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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第144話 基地の戦い。






 国境線の基地前に来た私は。


「・・Aランク冒険者の`赤雷`だ。・・要請を受けてこちらに来ました。」


 兵士は証を確認し。


「・・・話は将軍より聞いております。荷車はこちらが置いておきますので、どうぞ、中に。」


 道を空ける兵士に私は。


「・・ではお願いします。・・割れやすい物が入っているので、慎重にお願いします。」


 そう言って木箱からポーション十個を見せた。


 中身を見た兵士は。


「・・分かりました。・・君、荷車を置き場に。丁重にな。」


 言い渡された部下は荷車を引いていった。


 ・・・私たちはそのまま、中に入っていった。



 司令官室。


 高級ホテル並の部屋に執務机と来客用の長ケ机とソ二つのファー。壁には大きな鎚が飾られ、棚にはこれまでの功績を称えた勲章や表彰状が飾られていた。


 ・・帝国のギルド長の部屋とは違ってそんなに高級な品々を置いてはいない。


 どちらかというと威厳がある事と舐めた態度は許さないという印象を受ける。・・・何故、そう思うのか分からないが感性がそう告げる。


 執務机で仕事をしていたゴルトール将軍が。


「・・よく来てくれた。・・まぁ座ってくれ。事情はギルドから聞いていると思うが。もう一度だけ確認させてくれ。」


 そう言って机から席を立ち、ソファーに座った。


 ・・・私たちも対面するように座った。ギルドから聞いた説明をティナが事細かに伝えた。


 それを聞いた将軍は。


「・・・はぁ。・・相変わらずか。・・・失礼。これは君たちには関係ない話だ。・・まぁ、補足事項もある。・・・まず、魔物の動きだが、夜間時。偵察している雰囲気があるという目撃情報がある事と魔物の攻勢が奇襲だけでなく罠を張っていた事。・・・そして、複数のスケルトンが魔物と行動を共にしていた事だ。」


 将軍は一息入れた。


 聞いた私は。


「・・・スケルトンが?・・確か、腐死者の類いは魔物にも攻撃するんでしたよね?」

 

 自信がない質問をした。


 ・・隣にいるティナは。


「・・それに、罠を張っていたとは?・・魔物にそんな人間みたいな事を?」


 疑問の声を上げた。


 二つの質問に将軍は。


「・・美しいティナ嬢の質問だが、罠と言っても落とし穴とか落石とかそういう類いでは無い。・・・わざと魔物が後退し、追撃する部隊を誘い込み、周囲にいた魔物たちが一斉に襲うというケースが複数回おきている。・・・勿論、警告を出しているが。・・・それでも引っかかってしまう。特に冒険者が。」


 言いにくいという表情である。


 ・・それもそうだ。なまじ経験をしている分。信じられない事をすぐに受け入れるのは無理だろう。それこそ痛い目に遭わない限りは。・・・最もその前に死んでしまうがな。


 将軍は続けて。


「・・・それとスケルトンだが。正直、分からない。この報告を受けたときは私も信じられなかった。・・実際にこの目で見るまではな。・・・確かにスケルトンが魔物と行動を共にしていた。しかも、スケルトンが魔物に指示を出しているような場面にも遭遇した。」


 困惑する顔である。


 私よりもティナが。


「・・・そんな。・・・腐死者が指示を?・・ただ徘徊し、生者を襲うだけなのに。・・・いや、シンスケ。もしかして、教会の首無し騎士の類いでは。」


 最後の方は小声で聞いてきた。


 私は。


「・・それはないな。・・あいつは意思が強い侍だ。・・死んでも己を保ち続けられ程の精神力があっただけだ。・・他の人達がそうとは限らないよ。」


 ヒソヒソと答えた。


 将軍は何か言いたそうだが気にせずに。


「・・・というわけで。ここは今まで以上に危険な戦場になった。・・長旅で悪いが、少し休憩したら配置に・・」


 その時、激しいノック音と共に兵士が入ってきた。


「・・・緊急事態につき失礼します!!!魔物が襲撃してきました!!」


 この報告に将軍は。


「何だと?!場所は?!!」


 兵士は未だに慌てて。


「・・はっ!!東側からの攻撃です!!」


 将軍は。


「・・・君たち。・・すまないがすぐに東側に向かってくれ。」


 この指示に私たちは頷き、早足で向かった。




 到着すると、周囲は迎撃準備をしていた。


 年配の兵士長が。


「・・現在。見張りの者達で対処しているが。突破されるのも時間の問題!!すぐに救援に向かう!!・・念のため。何人かの兵士達はここに待機!!周囲の警戒を怠るな!!!」


