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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第143話 不安な気持ち。








 ギルドから出た後、私たちは拠点に行った。


 ・・・持ち込んできた荷物を整理して持っていく物と置いていく物を選んでいた。武器の類いは遠距離攻撃のボーガンは置いていく。・・・命中率は昔に比べるとそれなりに上がっているが達人レベルでは無い。遠距離には魔術がある。

 ・・・その他には本の類いも置いていく。魔術師がいないから。


 ・・持っていく物は陣中食と缶詰、それと通訳機。


 食料は基地にもあるが孤立したり、戻れない場合に備えなければ、仕事をして帰れる。地球での社会人の生活とは全然違う。・・・生きるか死ぬかの世界。甘さは一切無い。


 私は。


「・・・持って行くのはこれだけでいいか?」

 

 この質問にティナは。


「・・・そうですね。後は武器。短剣や予備を持って行きましょう。道中でも魔物は襲ってきます。主力武器で戦って万が一刃こぼれや折れたりしたら大変です。・・・予備で対処しましょう。」


 そう言って倉庫から私が作った武器を取り出してきた。


 ・・剣や槍、短剣に鎚を持ってきた。どれもこれも試作品で試してもいない。だが、ティナの言う分にも分かる。

 ・・・武器が永劫不変という物はない。


 今使っている素材がいかに伝説的な物でもちょっとしたことで破損するかも知れない。そうなっては遅い。少しでも負担を減らすには壊れても大丈夫な物を使えばいい。


 ・・しかし、いくら試作品とはいえ、作った物を使い捨ての考えには抵抗がある。どんな物でも愛着がある。


 だが、生き残るには甘さは捨てる。・・・これは先ほど思ったことでは無いか。


 私は。


「・・そうだな。他には?・・・無さそうだな。よし、次は道具屋に行くか。補充したいし、目新しい物もあるかもしれない。」


 この言葉にティナは頷いた。


 ・・そろそろポーションの類いが心許ないからだ。私たちは荷物をまとめて外に出た。


 ・・・あらゆる店が並ぶ街道には道具屋は幾つもある。別に贔屓にしている店はないので適当に入った。

 ・・そこにはポーションは勿論、テントや採掘品、ライターに似た道具もある。


 ・・・私はそこでポーションを十個買った。めぼしい物もないし、ピンと来る物はない。・・まぁ、昔は何か買っただろうが、今ではほぼ充実した装備を持っている。・・・無駄遣いはしない。当然の判断である。


