第146話 基地の様子。
戦いが終わり、テントのある場所に向かっていった。
・・・そこは他の冒険者よりも離れた場所。通常よりも二倍は大きく、中もベッドだけで無く机と椅子。・・・武器置き場まである。
通常はベッドのみだが。ここまでの待遇。・・・期待されるのは苦手だ。背負うのに慣れていない。
私は。
「・・さてと、それでは迎えに行きますか。」
その言葉にティナは賛同した。
・・・布製のマントを持って。
荷車置き場。
ここには冒険者ならびに国の物が置かれている。・・・当然、誰のかすぐに分かるように荷車にはパーティー名が書かれている。
・・・その中で私たちに荷車を発見。・・持ち物はまだ積まれている状態。
私は床を`コン、コン、コン、コンコン`とノックした。
すると`コン`と下から音がした。
私たちは周囲を見渡し、誰も居ないことを確認。・・・床の一部分を外した。
底にはうずくまって隠れているゴブリンがいた。・・これは二重底。地球では隠すときによく使う手である。
私は。
「・・よく我慢してくれた。マントを羽織れ。俺たちは荷物を運ぶからその影に隠れろ。」
この指示にゴブリンは頷いた。
・・・私たちは荷物を持ち、隊列の状態で移動した。ゴブリンはその真ん中。・・・目立たない位置で。
何人もの巡回中の兵士をやり過ごし、何とかテントに戻ることができた。・・・中に入り、荷物を置いた後。
私は。
「・・もう大丈夫だ。ここでじっとしていろ。」
マントを脱いだゴブリンは頷いた。
ティナは。
「・・では目的地に着きましたので、情報を整理しましょう。・・まず、あなたが知っていることは他にありませんか?」
この質問にゴブリンは。
{・・・ナイトオモウ。・・トイウカ、イキナリアラワレテ、オイダサレタカラ。}
表示された。
・・反撃する暇を与えないということか。
即断即決のタイプ。・・・手強そうだ。
ティナは。
「・・ではどんな姿でしたか?・・少なくともあなたの前には現われたはずです。」
次の質問した。
確かに、いきなりとはいえ姿だけは見ているはずだ。・・地球では電話越しやネットを使えば、正体を隠しやすいが、ここにはそんな機械は無い。
ゴブリンは。
{・・・バケモノダッタ。ミタコトガナイ。・・・ダケド、トナリニ、スケルトンガイタ。}
これに私は。
「・・・化け物にスケルトンか。・・・こいつが見たこと無いと言っている以上。俺らも遭遇していない可能性もあるな。」
頭を悩ました。
・・特徴さえ分かれば資料からある程度は予測できるのだが、化け物だけでは分からない。
だが、私は少し考えて。
「・・・スケルトンか。そいつが隣にいるだけで大体分かるな。」
ある事に思い立った。
ティナは。
「・・それはどういうことですか?」
この質問に私は。
「・・おそらく、普通のスケルトンじゃ無い。・・骨系の魔物は耐久力はめっちゃ弱いが、その分、知性がある。人間だった頃の特性でな。・・・特に、魔術を使う奴が一番厄介だった。何故なら、それ以外でも罠や策を使って攻めてくるからな。ゲームとかでは手強く、ウザい相手だった。・・化け物と組んでいる時点で知性があると考えた方がいい。」
説明した。
・・・地球のゲーム知識だが、ここはある意味よく似ている部分がある。どんな物でもバカにできない。
ゴブリンは`何それ?`という表情だが、あえて説明しない。
・・・面倒くさいし、信じられない話だからだ。
ティナは。
「・・・とすると、そのスケルトンが黒幕の可能性はあります。化け物を作って操る。・・もしかしたら、一年前に教会の研究室に出てきた化け物とは。」
推測した。
・・・あれか。見たこと無いが、教会の騎士達が`見たことの無い化け物`と言っていた。可能性としては充分にある。
私は。
「・・これで方針は決まったな。そのスケルトンを倒せば、少なくとも魔物たちの行動を鎮圧することができるかも知れない。・・その時は、お前の番だ。・・分かってるな?」
ゴブリンは頷いた。
・・・これである程度の作戦行動は決まった。最も、将軍には伝えない。ゴブリンのことも話さなくてはいけない。
・・内部での一悶着になる可能性があるのなら黙っていた方がいい。
