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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第142話 王都での説明。







 一方、帝国では。


 ヨルネ皇帝は執務室で仕事をしていた。


 ・・・部下から上がった情報は国境線に関する事ばかりである。魔物の種類が増え始め、統率の取れた動き。・・・更には大型の魔物の出現。


 一年前を思い出す光景である。


 報告書を読み終えたヨルネは。


「・・・このような事になるとは。いったい魔物たちに何が起きたというの?」


 頭を抱えながら呟いた。


 ・・・これは考える限りの危険が迫っている。魔物たちを支配していたのは`女王`と呼ばれる魔物。


 知性がある存在。・・・当初、この魔物と交渉し、戦いを終わらせないかと考えていたが。結局、どんな魔物なのか分からず、放置することにした。・・それがこのような事態になるとは。


 その時、ノック音がし、入ってきたメイドが。


「・・失礼します。ゴルトール将軍が面会を希望しております。」


 ヨルネは。


「・・通しなさい。」


 許可を出した。


 ・・将軍が来てくれるのは正直ありがたい。今は、意見が多い方がいい。


 入ってきた将軍は。


「・・夜分、失礼します。・・本来であれば明日にすべきかと思いましたが。先ほど、国境線の基地から気になる報告が来ました。」


 この言葉にヨルネは。


「・・・あなたが今来るほど危険な事ですか?」


 覚悟を決めたように聞いてきた。


 将軍は。


「・・・はい。伝書鳥からの報告ですが。魔物たちが夜中にこちらを偵察する動きがあったと。」


 この報告にヨルネは。


「・・バカな。魔物が斥候のような行動を?・・過去の戦いではそんなことは無かったはず。」


 更に頭を抱えた。


 この驚きは当然である。・・・国境線の戦いは昼のみで、夜は大人しく寝ていたのだ。だからこそ夜間勤務は見張りだけで常時戦闘態勢では無い。


 将軍は苦い顔で。


「・・・私も同じ気持ちです。こんなことは今までありませんでした。・・確実に向こうに知略を得意とする存在が現われたとしか思えません。」


 険しい顔つきである。


 ・・・将軍は最初、`女王`が新しいことを始めたのかと考えたが、それにしては人間味がありすぎる。

 ・・・事情を知っているとはいえ、ここまで大きく変わることが起きるのか?と考えられるほどに。


 ・・人間でも急激に変わることはある。しかし、きっかけが無ければ早々変わろうとは思わない。


 とすれば、参謀のような魔物が参入したか。もしくは、支配者が替わったかのどちらかだ。・・・どちらにせよ厄介である。


 ヨルネは。


「・・・すぐに基地に連絡を。警戒を厳とせよ。ただし、無理はするなと付け加えるように。」


 この指示に将軍は。


「・・かしこまりました。・・して皇帝?冒険者への対応は如何いたしましょう。」


 この質問にヨルネは。


