第139話 ギルドからの依頼。
翌日。
宿屋で目覚ました私たちはパンとスープの朝食を食べ終えた。
出た後、バードスが。
「・・・さてと。用事も終わった。帰るか?都市に?」
この提案に私は。
「・・・そうだな。急ぐ用事も無いが。・・・一応、ギルドに行ってみるか。・・・顔は出してくれと頼まれているからな。」
疲れ顔で答えた。
・・Aランクになってから双方のギルドから`来たのならギルドに来て下さい`という小言を聞かされた。
理由としては二つの国から認定された冒険者の所在を知っておく必要があるとか。
バードスは。
「・・・そうか。んじゃぁ、俺たちも行くか?」
この言葉にレオナは頷いた。
ティナは。
「・・いいのですか?お二人の時間を邪魔するようで?」
皮肉の言葉にレオナは。
「・・・バードスと一緒でも戦い関連しかありません。・・・ならば、一緒に行った方がいいでしょう。」
少し呆れ顔で答えた。
・・日常生活が目に入るようだ。私たちはギルドに向かった。
ギルドに到着すると門の前にアルムのギルド長と王都の老婆ギルド長がいた。
二人は何やら話しているようだ。
邪魔にならないように入ろうとしたとき、アルムのギルド長がこっちを向いて。
「・・・おお!シンスケ!ちょうど良かった。・・お前とティナに話がある。ギルド長の部屋に来てくれ。・・バードスとレオナはすまんが。中にいてくれ。」
何やら真剣な顔でをいってきた。
私は。
「・・・別に良いですが。バードスとレオナは何故?二人もAランクですよ。」
この疑問にギルド長は。
「・・あぁ、その、なんだ。・・・帝国についてだ。」
この返答に私は。
「・・・・・分かりました。すまんが、バードス。レオナ。・・ここで一旦別れよう。」
ティナも同様の顔をした。
二人は顔を見合わせ頷いた。・・・私とティナは二人のギルド長と共に部屋に向かった。
ギルド長の部屋。
・・中央にソファー二つと長ケ机が一つ。奥には執務机があり、壁には十文字槍が飾られていた。
あまり飾り気はないが、シンプルで私としては落ち着く。四人がそれぞれ対峙するようにソファーに座った。
・・・しばしの沈黙に老婆のギルド長が。
「・・・さて。お主らを呼んだのは他でもない。・・帝国から女王様に書状がきたのだ。内容は、国境線で激しい戦闘が起きているようだ。・・その為に、`赤雷`に来て欲しいそうだ。」
この言葉にティナは。
「・・・国境線が?・・前に滞在したときはそんな素振りはありませんでしたが。・・何か変わったことでも?」
この質問にアルムのギルド長が。
「・・・それが良くわからんのだ。・・・手紙には魔物が活発化したとしか書かれていなかったそうだ。・・私もこの事を知ったのは今朝だ。・・・領主の館にギルドの使者が来たからな。・・・二人は私のギルド出身。・・・何かあれば私の方にも話が来る。・・・さっきも事情を聞こうとしたがこっちもわからないと。」
呆れ顔に老婆のギルド長は。
「・・ふん。じじぃが偉そうに。・・・功績が良かったからって。即位式にまで呼ばれるとは。・・・ワシの面目はどうする?」
眉間にしわを寄せていた。
アルムのギルド長は。
「・・そんなこと知るか。若い頃から忙しく仕事をしていたのでな。その働きからギルド長になって王族からも覚えが良かった。それだけだ。・・・王都の冒険者という理由だけで胡座をかいていたそっちとは違ってな。」
ドヤ顔でニヤけた。
老婆のギルド長は。
「・・ふん。ただ単に運が良かっただけではないか。・・・ワシとて王都ではかなり活躍していたぞ。・・・お前の所の騒動だって駆けつけてやっただろう。・・・ワシがいなかったからどうなっていたか。」
この言葉にアルムのギルド長は。
「・・ふん。恩着せがましいことを。・・・ババァが来ても来なくても結果は同じだ。・・大体、来たのだって終わりかけの時ではないか。」
老婆のギルド長は更にシワを寄せ。
「・・ナニよぉ~~?終わりかけだろうと駆けつけたのは事実だろう。それにお主はあの時疲れていたではないか。・・・結果は同じとはよく言う。」
アルムのギルド長は。
「・・なんだぁ~~?疲れていたから何だというのだ?・・・私一人で戦っていたわけではないわ。」
口げんかが始まった。
・・・終わるまで待つべきだろうが帝国が気になるので私は。
「・・・・・話を戻していただけませんか?」
呆れ口調で言った。
二人は`はっ`とし、姿勢を整えた。
・・しばしの沈黙後、老婆のギルド長が。
「・・・うん。まぁ、そう言うわけで二人には帝国に行って貰いたい。・・・既に船の手配は済んでいる。・・・準備が整ったら港に行ってくれ。・・・船員は二人の顔を知っているからすぐに乗せて貰える。」
指令が出された。
ティナは。
「・・・分かりました。それでは早速行きます。」
そう言って私たちは席を外した。
残された二人はおそらく、口げんかを再開するだろうが。