 この指示に不満の声を上げずに敬礼した。


 私は。


「・・さて、どれ程の事態か。・・・確かめるのに絶好の機会だ。」


 腕が鳴るといった感じで柄頭を指で撫でた。


 ティナは。


「・・油断しないように。・・・もしかしたら何かの罠があるかもしれません。」


 真剣な顔つきで忠告した。


 ・・・説明を聞いての対応。こう言う臨機応変の体勢は非常にありがたい。・・・私は頷き、気合いを入れ直した。


 出陣した私たちは隊列を乱すこと無く早足で現場に向かった。




 出発して数分。


 ・・・目的地では兵士達と冒険者達が魔物達と交戦。種類は、複数のアナコンダにオオカミ、後方で弓を構えたゴブリン達がいた。


 私は。


「・・苦戦する相手ではないな。・・だけど、嫌な光景だ。」


 楽観するはずが気持ちが悪い。


 ・・・何故なら、おかしいから。・・いくら魔物が奇襲してきてもこんなの人間達が負けるはずが無い。


 ・・ティナは。


「・・・確かにそうですが。今の私たちは雇われです。・・指示には従いましょう。」


 同じ気持ちだが、押し殺している。


 兵士長が。


「・・・早速、援護に入れ!!!ただし!!深追いはするな!!!追い返せば良い!!」


 号令とともに兵士達が向かっていた。


 私たちも行こうとしたとき兵士長が。


「・・お待ちを。`赤雷`とお見受けする。・・・あなた方は伝令兵としてすぐに基地に戻ってください。」


 この指示に私は。


「・・何故です?・・・理由は?」


 兵士長は。


「・・何かおかしいのです。・・・魔物は知恵が無いとはいえ。上級所か中級もいないことが。・・その為にもお二人にはここでは戦わずに一度戻ってください。」


 この対応にティナは。


「・・指示であるのならば従います。・・・行きましょう。」


 そう言って基地に戻っていった。



 戻りながら私は。


「・・・まぁあの人も気持ちも分かるかな。・・・見ていて気持ちが悪いし。」


 この呟きにティナは。


「・・全くです。・・一応、伝令としての役割も受けています。何も無くても職務放棄には・・」


 言いかけたときに前から誰かが走ってきた。


 ・・・私たちも近づくと、全身に矢が刺さった兵士が息を切らせて走っていた。


 私は。


「・・!!おい大丈夫か!!何があった!!」


 焦る私に兵士が。


「・・・き、きしゅうで、す。・・・みんな、が、みえ、なくなった、あと。・・・がけ、のしたか、ら、り、りざーど、まん、が、・・・」


 言い切る前に絶命した。


 ・・・私たちは急いで戻った。



 基地周辺は戦場になっていた。


 リザードマン達が兵士達を次々と襲っていった。


 私は無言で剣を構えて。


「・・・すぅ~~~。・・チェェェェェェェェェ!!!」


 雄叫びを上げて突進した。


 驚いたリザードマン達はこちらに振り向いたが、近くにいた剣のリザードマンを。


「ェェェェェストォォォォォ!!!!」


 大振りの上段斬りを放った。


 リザードマンは受けることができずに真っ二つになった。・・・他のリザードマン達はこちらに向かってきた。・・・注意を向けることができた。


 ティナは。


「・・突風撃(フリーストライク)!!!」


 風のドリル攻撃が炸裂。


 ・・・水回転(アクアローラー)で一気に近づき、リザードマン三体を倒した。


 私は。


「・・火散弾!!」


 炎の炸裂弾を放った。


 ・・・この攻撃の命中精度は低い。だが、足を止めるのは充分だった。・・岩陰に隠れられたが、直撃を食らった者達もいた。


 ・・・これで二体は焼け死んだ。残りは分からないが、少なくとも二十体ぐらいのはずだ。


 ・・火が燃える中、岩陰からリザードマンが弓を構えて放った。矢は一直線にティナに向かってきた。・・狙いも正確。しかも、真横の為、気付いていない。・・このままでは頭を貫かれる。

 しかし、ティナは少し、頭をずらすだけで回避した。


 スキル`空間察知`の効力で。


 ・・・リザードマンは次に矢を装填しようとしたが。`雷人招来`で強化した私の横一文字で胴体を真っ二つにした。

 魔術を使っても避けられる可能性がある。確実に仕留めなければ。


 ・・・リザードマン達は一斉に武器を構えて迎え撃とうしていた。


 その時、崖の下からいきなり魔物が現われた。


 登ったと言うより、飛んできたという印象。鳥か?と思ったが翼が無い。・・・それだけの脚力を持っている。

 ・・・出てきた魔物は小太刀サイズの剣を持ったリザードマン。・・・だが雰囲気が違う。


 他よりも一回り小さい。・・・通常は百八十センチくらいだが。こいつは百四十センチほど。子供かと思ったが、身に纏う気配で`それは違う`と本能が叫んでいる。


 リザードマンはこちらを見ると素早い動きで向かってきた。


 一直線で無く、左右に動きながら。・・・これはまずい。距離感がうまく掴めない。


 私は。


「・・!!炎魔剣!!」


 自分の前に炎の壁を作った。


 ・・・予測が読めないのなら障害物を作って乱すだけだ。・・リザードマンは察したのか動きを止めたように見えた。

 しかし、その場で飛んだ。


 ・・上空に。約五メートル。・・・垂直跳びでここまでとは。どんな脚力だ。


 ・・リザードマンは腰に付けた三本のナイフを同時に投げた。


 ・・私はそれを剣で弾いた。着地したリザードマンと同時に炎の壁は消えた。・・・睨み合う両者。だが、リザードマンは即座に後退、崖から飛び降りた。


 ・・・困惑する私にティナが。


「・・・シンスケ。リザードマン達が撤退しました。」


 その言葉で周囲を見渡した。


 ・・・確かに、一匹もいない。あいつ、時間稼ぎをしていたのか。・・・どうやら手強い魔物のようだ。


 ・・・これは一年前よりも厳しい戦いになるかも知れない。



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