がいることに気がついた。

 それは、オークだ。・・・身長は約三百㎝もあると言われている魔物に気がついていないなんて、とんでもない失態であった。

 

 私は、すぐに隣にいるバードスに聞いてみた。


「バードス!・・この戦いでオークの姿を見たことはあるか!?」


 この問いにバードスは。


「いや!見てねぇ!あんなでかいの目立つはずだが、全く見ねぇ!!」


 バードスも驚いたように声を上げながら周りを見た。

 

 まさか、私は嫌なことを考えてしまった。・・・魔物の基本行動は本能で動くこと、多少理性があるような動きをするが、それでも本能に従って獲物を狩るというのが冒険者の常識であった。

 しかし、もしオークキングと呼ばれる魔物が強さだけでなく、理性も兼ね備えているとしたら。


 そう考えた私はバードスに。


「バードス。今からでも遅くはない、体力を温存しておけ。・・スキルも今は使うな。」


 この言葉にバードスは。


「ん? なんでだ? 魔物の数も減ってきている。オークの姿は見えないが、誰かがもう討伐したんじゃねぇのか?」


 もっともな意見だが、私はそれを否定した。


「いや、オークが出てきたのなら、そこが騒ぎになっているはず。なのにそんな騒ぎも悲鳴もない。ということはオークはまだ健在で、どこかに隠れて出てくるタイミングを待っているんだ。」


 バードスは不思議そうな顔をした。


「?・・・オークはそんな知能がある魔物じゃねぇぞ、力押しで戦うのが奴らのスタイルだ。いくら何でも考えすぎじゃねぇのか?」


 バードスは世間一般的な答えをしてきた。

 しかし、私がそれに反論する前に、森の中から雄叫びが聞こえた。




 その場にいる全ての動きが止まった。


 生死をかけた戦いであるにも関わらず、冒険者も魔物も森の方向を見ていた。・・・そこから何かが出てくることが確定しているかのように。その時、大きな足音が森の中から聞こえてきた。・・・しかも複数、足音がどんどん大きくなりその正体が全ての者達の目に入った。

 

 全長約三百㎝もの体格、太った腹は肥満体だが鍛えている印象がある。・・・両腕はかなりの筋肉質でゴリラの倍はある。足は短く体を支えて動くだけの役割で足技を使う感じではない。・・・そして、その顔はイノシシの顔そのものであった。

 

 オークだ。・・・・それも二十頭ぐらい、いるんじゃないかという数であった。だが、その数よりも目を疑うものがその後方にいた。・・・全長約五百㎝はあるんじゃないかという体格、全てにおいてその場にいるオークの倍はある印象、右片手には人間が両手持たなければ持ち上がれないサイズの両刃の大斧を持っていた。

 ・・・まさにオークを束ねる魔物、オークキングの登場であった。




 冒険者達は、その姿と数に戦慄が走った。


 魔物達は、恐怖のあまりその場に立ち尽くした。


 私は、その数を見て`やはり`と感じた。・・・オーク達がこのタイミングで出てくることに、冒険者達が魔物達相手に戦い、疲労がきているであろうこの時に魔物達にとっての切り札が出てきたのだから。

 

 だが、この状況で戦う意思が残っている冒険者達は少なからず存在していた。・・・例えば、隣にいるバードスは、オークの姿を見た直後すごい笑顔で斧を握りしめている。

 その姿に私は安心感を得た。


 ・・・・背中を預けられる相棒がこの戦局でも戦う気になっていることに。私も深呼吸をし、改めて両手の剣と刀に力を入れた。


 私はバードスに。


「・・・行くか、バードス。」


この言葉の意味を理解したバードスは。


「あぁシンスケ、俺はいつでも行けるぜぇ。」


 満面の笑顔で答えてきた。

 

 私は冒険者以前に狩人として、オークを狩る仕事と覚悟を決めた。


 その時だ、オークキングの咆哮が平原全体に轟き、オーク達も雄叫びをあげながら突進してきた。・・・それを見た冒険者達は条件反射で構え、魔物達もその大声に正気を取り戻し獲物を狩る行動を再開した。


 状況は、魔物側が優勢になっていった。

 

 オークの参入により、冒険者達の負担が大きくなったからだ、通常、オーク一匹に五人がかりで挑まないと勝てない言われる魔物。・・・それが二十匹ぐらい、さらに他の魔物もいる。

