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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第138話 世間話と手紙。








 即位式が開催された。


 場所は玉座の間。


 広間には多数の貴族達が今か今かと待ちわびている。・・・私たちはそこから一歩離れた場所にいた。・・・服装は冒険者の格好だが、周りには騎士達もいるので場違いの格好ではない。

 しかし、雰囲気的にはそうなる。・・・平民がここに居ること自体が。


 ちなみにセナは赤ん坊である為にメイドの人達に預けて貰った。


 そう思っていると声をかけてくる者がいた。


「・・・おや?`赤雷`ではありませんか?・・・お久しぶりです。`梟`のリーダーです。」

 

 挨拶してきたのは軽装に身を包んだ`梟`のメンバーである。


 そう言えば、最近、Aランクに昇格した話は聞いていた。


 私は。


「・・お久しぶりです。・・一年くらいですか?・・魔物の騒乱以来ですね。・・お会いするのは?」


 返しの挨拶にリーダーは。


「・・・そうですね。それくらいにはなります。・・しかし、噂は聞いていますよ。王国と帝国からAランクの称号を獲得されたとか。・・・今でも冒険者の間では有名ですよ。・・ご活躍のようで。」


 世間的な話である。


 そうしていると隣から騎士が。


「・・・間もなく、女王陛下が来られる。・・・お静かに。」


 その言葉で沈黙した。

 

 周りの貴族達も同様に静かになった。そして。


「・・・女王陛下!お披露目である!!」


 叫び声と共に扉からオリビア様が現われた。


 ・・・豪華絢爛なドレスに煌びやかなネックレスとイヤリング。右手には錫杖を持ち、その先には赤と青の魔石が爛々と輝いていた。・・その姿に周囲の人々は息を呑むように見守っていた。


 しかし、騎士達の気配は警戒に満ちていた。不届き者がいたならば即座に捕える。・・・そんな身構えをしながら。


 ティナは。


「・・・オリビア様。あまり嬉しそうではありませんね。」


 小声で呟いた。


 私は。


「・・・?そうなのか?よく分からんが。」


 首を傾げるに私にティナは。


「・・・まぁこれでもそれ相応に面会と会話はしている身です。だから何となく分かるのです。」


 微笑んだ。


 私と出会う前の頃か。それでは私が分からんのは当然。・・・そう思っているとオリビア様は玉座の前に立った。


 そこにはアルフォンス様が立っており王冠を手にしていた。


「・・・・オリビア・ハルグよ。この王冠を被った瞬間。そなたは新たなる王として君臨することになる。・・・異論はあるか?」


 宣誓の言葉にオリビアは。


「・・・ありません。・・・・王として国を支える所存です。」


 宣言した。


 アルフォンスはその言葉を聞き、王冠をオリビアに被せた。・・・そして、オリビアが皆に顔を見せると拍手が響いた。

 オリビアが玉座に座ると同時に豪華な食事が用意された。


 ・・私たちは食事を堪能している間。貴族達はオリビアに媚びを売る者のいれば他の貴族と会話している者のいる。

 ・・・といってもオリビアと会話しているのは家の代表だけ。


 他の家族は親しい者と会話。おそらく、今後の事を話しているのだろう。未来を見据えている者がいるようだ。


 その中の一人がこちらに近づいてきた。


「・・・久しぶりだな。ティナ嬢。シンスケ君。」


 挨拶にティナは。


「・・・お久しぶりです。ローゼン領主。・・女王様へのごあいさつはよろしいのですか?」


 この言葉に領主は。


「・・・娘が行っている。・・・今後の事を考えれば次期後継者が行くべきだと考えたからな。」

 

 そう言って玉座を見た。


 ・・・若い人達が多く、誰が誰なのか分からない。というか顔も知らない。


 私は。


「・・・所で。ギルド長もおられるようですが。・・・護衛ですか?」


 そう言って領主の後ろにいるギルド長を見た。


 ギルド長は。


「・・・それもあるが。・・ギルドの代表も出席するのが礼儀だからな。」


 簡単に説明してくれた。


 ・・領主はこちらの挨拶が終わると次の貴族に向かって行った。


 私は。


「・・・中々に忙しいのですね。・・・代表って事は全ギルドで?」


 この疑問にギルド長は頷いた。


「・・・まぁな。現役時代はAランクにまでなった事もあるからな。・・話せば長くなるからやめておくが。そこから先代のギルド長のお眼鏡にかなってな。この地位についた。」