・・・無論、内容にもよる。
不正や横領とか人としてやってはいけないことは言わなければならない。・・・しかし、今回は、この騒動を収める鍵がこのゴブリンだ。
こいつだけは絶対に、万が一もあってはならない。
ティナは。
「・・では、そろそろ休みましょう。・・・あなたはベッドの下に隠れてください。食べ物はここにありますから、適当に。・・私たちは兵士達が用意する物を食べますので。」
この指示にゴブリンは頷いた。
・・・その時、近づく気配を感じた。ゴブリンにベッドの下に隠れよう指示した。
テントの前で。
「・・・失礼します。夕飯をお持ちしました。」
女性の声が聞こえた。
私は`どうぞ`と受け入れた。入ってきたのはメガネを掛けた女性騎士。・・・持ってきた料理はパンとコーンスープ。・・・それとオオカミの肉を使ったステーキ。しかも分厚く、香ばしい香りが漂う。・・・中々の豪勢である。
騎士は。
「・・・では食器の方はこちらに置いてください。明日に回収します。・・それと、お疲れ様でした。同胞を救っていただきありがとうございます。」
敬礼してした。
ティナは。
「・・・それが私たちの仕事です。お気になさらずに。」
私も頷いた。
騎士は笑顔でそのまま去って行った。
私は。
「・・ああいう人が世の中に沢山いたらな。・・・平和なのに。」
この呟きにティナは。
「・・・仕方ありません。・・人間、どこに行っても。いい人や悪い人は絶対にいます。」
悟った顔である。
・・・切ない気持ちである。
私は。
「・・・さてと、人間論はここまでにして。折角の料理だ。食べよう。」
この言葉にティナは。
「・・・そうですね。・・・ゴブリンも出てきなさい。・・別ですが。これを食べなさい。」
そう言って渡したのは鯖の缶詰である。
・・・無論、蓋を開けた。私たちは食事を取った。
基地内。
兵士達は大量の柵作りをしていた。
・・・西。・・中央。・・東に配置する為に。
兵士は。
「・・・しかし、将軍はどうしてこんな命令を?・・いつもなら配置換えして戦力のバランスを整えるはずだが。」
呟いた。
・・・ゴルトール将軍の戦術は常に人員の数と力量を調整し、バランス良く配備させていた。当然、その部分が弱くなり、応援が呼べないときは限りある人数で再び計算し、配置する。
・・・要するに人海戦術を主に今までおこなってきた。
兵士は。
「・・・何でも、Aランクの`赤雷`からの進言だったそうだ。・・今回の襲撃に違和感を感じたらしい。・・・下手に人員を異動するよりも物を作って補うらしい。・・・まぁ言いたいことは分かるが。」
渋々納得した顔である。
・・・彼らの中には不満の声もある。・・・というよりも将軍の指揮の下では常に自分たちが戦っているという自覚を持つことができる。
その為に、人数が少ないのを物で補うというのは考え方としては間違っていないが、精神的には納得していない。
そんな中、兵士長は。
「・・・文句を言う気力があるようだな。・・・ならば、ゴルトール将軍に直訴してみるか?・・私が取り次ぐが。」
無駄口を言わせない威圧を出していた。
兵士は。
「・・い、いいえ。将軍の考えに間違いがあるとは思いません。喜んで作業させていただきます。」
せっせと柵と即席の兵器を作っていた。
・・・他の兵士達も同様に作業した。
兵士長はそんな彼らを見ながら。
(・・・言いたいことは分かる。・・・だが、ここから先の戦いは今までのやり方では生き残れない。・・そんな感じがする。)
己の内で思った。
・・・そんな光景を見ていたメガネの女性、シェヴルは複雑な顔をしながら基地内に入った。
廊下を歩いていると将軍と出会えた。
シェヴルは。
「・・将軍。兵士達の件ですが。」
将軍は。
「・・・今は、何とも言えん。」
そう言って去って行った。
翌朝。
太陽が顔を上る時間、それが起きた。
・・・テントの中で目を開けた私はだるい感じである。昨日の一件の疲れが取れていないようだ。しかし、仕事はしなければ。
・・・そう思い、ベッドから出ると。慌ただしい足音が。
「・・・早朝より失礼します!!魔物の群れが三カ所に現われ、同時侵攻しております!!!」
最高の目覚ましである。