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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第141話 異常な出来事。







 助けたのは赤い色をしたゴブリンであった。


 魔物だったのかと思い脱力したが、赤い色は初めて見る。・・・通常のゴブリンの色は緑で進化しても色は変わることはない。・・・珍し過ぎる。


 私は。


「・・・俺は冒険者であり、狩人だが。無闇に狩るつもりはない。助けた縁だ。このまま去るがいい。・・だが、無抵抗な人々を襲うのであれば容赦はしない。」


 少し殺気を放った。


 ・・ゴブリンは怯えていたが、何故か安堵の表情をしていた。・・・変な感じである。そのまま去ろうとしたとき、急に左足に抱きついてきた。


 私は。


「・・?なんだ??」


 困惑する中、ゴブリンは何か言っているが言葉が全く分からない。


 ・・・どうしたものかと思った時。王国の遺跡で見つけたあの装置を試す絶好の機会だと感じた。


 私は。


「・・俺の小屋に来い。そこで会話ができる装置がある。」


 そう言ってゴブリンを案内した。


 ・・・魔物をキャンプに連れて行くのは愚策だが殺気所か敵意が感じない。周囲に伏兵らしき気配も無し。・・・しかも追われていた感じだ。

 魔物の世界で何かあったんだろう。・・・情報を手に入れるのは悪いことではない。


 ゴブリンは了承の顔をしていた。・・・警戒心があまりない。何か信用されたようだ。



 小屋に到着し、壁に穴を開け入った。


 出迎えたティナは私の背後を見て。


「・・ゴブリン?!何故、ここに?」


 疑問の声に私は。


「・・まぁ事情はこの装置を使ってから教えるよ。」


 そう言って荷物から魔物通訳装置を取り出した。


 ・・・説明書によるとまず赤いスイッチを入れて右横にあるマイクを魔物に向ける。すると魔物の声が画面に映る。

 ・・改めて考えると昔の錬金術師がなんでマイクと画面の概念を知っているのか?どうやって作ったのか疑問だが、ここは棚上げしておこう。


 ・・・私はスイッチを入れた。すると画面が青く光り、点滅を繰り返しやがて点灯した。


 ゴブリンは驚いて見ているが私は気にせずにマイクを向けて。


「・・・これに向かって喋ってくれ。」


 その言葉にゴブリンは何か喋った。


 すると。


{・・ワカリマスカ?}


 画面に表示が出た。


 私とティナは驚いた。・・・これほどの技術を完成させるとは恐ろしい錬金術師だ。


 私は。


「・・ああ、分かる。・・そのまま続けてくれ。」


 そう言うとゴブリンは続けた。


{・・デハキキタイノデスガ?・・・ソチラノジョセイハ、ホリョデスカ?・・・テカセヲツケテイルヨウデスガ。}


 この表示に私とティナは`はっ`とした。


 ・・・そうだった、先ほどまで拘束プレイをしてそのままだったのをすっかり忘れていた。本当のことを話しても理解出来まい。


 私は。


「・・いや、この人は俺の相棒だが。先ほどまで盗賊に捕まっていてな。何とか救出したが鍵を連中がどこかに落としたらしい。・・・アジトには無かったから、仕方なくこの状態で戻ってきた。ピッキングで外そうとしていたときに悲鳴が聞こえたのだ。」


 大嘘に現実味をつけてみた。


 ・・・ティナは少しむくれていた。この説明ではティナは不意をつかれたと言っているようなものだ。・・普段からキッチリとしている分、手を抜くというのを彼女は嫌う。

 しかし、これ以外に納得出来る説明が思いつかない。


 私はティナの右肩に左手を置き、`納得してくれ`とジェスチャーした。ティナは渋々ながら無表情になった。


 ゴブリンは。


{・・・タイヘンデスネ。}


 同情された。


 このままでは話が進まないと感じた私は。


「・・さて、本題に入ろう。・・なんで同じ種族であるゴブリンに追われていたのだ?・・できれば最初からお願いする。」


 真剣に質問した。


 ゴブリンは少しうつむいて。


{・・・ワタシハ、ココカラキタニアルイワヤマデ、セイカツシテイマシタ。ソコデハ、ドウゾクノホカニ、イロンナシュゾクタチガイテ、ワタシハカレラヲトウソツシテイマシタ。・・・シカシ、スウジツマエ。ミタコトノナイマモノガアラワレ、ワタシカラカレラヲウバイ、シハイシタノデス。・・ソシテ、ソイツガミンナヲツカッテ、ワタシヲコロソウトシタノデス。・・サイワイ、カクシツウロガ、アッタノデ、ダッシュツニハ、セイコウシタノデスガ。・・オッテニオワレテ、ココマデキマシタ。}