 ってことはこの人は相当に偉い人ってことか。


 ・・・最初の頃は厳ついだけの人だと思っていたが、さすがは年季が違う。


 ・・・地球のただ年を取っただけで何にもしていないのに偉そうにする老人達に見せてやりたいものだ。


 ・・そう思っているとバードスが。


「・・・レオナ。こっち上手そうだぞ。食ってみるか?」


 レオナは。


「・・もう少し、控えてくださいよ。・・・あなたは国が認めたAランクです。行儀もしっかり・・」


 少し説教していた。


 光景を見ていたギルド長は。


「・・全く相変わらずだな。あいつはこんな席よりも戦いの方が向いている。・・まぁ、シンスケもそうだがな。目立つのは嫌いだろう?」


 イヤミの笑顔をしていた。


 私は。


「・・好きで目立ったわけではありません。・・・仕事を受けている内にこうなってしまった。ランクを目指している冒険者には申し訳ないですが。・・・高ランクまでは望んではいなかった。」


 疲れ顔で答えた。


 実際、冒険者達が高ランクを目指すのは収入がいいからだ。・・・低ランクだと受ける数が制限され、報酬も一ヶ月生活できるか疑問。

 ・・だが、高ランクならば一回の収入は一ヶ月の生活は楽にでき、更に貴族の覚えも良くなり、もっと良い仕事にありつけることができる。


 ・・後は王族関連でこのような重要な場に出席できることもある。


 そんな特典が満載のAランクを目指すのは当然。・・・しかし、そう簡単に慣れないのも事実。


 つまり、私の発言はかなり問題である。


 ギルド長は。


「・・・今のは聞かなかったことにしよう。・・・お前の師匠も冒険者としてはあまり乗り気ではなかったが。・・あいつの生活環境を考えれば冒険者で稼ぐしかなかったからな。」


 遠い目で過去を思い返していた。


 ・・ドルネット師匠。あの人に出会えたからこそ、私はここにいる。


 ・・・先人を尊ぶべし。


 子供の頃はよく分からない上に何が偉いのかさっぱりだった。


 ・・・・だが今なら分かる。生きてあらゆる物を知り、学べる。どれだけ幸せなのか。

 ・・・過酷な生活になって初めて知ったのだから。


 ・・・こうして雑談と食事を楽しみながら即位式は問題なく終り。私たちは王都の宿屋で泊まることにした。・・・ちなみに、領主とギルド長は王都にある別宅に向かった。






 夜。


 王城。女王の部屋。


 オリビアは即位式が無事に終わり、ソファーに座った。


 ・・・本来であれば仕事がないか確認し、なければそのまま寝るのだが。今日は仕事もないはずなのに何故か胸騒ぎがする。


 その時、ノック音がした。


「・・サクラです。夜分済みません。・・・緊急の要件が。」


 焦る言葉にオリビアは`入りなさい`と許可を出した。


 サクラは一礼して。


「・・・失礼します。・・帝国のヨルネ皇帝より伝書鳥が届きました。・・案件は緊急以外、何も書かれていません。」


 そう言って手紙を出してきた。


 オリビアは手紙を受け取り、内容を読んだ。・・読み終えた後、オリビアは疲れた表情をした。


 サクラは心配そうに見ているとオリビアは。


「・・・帝国の魔物との国境線が再び激化したそうよ。・・・今までは小競り合いだけだったけど。今日、大規模な攻撃が来たそうよ。・・・エッジソン隊が前面に出しても魔物は怯まなかったと。・・・幸い、被害は少なかったけど。・・・一年前のように強力な魔物が現われた可能性があると書かれているわ。・・・皇帝からの要請は`赤雷`の応援だそうよ。」


 これを聞いたサクラは。


「・・そんなにですか?・・・帝国の戦力は以前と比べて強固になったと聞いておりますが。」


 驚きの声を上げた。


 ・・・実際、帝国の兵力はゴルトール将軍の下、熟練度が上がっている。ギルドもAランクはあの二人以外いないが、Bランクでも王国より強い者達はいる。

 ・・・更には、エッジソンも大量生産はしていないが、決められた数を量産している。


 ・・・国力としては他の国よりも高いはず。それなのに、二人を寄越して欲しいとは。


 ゆゆしき事態が起きている。


 オリビアは。


「・・・ギルドに通達を。・・・`赤雷`に帝国ギルドからの要請が来たから行って欲しいと伝えてください。」


 この命令にサクラは一礼して部屋を後にした。


 ・・一人になったオリビアは夜空を見て思った。


 今朝から感じていた胸騒ぎの正体が帝国の一大事だということか?それともこれを皮切りに王国または共和国に何か起きようとしているのか?

 ・・・いずれにしても悪い報せであることに変わりは無い。


 即位して早々に難問がくるとは。


 ・・・しかし、呆然としているわけにはいかない。今後の為にも貴族達をどう纏めるか。宰相である兄上と相談しなければならない。

 ・・今のうちに考える限りの案を書かなければ。そう思いながら執務机に座り、書類にペンを走らせた。



 ・・・同時刻。


 教会のアルトリネ教皇にも同様の手紙が届き、こちらは支援物資の要請であった。


 共和国には流通を制限させて欲しいという嘆願書が届けられた。



 ・・・一体、国境線で何が起きたのか?


 それを知るのは後の話。





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