 冒険者にとってこれほど苦しい戦いはない。・・・そう考えた私は、バードスと共にオークを迎え撃つことにした。この戦局を覆すには強い魔物を一匹でも多く討ち取る必要があるからだ。


 私は、三匹のオークがいる所に向かった。


「まずは、あの三匹を仕留める。手を貸しくれ、バードス!」


 この指示にバードスは、喜びの顔で頷いた。

 

 三匹のオークの持っている武器は丸太並みにでかい棍棒であった。・・・私はそのうちの一匹を相手にした、オークは私を見るや雄叫びを上げながら左片手で棍棒を振り落とした。・・・真正面に走った私はそれを右横に躱し、右手に握った刀に雷を宿した。


「雷光閃!」


 逆胴を打ち込むが如く、右横一文字にオークの左腹を切り裂いた。

 

 オークは悲鳴を上げたがすぐにこちらに振り向き、棍棒を右斜め下に薙ぎ払った。・・・それを私はバックステップで躱した。・・・顔に当たるギリギリの所であった。


 すぐに体制を立て直し、左手の剣に炎を宿し。


「燃え盛れ!」


 剣を突きの型でまっすぐ伸ばし、切っ先から炎が火炎放射の如く放った。

 

 それを受けたオークは、体中が炎で燃え盛り、消そうと体を左右に振ったが消えることなく。・・・私はその隙をついて上段構えで刀に炎を宿し、


「炎よ!伸びよ!!」


 その叫びと共に、刀に宿った炎が伸び、上段斬りで振り落とした。


 オークの体は燃えながら真っ二つになった。 


 私がオークとの戦いを開始したと同時に、バードスもオーク一匹と対峙していた。

 

 オークとの戦い、バードスにとっては初めてではない、三回も戦い勝利している。・・・しかし、三回とも一匹だけの戦いであり、これほど多いオークとの戦いは初めてであった。

 ・・・だが、バードスはこれに怯えるどころか喜び勇んでいた。バードスは笑い声を上げながら、斧を振り落としたが。・・・オークも右手で棍棒を振り落とし、両者の得物がぶつかり合った。


 力はほぼ互角といった感じだがオークは空いていた左手を正拳突きでバードスの腹に打ち込んだ。

 

 バードスは少し咳き込んで後方に殴り飛ばされたが、腹は鉄の腹巻きがガードし、ダメージはさほど受けなかった。・・・・すぐに体制を立て直したバードスにオークは追い打ちをかけていった。・・・棍棒を右手上段上げして近付いてきた。


 一方、バードスはオークが来るのを見て大斧を右斜め下にして両腕に力を溜めた。

 

 バードスとオークはお互いに雄叫びを上げながら、大斧を右斜め上に薙ぎ払い、棍棒を振り落とし、互いの武器がぶつかった直後、棍棒が真っ二つになった。・・・最初のぶつかり合いで棍棒に切れ込みを入った。


 それを見たバードスは、力一杯大斧を振れば切れるんじゃないかと考え力をため込み相手を待った、その予想は当たった。・・・武器を失ったオークは驚いた顔したがバードスはお構いなしに雄叫びを上げ大斧を返す刀が如く左横薙ぎ払いをしてオークの腹を切り裂いた。

 ・・・血は多く吹き出し、オークが片膝をついたその時、大斧を上段振り落としてオークの脳天に叩き込んだ。


 オークは絶命し大斧を抜いたと同時に倒れた。

 

 ちょうどその頃、私もオークを倒した直後であり、お互い無事なのを確認し、三匹目のオークを睨んだ。・・・オークは一瞬びくっとなったが、すぐに我を取り戻し突進してきた。


 それを見た私は。


「バードスは左!俺は右!行くぞ!」


 指示を出した私にバードスは。


「おぅ!!派手にぶちかまそうぜ!!」


 賛同の返事をし、二人同時に突撃した。

 

 オークはどちらを攻撃するのか迷っており動きを止めた、そのスキを見逃さず、オークの真正面にいた私は二刀を水平にしオークの左腹に二つの切れ込みを。・・・バードスは大斧を右横一文字に右腹に切れ込みをいれた。

 ・・・オークは悲鳴を上げたが、それに構わず、私は振り返りオークの左足を切り、オークが片膝をついたところをバードスが首を斬り落とした。

 

 見事な連携であった。・・・お互いにやったという顔をした、その時バードスは言った。


「なぁ、シンスケ、俺はオークキングと殺り合いたいが、付き合ってくれるか?」


 満面の笑顔で言ってきた。

 