「・・引き続き、Cランク以上のパーティーのみ募集するように。・・無理強いをしても戦力にはなりません。・・ところで、`赤雷`は入国していないのですか?」


 将軍は首を横に振った。


 ヨルネは。


「・・そうですか。あの二人がいれば何か大きな変化が訪れるかも知れません。・・ただの勘ですが。」


 ため息をついた。


 ・・・しかし、その表情には苦悶に満ちてはいない。実際、あの二人がいたからこそ帝国の危機も、教会の変動も阻止出来たのだ。

 ・・無論、全てを託すようなことはしない。


 いかなる力を持とうが個人でできる事など高が知れている。周りの人々も頑張って戦い、支えてこそ、奇跡が舞い下りるという物だ。

 ・・・であれば、やることは一つ。


 二人が来た時、万全の状態にしておくこと。・・今できるのはそれぐらいである。下手にこちらから攻勢に出て取り返しのつかない事態になるのは避けたい。


 ヨルネは。


「・・・将軍。明朝、基地に出向き、これからの対策と防衛。反撃をする為の諜報活動。・・時が来たときに万全に動けるように準備をしてください。」


 この指示を受けた将軍は。


「・・かしこまりました。皇帝陛下の期待に応えられるよう尽力を尽くします。」


 敬礼して部屋を出た。


 一人になったヨルネは夜空を見上げながら考えた。・・・この問題が帝国だけですむのかどうかを。

 ・・・嫌な予感がしてならない。


 それこそ他国にも危機が迫る何かが。


 それを思わせるのは基地からの報告書にある記述。


 ・・・スケルトンが現われたこと。・・・腐死者の類いが魔物と共闘など絶対に無い。死者は生きている者に敵意しかないからだ。それが共に戦う。訳が分からない。


 情報が少なすぎて推測の域でしかない。


 ヨルネは不安な気持ちで三日月を見ていた。






 翌朝。


 ・・・私たちは軽めの朝食を食べ、出発した。


 ゴブリンを連れての旅は初めてというか落ち着かない。何故なら、狩るべき対象と共に行動は、例え相手に敵意が無かろうと気が散る。

 私はメンタルはそんなに強くない。


 ・・・その方面で強ければ交渉事で顔に出たり、ムカつくという理由で貴族にケンカは売らない。強くなりたい気持ちはあるが、こればかりは経験をしていくしか無い。


 ・・・そんな思いをしながら数日の旅をした。


 ・・・帝国領内の岩石地帯に入ってしばらくすると`ファイターモンキー`の集団が横から現われた。とっさに隠れたが奴らは気付くこと無くそのまま北の方向に向かっていった。


 私は。


「・・国境線の方に向かって行ったな。・・この間のリザードマン達同様に参戦するつもりか?」


 この疑問にゴブリンは何か言っているので翻訳機を使った。


{・・ソウダトオモイマス。カレラノカイワデハ、オオキナタタカイガ、デキルラシイト、イッテマス。}


 通訳してくれた。


 ・・・大きな戦い。国境線はそんなに激化するということか。どうやら事態は思うよりも早く動くかも知れない。


 私は。


「・・一刻も早く国境線の基地に行かねば。」

 

