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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第145話 今後の展開。







 基地での攻防戦が終わった。


 戻ってきた援軍は状況を見るやすぐに対処してくれた。負傷者はかなりの数で重傷者と軽傷者を合わせても三十人はいる。

 ・・そして、死者が先ほど私が会った兵士を入れて八人。


 ・・リザードマン達との戦闘で死んだ。


 この状況を見た私は。


「・・・もう少し早ければ・・・」


 苦い顔で呟いた。


 その時、隣にいた兵士長が。


「・・・自分を責めるな。・・戦いで死ぬことはこの場にいる全員が覚悟していたことだ。今回は敵の囮作戦に引っかかり、この場を手薄にしてしまった。・・悔しいが、奴らの作戦勝ちだ。」


 歯ぎしりする表情であった。


 この人の言うとおりだ。・・・あの時は早足で行動していたが。・・・無駄な体力を使わずに万全の体制にしたい理由で少し遅めであった。

 

 その考えが間違いだったとは思わない。・・・だが、結果がこの被害だ。・・早ければという考えは自惚れでしかない。


 私は。


「・・・すみません。少し、傲慢でした。」


 この謝罪に兵士長は。


「・・・気にするな。惨劇を見れば誰もが思うことだ。・・その気持ちをバネに戦えば良い。」


 そう言って基地の中に入っていった。


 ・・・そう言えば、あの人、どうして隣にいたのだ?確か、ティナがいたはず。


 辺りを探すとティナは兵士達と何か話していた。


 私は近づいて。


「・・どうかしたのか?」


 この質問にティナは。


「・・今できることは何かを話していました。・・・あの兵士長が、シンスケに話があると言うことで私が替わりに。」


 短的に説明してくれた。


 ・・・どうやらあの人に気を遣わせてしまったようだ。現場の人に迷惑をかけるのはよくない。


 ・・高校の頃、派遣社員の体験学習という風変わりな学校行事をしたことがある。あの時はこんなことして何の意味があるのだと疑問に思ったが、仕事を少しだけ手伝ったら思わぬミスをしてしまった。


 ・・・その結果、教えてくれた人だけでなく、他の作業の人達にも迷惑をかけてしまった。


 あの時、思った。・・・例え、どんな理由で仕事をしていたとしても現場で働く人の邪魔をしてはいけないと言うことに。

  ・・・まぁ、社会人になって自重しながら仕事をした結果。いじめの対象にされたがな。



 話は逸れたが。


 私が気落ちしたことで兵士長にいらぬ心配をさせてしまった。


 私は。


「・・すまなかった。もう大丈夫だ。・・・所で、何かを話していたそうだが?どうしてティナに?」


 疑問を感じた。


 ・・・王国ならティナの事を知っているのは当然。だが、帝国では一年過ごしたとは言え、私たちがやっていたことはギルドの仕事ばかり。・・・それも徒党を組んでの仕事はしていないはず。


 ティナは。


「・・何でも、王国からの商人達が話していたそうです。・・買い付けや売りつけの時に。まるで自分たちの自慢話のように。」


 呆れ顔であった。


 成る程、私たちは二国が認めたAランク冒険者。・・・当然、周囲には知らされている。帝国に来た商人達がここで活動している私たちを誇張して話していた可能性がある。


 ・・・何を考えているのか分からないが、自慢したいだけかもしれない。


 私は。


「・・そうか。それで?どういった話を?」


 ティナは真剣な顔つきで。


「・・・現状。進軍はおろか防衛さえも難しい。兵士達はどこからか人数を補充するべきだと言っていましたが。・・私は反対しました。何故なら、基地内で余っている兵士はいないのだから。」


 説明してくれた。


 ・・・確かに、基地内の兵士替えをすれば今度はその部署が不足になる。それでは何の解決にもならない。


 ただでさえ、拮抗状態だったのに自分達の手で減らすのは愚策である。


 ティナは続けて。


「・・今後の対策としては、まず、負傷者の手当を最優先とし、無駄な戦いは避け、防衛に集中すべきだと言いました。・・・勿論、守るときは罠や柵を今以上に作り、設置すべきだと。・・幸い、材料はあります。動ける人が率先してやるべきです。・・ただ、負傷者が治ってもすぐ復帰は難しいでしょう。」


 苦い顔である。


 私は。


「・・どういうことだ?ポーションが不足しているのか?」


 この疑問にティナは。


「・・いいえ。傷を癒やすことは問題ないのですが。・・全員、毒に侵されています。どうやら、リザードマン達の武器には毒が仕込まれていたようです。・・毒が抜けるまで時間が掛かると。」


 疲れの顔である。


 ・・・それは問題だな。毒ならば治療薬であるキュアと呼ばれる薬がある。だが、これは森や湿地帯に行く者が常備している代物。

 ・・何故なら、毒を使う魔物がそこ以外にいないからだ。


 ・・・残念ながら、国境線は岩地で囲まれた場所。


 毒を使う魔物はいない。・・・当然、キュアは置かれていないのだ。


 ・・かといって、大量に買いに王都に戻ってもあるかどうか。この国は毒に対する認識が薄く、キュアもそんなには置いていない。


 現状では兵士達の自然治癒に任せるしか無い。


 私は。


「・・やられたとしか言い様がないな。・・だけど、リザードマンはどうしてそんな事を?あいつらは武器は使うが、毒付きなんて聞いたことが無い。」


 帝国での魔物の情報を思い出していた。


 ・・・リザードマンは人間のように武器を使い、常に集団で行動し、獲物が来たら集団戦で襲いかかる。・・だが、毒を使っての攻撃など聞いたことがない。


 考えていると兵士が。


「・・失礼します。将軍様がお呼びです。こちらに。」


 考える時間も無しか。私たちは司令室に向かった。






 司令室。

 

 ゴルトール将軍は椅子に座って窓の外を見ていた。まるで悪の組織のボスのような仕草。・・・後ろ向きながら何かを話してこちらを向くつもりか?