 確かに、今の戦局ではこちらが不利、オークを全部倒した所でオークキングがいる限り戦いは終わらない。・・・ならば、体力があるうちに大将首をあげるのが一番の近道だろう。

 ・・・それに、オークキングとは『麗剣』が戦っているはず、確認と加勢という意味でも行ってみる必要がありそうだ。


 私は。


「わかった。但し、もし『麗剣』がいて加勢はいらない状況なら他のオーク達を相手にする。・・・おまえだって戦ってる最中に邪魔が入ったらムカつくだろ?」


 その言葉にバードスは。


「・・・確かにな、わかったそういう状況なら他の連中を相手にするか。・・ふっ、シンスケ、もしおまえと組んでいなかったら、俺はそんな考えをせずにオークキングに向かっていただろうな。・・・何か不思議な気分だ、邪魔されたっていう感じじゃなく、納得した感じが強いぜ。」


 そう感慨深く言ったバードスに私は。


「たぶん、おまえがオークキングに考え無しに向かうだろうと考えたギルド長が俺にバードスの歯止め役を頼むと言ったんだと思うぜ。・・・さて、方針は決まった。向かうとするか。」


 バードスは、おぅ、と返事をし、共にオークキングの元に向かった。





 一方、オークキングに最初に戦いを挑んだのは『麗剣』ではなく、Cランクの四人組のパーティーであった。

 

 その者たちは、`白狼`というパーティーで実力的にはCランクの上位であった。・・・しかし、彼らは不満を抱いていた。自分たちの実力ならBランクになってもおかしくないと、だがCからBに上がるのは簡単なことではない。

 ・・・・仕事を一定数達したところで、質疑応答で昇格というわけではない。


 Bになるにはそれだけの強さが必要であり、実力の乏しいものではBランクの仕事を受けても失敗して命を落としてしまうからだ。・・・・実際、彼らの実力はCとしては上位だが、Bとしては力不足が目立つ。・・・Cランクの仕事で自分たちより強い魔物と戦ってもギリギリで勝つことが多く、Bランクの仕事を任せるには不安があった。


 その為、昇格できずにいた。


 そこに、一ヶ月もたたないうちにDからCに昇格した者がいた。・・・しかも、そいつが昇格した理由があの`狂斧のバードス`と戦い、勝ったと言う理由だ。・・・このままでは、その男が近いうちにBランクに上がるんじゃないかという焦りがあった。


 その矢先に魔物の騒乱、しかもオークキングの出現。


 これを聞いた彼らは内心ではチャンスと考えた。・・・この騒乱でオークキングを討ち取れば、Bランクに上がるのは確実。・・・・いや、もしかしたらAランクになるかもと思い、彼らの野望は膨らんでいった。


 この時、ギルド長からの殺気混じりの忠告を受けたが彼らの心が変わることはなかった。


 オークキングと対峙した彼らのメンバーは、剣士と弓兵と槍兵と二属性持ち魔術師であった。


 パーティーとしての連携は完璧、自分たちならオークキングを倒せると確信していた。・・・いや、厳密に言えば信じ込んでいた。


 リーダーは。


「我らは`白狼`!!魔物を統べる王よ!いざ!尋常に勝負!!」


 仰々しい言い方をして突撃していった。


 ・・・前方を剣士と槍兵が左右に分かれ、後方で弓兵と魔術師が攻撃を開始した。放たれる魔術と三連続の弓矢、これにオークキングが迎撃している隙に腹を攻撃する。・・・この作戦は上手くいくと確信していた。

 

 しかし、オークキングは、魔術と弓矢を迎撃することなくその体に直撃した。これには前方の二人も驚き足を止めた。・・・・次の瞬間、矢は刺さらず、魔術は効かず、オークキングは平然と立っていた。

 ありえない、と思った二人にオークキングは持っていた大斧を軽く横一文字振り払った。


 二人の体は上半身と下半身に分かれた。・・・上半身は地に落ち、下半身は血を噴水の如く吹きながら立ち尽くし倒れた。・・・これを見た後方の二人は、その恐怖が頂点に達し、その場で動けずにいた。


 オークキングはつまらなそうな顔をしながら二人に近付き殺そうと思った。

 

 その時、二人の後方から先ほどの魔術とは比べものにならない大きさが迫ってきた。


 オークキングはすぐに大斧でそれを迎撃、後方に下がった。

 

 すぐさま敵を確認するために、前方を見た。


 見えたのは、四人の女冒険者パーティー`麗剣`であった。







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