 落ち着きの無い私にティナが。


「・・・いいえ。私たちはギルドからの要請で来ているのです。先に王都に向かいましょう。」


 焦る私に冷静に答えてくれた。


 ・・・いかん。感情が先走りすぎた。ここは落ち着いていかないと。勝てる戦いも勝てない。


 ・・勝てるかどうかは分からない。


 私は。


「・・・そうだな。すまん。・・王都に行って情報を仕入れないとな。」


 少し笑顔で答えた。


 ティナは安堵したように周辺の警戒に戻ってくれた。ゴブリンは何とも言えない顔をしているが。気にしない方針を変えずに行く。

 ・・・旅の中、襲いかかるオオカミやゴブリンがいたが、全て返り討ちにした。


 ゴブリンは魔石を、オオカミはそのままに。・・・狩っている時、ゴブリンが邪魔をするのかと思っていたが何もしてこない。・・・気になった私は聞いてみた。


 すると。


{・・・ニンゲントノタタカイハマモノノ、テッソク。・・・カナシイケド、トメテハダメ。}


 悲しそうだが覚悟のある顔である。


 私は。


「・・・安心しろ。獲物は有効活用し、供養している。ゴブリン達も魔石を取った後、燃やして供養した。・・・それが狩人の務めだ。」


 揺るがない顔で答えた。


 ・・ただ単に殺して放置では略奪者である。狩人たる者、殺したのならその亡骸を活用し、できない部分があるのなら供養する。

 他の狩人はどうかは知らないが私はそのやり方で今までやってきた。



 しばらくして王都に到着。


 その前にゴブリンにはその辺りに隠れて貰った。・・・入れるわけにはいかない。


 門の前にいる兵士が。


「・・話は聞いております。ギルドに直行してください。」


 そう言って近道を開けてくれた。


 この道は兵士専用の道。・・・迅速に現場に向かうために作られた。


 普段、市民が使うといざという時に邪魔になる。その道を使い、ギルドに向かった。




 ギルドに到着後。


 受付嬢が。


「・・・`赤雷`ですね。・・お待ちしておりました。ギルド長がお呼びです。」


 そう言って二階の部屋に案内された。


 ・・・部屋に入ると、奥に執務机、手前に長ケ机にソファーが二つ。壁には壺や金皿、壁には高級そうなオリハルコンの斧が飾られていた。

 かなりの見栄はりのようである。


 ・・・机でふんぞり返ってるメガネを掛けた中年太りの男性がいた。この人こそが帝国のギルド著である。


 ギルド長が。


「・・・ようこそ。話は皇帝陛下から聞いております。まぁお掛けになって。事情を説明します。」


 そう言ってソファーに座った。


 ・・・ギルド長も同様にソファーに座った。雰囲気から見てもいかにも陰険な上司そのものである。しかし、あまり露骨な態度を取るわけにはいかない。

 冷静沈着に事を進めなければ。こんな事、先ほどのゴブリンとの旅に比べれば安いものだ。


 ギルド長は。


「・・さて、事の経緯を説明すれば。国境線の戦いが何時にも増して激化してな。魔物たちの攻勢が強くなったのだ。兵士達は無論、雇われた冒険者達も奮戦した。しかし、事は一向に収まる傾向が無い。・・そこで我がギルドからも冒険者達を更なる派遣をすることにした。そこに君たちも入って貰う。」


 嫌な笑顔をした。


 ティナは。


「・・・私たちは皇帝陛下からの依頼でここに来ました。・・無論、参入します。ギルド長はただ、状況を説明してくださればいいのです。・・・余計な発言は慎んでください。」


 真剣な顔で発言した。


 ・・ギルド長の発言は私もイラついた。何故なのか?あまりにも上から目線だからだ。・・・上司である以上、ある程度は我慢できる。

 ・・・そうでなければ頼りにならない。下の者が付いていくという気力が沸かないからだ。


 しかし、威張りすぎるのも良くない。不愉快でやる気の無い職場環境になってしまう。この適度の対応を上手くできてこそ素質のある上司である。・・・このギルド長はハッキリ言って悪い上司である。


 ギルド長は。


「・・・これは異な事を。私は当然のことを言っているだけで。いかに美しいあなたでも、何を根拠に・・・」


 続けるギルド長にティナは。


「・・・御託はいいと言っているのです。早く詳細な説明してください。時間が惜しいので。」


 無表情に答えた。


 ギルド長は不快な顔をしているが。


「・・・そうですね。では説明しましょう。・・国境線では魔物の数が一年前以上に増え始め、今では一国に匹敵すると言われています。中には上位魔物も複数おり、サイクロプスやゴブリンガーディアン、リザードマンハンターなどが目撃されています。・・・国はエッジソンを生産し、送っているが。カバーできるか不安の声が兵士達から上がっています。・・・冒険者達も準備が整い次第、依頼を受け出発しています。・・・他に何か?」


 妙にイラつく態度に私は。


「・・・いいえ。結構です。・・それでは私たちも準備が整い次第出発します。・・・行こう。」


 素っ気ない態度で部屋を後にした。


 残されたギルド長はイラつきながら。


「・・・くっそ!!!二国から認められたからって調子に乗り上がって!!・・私も昔はAランクなんだぞ!!もう少し敬意を示すべきでは無いのか!!」


 悪態をつきながら机を叩いた。


 ・・いっそのこと国に文句でも言おうか?・・・だが、真っ正面から抗議しても無視されるだろう。それだけあの二人の功績は高い。

 ・・無実の罪でも作るか?・・いや、タイミングが悪い。


 国境線の戦いにはあの二人が参入は必須。・・下手なことは逆効果になりこちらの評価が下がるだけ。・・まぁいい。今回の件が片付いたら何かいい方法を考えればいい。


 ・・上手くすれば、美しいティナ嬢を我が物にできるかも知れない。


 ・・余計な野望を持つ者の典型である。


 ・・それが身の破滅になることになるとは知らずに。





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