 そう思っていると将軍は。


「・・来たか。今回の急な出陣。・・・ご苦労であった。」


 そう言いながら椅子を回転させ、振り向いた。


 ・・・正直、笑える。思っていたとおりに動いてくれたことに。


 ・・・しかし、ここは真剣な場。乱すわけにはいかない。


 私は。


「・・雇われた冒険者としての義務を果たしただけです。・・ですが、相手の罠に掛かってしまった。」


 そう言いながらソファーに座った。


 ・・将軍は。


「・・・それも仕方ない。過去の記録と照らし合わせても本来の魔物では有り得ない事だからな。・・・今でも基地内の兵士達は常識が抜けきっていないのだ。」


 ため息をついた。


 ・・・心労に耐えないという表情。


 ティナは。


「・・・将軍。これからのことはどうお考えで?」


 気持ちを切り替えた将軍は。


「・・負傷者の手当てをしているが、毒にやられた者は療養するつもりだ。キュアが無い上、王都に戻っても大量にあるかどうか。・・・防衛に力を入れたいが東側の戦力では。・・・どこから異動させようかと。・・・」


 続きを言う前にティナは。


「・・それは悪手です。今、兵士を無闇に異動させるのは戦力のバランスを崩すことになります。・・替えるよりも基地内にある材料を使って柵を作るべきです。・・・簡単に突破できないように大量に。」


 この進言に将軍は。


「・・美しいあなたの言うことは最もだ。しかし、魔物たちがその間に動かないという保証は無い。混乱している今だからこその襲撃だと思うが。」


 反論する将軍にティナは。


「・・確かにその通りです。・・しかし、それならば西側や正面に動きが無いのが気になります。ここまでやっておいて動かないのは何かを待っているのではありませんか?・・例えば、人数が減るのを?」


 予想を口にしたティナに将軍は少し考えて。


「・・・つまり、美しいあなたが言いたいことは。・・連中は東側を襲撃したのはこちらの人数を意図的に減らし、他の場所から兵士を異動させ、場所の警護を減らす。そして手薄になったその場所を一気に攻め込む。・・・結論としては、東側はそれほど重要な攻略場所では無い。」


 憶測を口にした。ティナは。


「・・・そうだと思います。リザードマン達の動き。駆けつけたときは兵士のみを狙っていて、中に入ろうとする感じではありませんでした。」


 現場での出来事を思い出していた。


 ・・・私は兵士達の惨状を見ただけでリザードマン達を殺すことしか頭になかった。周りを見ていない証拠だ。

 一方、ティナはあの状況でも冷静に周囲を見ていたようだ。


 ・・・本当に私には勿体ないパートナーだ。


 将軍は。


「・・・とすると。美しい君の言うとおり。柵や罠を大量に用意するべきだな。・・兵士や冒険者達には徹底した防衛陣形をする。無論、他の場所でも同様に。・・参考になった。礼を言う。」


 一礼した。


 ・・・ティナは。


「・・お気になさらずに。私は私の仕事をしたまでです。・・それと質問があります。西側と正面には何か重要と呼べる場所があるのですか?・・・もしかしたら・・」


 この質問に将軍は。


「・・・いや、特にない。正面は入ってきた物資を入れておく倉庫があるが、後に西と東の倉庫に均等にして運ぶから大したものは置いていない。・・・西側は他と違って死骸置き場がある。今まで討伐した魔物や死んだ兵士達をそこに安置している。・・・それ以外で特徴と呼べる場所は無い。」


 困惑だが悟ったような顔をしていた。


 ・・死骸置き場か。魔物がそこを狙う理由はないが。・・・将軍のあの顔は何か知ってそうだ。


 しかし、言わないのは確信が無いからだろう。・・・ならば無理に聞く必要は無いな。


 私は。


「・・・ティナ、他に話すことが無いのならここで失礼しよう。ゴルトール将軍もお忙しいようだからな。」


 この言葉にティナは。


「・・それもそうですね。・・ではゴルトール将軍。私たちはこれで。」


 ソファーから立ち上がった。


 将軍は。


「・・・あぁ、初日からの出動、お疲れだった。・・ちょうど、夕方になる頃だ。部屋に案内させよう。」


 この言葉にティナは。


「・・いいえ。Aランクとはいえ、私たちは一介の冒険者。特別扱いは無用でお願いします。・・その代わり、テントの場所は他よりも離れた場所でお願いします。」


 少し赤面した。


 それを見た将軍は何かを察したのか。


「・・そ、そうか。そう言うことなら仕方ない。・・兵士にはそう伝えておく。」


 少し遠慮気味の返答をした。


 ・・・・それを見た私たちは内心、ほくそ笑んだ。



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