 ティナは。


「・・・中々の品揃えでしたね。シンスケの国と似たような物もいくつかありましたが。・・・誰か来たのでしょうか?」


 この疑問に私は。


「・・それはわからないが、少なくとも注目的な人物はいない。・・俺の可能性は無いのか?」


 ティナは。


「・・それは無いです。教える理由がありません。」


 あっさりの回答である。


 ・・・よく分かってらっしゃる。さすが、パートナーだ。



 しばらく歩くと、食料品店では鰹節と昆布、水団の生地が並べられていた。


 ・・あの日に子供達に振る舞ってから色々と出汁の取り方と種類を教え、それを他の大人達がマネをしていった。

 その結果、これらの類いは帝国では必需品となった。


 私は、


「・・・本当に良かったのかな?食べ物だから問題ないと思っていたが。・・・少し不安になる。」


 憂鬱の気分である。


 ・・・一年前までは濃い味が主流だったが、薄味も浸透していき、今では両方の味で更なる味の追求をする者達も増え、料理は格段に向上心が上がっていった。


 しかし、不安になるのは伝統が破壊される気分である。


 ・・・長年、染みついた習慣を壊されるのは誰だって嫌である。


 地球の会社でも、今までやってきた仕事を機械に任せ、違う仕事を覚えろといわれ、その通りにしても知っているのとは勝手が違ったり変えられたりして困惑することもあった。


 ・・・一組織でこれだ。国全体で変えれればそれだけで不満を持つ奴らはいる。・・・それが原因で余計な揉め事が起きるのでは?考えるだけで嫌になる。


 私の思考に気付いたのかティナは。


「・・・何を考えているのか知りませんが。・・・もう少し信じたらどうです?悪い奴もいれば良い奴もいる。そうではありませんか?」


 的確に助言してくれた。


 ・・・それもそうだな。昔から悲観的になりやすい。楽観視したことはあまりない。・・友人のことがまだ頭に引っかかっているようだ。

 ・・いかん。これから戦いなのにこんな精神状態ではすぐに死んでしまう。


 ・・・・自己嫌悪退散。・・喝!!!・・・久々である。


 私は。


「・・そうだな。神経質になることも無いな。・・・よし、準備も整ったし、そろそろ行くか。」


 ティナは。


「・・・孤児院には寄らないのですか?」


 私は。


「・・・いや、いい。・・・話題が無いからな。用がないのに行くのは遠慮したい。」


 気疲れの顔をした。


 何にも無いのに行っても仕方ない。ただ、会って去るのは好きではない。


 ティナは。


「・・まぁあなたがそう言うのであれば無理強いはしません。」


 ため息をついた。


 ・・・彼女が何を言おうとしているのか大体分かるが追求はしない。言葉のやり取りをする理由も無いからだ。


 荷物を背負い、私たちは門へと向かった。




 しばらくして到着。


 荷物を見た兵士が。


「・・・行かれるのですね。承知しました。荷物検査はしません。・・ただ、忠告を。国境線はこれまで経験した事の無い未曾有の戦場になっております。・・ご武運を。」


 敬礼してくれた。


 ・・・私たちは深く頷いて外に出た。


 兵士の言葉が気になった私は。


「・・あんな事をされたのは初めてだな。それ程までに危険な事が起きているのか。説明にあった上位魔物が手強いということか。」


 詮索する私にティナは。


「・・・それもありますが。他にもあるのでしょう。・・魔物は基本的には獲物を見つけて襲うのが基本。奇襲をしてきてもそれが普通です。・・勿論、冒険者や兵士もその事は知っています。それでも苦戦するということは有り得ない何かが起きているということでしょう。」


 分析をしてくれた。


 確かに、誰もが知っている常識でやってきたのだ。・・・当然、対処もしているはず。こればかりは現地に行かなければ分からないな。


 私は。


「・・・その事も踏まえて行くしか無いか。・・後は、あれをどうやって誤魔化すか。」


 右手で示した場所にはこちらを心配そうに見るゴブリン。


 先のことを考えるのもそうだが、目の前の問題も解決しなければならない。







 場所は変わり、聖人教会。


 本部。最上階。


 巨大なテーブルが置かれる上位の者しか入ることが許されない部屋。


 ・・・そこで山のように積まれた書類を整理している教皇アルトリネがいた。傍らには枢機卿が補佐として仕事をしている。

 積まれた書類は、・・・周辺の調査。・・・オワリの里の経過報告。・・・帝国からの嘆願書。


 当然ながら細かい事は騎士達がチェックし、アルトリネは最終チェックして問題が無ければサインしている。


 アルトリネは。


「・・ふぅ。・・ヨルネ皇帝の頼み事。教会への物資の要請は量はいつも通りですが値段を一時的に下げてくれですか。・・余程、資金不足ですか。それとも兵器開発に回しすぎたか。いずれにしても、あそこはかなり危険な事態になっているのは確か。・・・商人達にこの事を通達してください。」


 サインした書類を手にした枢機卿は。


「・・承知しました。して?どうされますか?・・援軍要請は来ておりませんが。何人か冒険者を送りますか?」


 この言葉にアルトリネは。


「・・そうですね。募集だけはしてください。あちらのギルドでもしているはずですから。受けた場合はこちらからも支援金を出すと通達してください。」


 指示を出した。


 枢機卿は一礼して部屋を出た。


 一人になったアルトリネは仕事をしながら。


「・・一年前の再来。だが規模はあれ以上。ここは皇帝に頑張って貰わなければ被害が拡大する。それにこちらもきな臭い事が起きているようですし。」


 そう言って一枚の報告書を見た。


 ・・・周辺の調査では魔物が一匹もいないという報告。


 アルトリネは勿論、騎士達も冒険者達も警戒を強めている。・・・いないのは有り得ない。居て当然だからだ。


 ・・・嫌な予感しかしない。


 冒険者は送ると決めたが、行けるのはCランクのみ。こちらの戦力は減るだろうが、それでも帝国の方が優先。


 ・・・全ての元凶が国境線の魔物にあるのならそれさえ解決すれば問題ない。


 アルトリネは。


「・・あの二人も現地入りしたそうですし。・・何とかしてほしいものです。私も行きたいが、この地位が邪魔するし。離れることもできない。・・・口惜しい。」


 あまりの悔しさに呟いた。


 ・・・今の地位が悪いとは思っていない。守れる事が多くできたから。しかし、自由に動くことができなくなった。

 ・・・指揮系統の頂点に立った以上、騎士団長の時のように誰かに任せて動くことができない。


 アルトリネは天井を見上げながら二人の健闘を祈った。


 




 国境線の基地前。


 私たちは秘策を用いて向かった。




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