年長者のケンカには関わりたくない。
・・・一階に降りた私たちを見たレオナが近づいてきた。
「・・どうでしたか?」
この質問にティナは。
「・・・・帝国に異変があるそうです。・・・すぐに向かいます。」
短的に答えた。
レオナは。
「・・・そうですか。・・・嫌な感じがしますので手伝いたいのですが。・・・」
ティナは。
「・・・大丈夫です。・・これは私たちの仕事です。・・レオナの立場を考えれば気軽には頼めません。」
キッパリと答えた。
・・本来、Aランクが他国に行くことはできない。しかし、私とティナは行くことができる。
・・レオナは。
「・・・ならば言うことはありません。・・・お気を付けて。」
そう言ってバードスの所に戻った。
私たちはバードスにも挨拶するかと思ったが、何を話して良いのか分からない。・・・後のことはレオナに任せて港に向かうことにした。
港に到着した私たちはそのまま船着き場に向かった。
荷物はある程度、帝国の拠点にある。・・・こちらから持っていく物は地球で買ってきた携帯食と陣中食だけである。
船の前に来た私たちを見た船員が。
「・・お待ちしておりました。・・・どうぞ、乗ってください。」
そう言って案内してくれた。
部屋に到着した私は。
「・・・帝国の国境線か。・・・・ミノタウロスが現われたのか?」
この疑問にティナは。
「・・・可能性があるでしょうが。・・・本来、ミノタウロスは表舞台に出ることはありません。詳しくは知りませんが。・・・自分より強い敵が現われない限り姿を見せないという話を聞いたことがあります。・・最も、どこまで信頼性があるのか分かりませんが。」
自信なさげに答えた。
・・・そんなに知られていないということか。
しかし、あいつ。ダンメスだったか。・・・私が異世界人だというのは知っていた。
勝ったら答えるとか言っておきながら普通に撤退した。
・・・まぁあれだけの傷を負ったのだ。それも仕方無しか。・・だが、シドールが関わっていたのは確かだ。今回も何かが関わっていると言うことか。
・・・もしかしたらこの戦いで足りない何かが掴めるかも知れない。
そう思いながら出航した船の中から海を見ていた。
その頃、共和国では。
新たな王となったルストルフォは書類整理をしていた。
そんな彼の側で同じく机で仕事をする金短髪で青い淑女服を着た蒼い瞳をした女性がいた。
彼女の名はメリサ。ルストルフォの妻にして王妃。
その二人の前にはメイドが三人待機していた。
・・メリサは。
「・・・あなた達。喉が渇きました。飲み物と何かお茶菓子を用意してください。・・あなたはどうします?」
この言葉にルストルフォは。
「・・あぁ、では私のも頼む。」
この言葉を聞いたメイドは二人部屋から出た。
残った一人にルストルフォは。
「・・・君。書庫からいくつかの書物を持ってきてくれ。・・これがリストだ。」
そう言って必要なリストを渡した。
メイドは一礼して部屋を出た。
二人だけになった空間で王妃が。
「・・・・はぁ~~~~。疲れるわぁ~~~~。こういう仕事はほんっっとに面倒い。・・・ルストルフォ様もそうでしょう?」
伸び伸びとした言葉にルストルフォは。
「・・・それにはどういぃ~~~。・・・それにしても噂通りの性格だなぁ。・・・三日前に初めて会ったときはすごく真面目な態度だったから。誰?と思っちゃったぁ~~。」
背筋を伸ばしながら答えた。
この事から彼女は噂とはほど遠いほどの真面目で礼節ある女性を演じていた。
メリサは。
「・・・だってぇ~~~。三年くらい前からお父様から王族との結婚が決まったと聞かされたから。・・それまでは気ままにしていたのに。・・・聞いているでしょう?理由?」
ふくれ面で聞いてきた。
・・・これについてはルストルフォは先代国王から。
`メリサの父親とは友人でな。・・本来なら次女が王妃になるはずだったが、どこかの冒険者と駆け落ちしてな。それでメリサに急遽決まったのだ。`
それを聞いたルストルフォはどう表現したらいいのか分からなかった。
メリサの演技が発覚したのは初夜の頃。二人だけになった部屋のベッドでだ。
・・・ルストルフォは。
「・・・まぁ、なんだ。・・お互いトップになった以上。やることはやろう。・・・それと帝国からの書状だが。・・・どう思う?」
この質問にメリサは。
「・・・何かが変わったということでしょう。・・・一年前にもミノタウロスとケンタウロスが暴れたと聞きます。・・・魔物の勢力図が書き換えられた可能性があります。」
真面目な顔で答えた。
・・・ルストルフォも同意である。余程の事が無い限り魔物が活発になることはない。波瀾万丈になる可能性がある。
・・王子の頃は凄いことが起きる帝国に行ってみたい気持ちがあるが、王になっては気軽に行けない。
・・・メリサも同じような気持ちだが立場で無理である。
二人は今後の帝国への対応をどうするべきか考えていた。