 説明をしてくれた。


 ・・・どうやら魔物の間で革命が起きたようだ。しかも、北の岩山だとすれば国境線の魔物達の可能性が高い。

 ・・・ということは目の前のゴブリンは長いこと人間と争っていた魔物のボスということになる。


 ・・正直、期待外れである。


 ボスと言うからには相当強いと思っていた。・・・それこそ魔王と呼ぶに相応しい風格と力を持って。しかし、こいつは色が珍しいだけで姿と力は並のゴブリンと同格。


 どうしてボスになれたのか不思議でしか無い。


 ティナは。


「・・・内容を見るからには信じがたい話ですが、魔物がウソをついてどうするという話になりますし。・・それに国境線の戦いが激しくなった原因にも繋がるかも知れません。・・その魔物はどういう考えで魔物たちを率いているのですか?」


 この質問にゴブリンは。


{・・・ニンゲンヲシハイスルトイッテイマシタ。}


 とんでもない内容である。


 私は。


「・・支配か。・・・すごい野望を持った魔物だな。絶対に倒すべき存在と言える。・・だが、聞きたいことがある。お前はどうして人間と戦っていたのだ?」


 この質問にゴブリンは。


{・・・ソレイガイニミンナガナットクシナイカラ。・・・ニンゲントハタタカウベキダトミンナガイウカラ。・・・ソレダケ。}


 うつむきながら表示した。


 ・・・このゴブリンは言われたことをおこなうだけということか。やる気が無くても。そうなると益々おかしい。・・・どうして意欲の無い奴がボスになれるのか?


 私は。


「・・・どうして皆はお前に従うのだ?こう言っちゃなんだが。弱いだろう?」


 この質問にゴブリンは。


{・・・ソレハワカラナイ。・・キヅイタトキ二ハミンナ、ワタシノイウコトヲキイテクレルノ。・・ソノママミンナヲ、マトメルヨウニナッタノ。}


 困惑しながら表示した。


 ・・・本人にも分からないと言うことか。ゲームのパターンだとこいつには操る力があると考えるのが妥当。

 ・・・正直、今も操られているのではと疑問に思うとこはあるが、少なくともこいつに対して親愛は感じない。


 少しでもおかしな事をすれば斬り捨てる考えはある。


 私は。


「・・・ティナはどう思う?今の話?」


 この質問にティナは。


「・・・半信半疑ですね。・・国境線の戦いが激化したのが魔物のボスが替わったと考えれば納得はします。疑いはこのゴブリンが本当に前のボスなのかということです。・・・本当は前のボスは死んで、手下であるこいつが意志を継いだという可能性です。」


 納得いく話である。


 ・・・それならばこいつに力がない理由がある。


 ゴブリンは。


{・・・ソレデモイイデス。・・・ワタシガムガイダト、ワカッテクダサルノナラ。}


 関心の無い顔で表示された。


 誇りというものはないらしい。


 私は。


「・・・お前はこれからどうするのだ?・・俺たちは明日にはお前のいた場所に行って魔物たちと戦うことになっている。・・・もしかしたらボスと戦うかも知れない。・・・どうしたい?」


 この質問にゴブリンは。


{・・・カンケイナイトイエバ、ウソニナリマス。・・・ナガククラシタ、ミンナトコノママ、ハナレバナレニナルノハ、サビシイ。}


 悲しそうな顔で表示された。


 ・・・これには悩んだ。魔物であろうと思う気持ちは人間と変わらない。


 しかし、私は狩人。・・敬意を示すが、同情はしない。


 だが、ボスを倒した後の事を考えるとこいつは必要かも知れない。


 私は。


「・・・提案がある、もし、俺たちがボスを倒したらそのままボスの座に戻ってくれないか?・・だが、恩を感じることは無い。俺は狩人だ。魔物を狩るのが仕事だ。・・お前達がこのまま人間に手を出さないのは商売あがったりなんでな。・・・昔と同じように人間にちょっかいをかけてくれないか?」


 この提案にゴブリンは考え込んで。


{・・・ソレデ、ミンナノトコロニ、モドレルノナラ。}


 決意を込めた瞳で答えた。


 ティナは。


「・・・そうですね。私たち冒険者は魔物から人々を守るのが仕事。平和が一番ですが、仕事が無いのは私としてはツラい所でもあります。」


 渋々と言った顔である。


 ・・・冒険者の模範とはいえ、仕事が無くなるのは嫌である。


 私は。


「・・・じゃぁ成立でいいんだな?・・勿論、内緒だぞ?」


 右人差し指を唇に付けた。


 ティナは頷き、ゴブリンも頷いた。・・・どうやらこのジェスチャーは知っていたようだ。


 私は。


「・・よし、それじゃ寝るか。・・それとティナ。手枷を外そう。」


 そう言って手枷をピッキングする振りをして外した。


 そのまま、私とティナは小屋の中で寝て、ゴブリンは外で寝た。


 ・・・外の方が落ち着くようだ。





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満たされたい心
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